「恥ずかしい」という気持ちはどこから来るのか
障害者雇用に対して「恥ずかしい」「みじめ」「負けた気がする」という感情を持つことは、珍しくありません。むしろ、多くの方が同じ気持ちを経験しています。この感情の根っこには、社会が作り上げた「普通の就職像」があります。新卒一括採用で大手企業に入り、キャリアアップしていく——そのイメージを「成功」と捉え、そこから外れることを「失敗」と感じるような価値観が、私たちの周りには根強く存在しています。
しかし、少し立ち止まって考えてほしいのです。その「普通の就職像」は、誰が決めたものでしょうか?日本社会が高度経済成長期に作り上げたモデルが、今もなお「基準」として機能しているだけで、それがあなたにとっての「正しい働き方」である必要は、どこにもありません。
感情は否定できません。「恥ずかしい」という気持ちは本物です。でも、その感情の出どころを知ることで、少し自由になれることがあります。
障害者雇用とは何か——制度の本質を知る
障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用」は、障害のある方が安定して就労できるよう、企業に一定の雇用率(法定雇用率)を義務づける制度です。企業は障害者雇用枠で採用することで、法定雇用率を達成します。この制度は、「能力がないから特別扱いをする」のではなく、「多様な人材が活躍できる職場環境を整える」ことを目的としています。
2026年現在、日本では多くの大手企業が積極的に障害者雇用に取り組んでいます。特例子会社を設立するほど力を入れている企業も増えており、障害者雇用は「お情けで雇う制度」ではなく、「企業の多様性戦略の一環」として位置づけられています。
「一般雇用 vs 障害者雇用」という比較の落とし穴
「一般雇用の方が障害者雇用より上」という比較軸自体に、大きな問題があります。一般雇用で就職した場合と障害者雇用で就職した場合を比べるとき、多くの場合「職場での続けやすさ」「体調への影響」「精神的な消耗」を考慮に入れていません。
一般雇用に就職して3ヶ月で体調を崩して辞めることより、障害者雇用で配慮を受けながら3年間安定して働き続けることの方が、あなたの人生に与えるプラスは大きい——こう考えると、どちらが「上」かという問い自体が、意味を失います。
「続けられる仕事」を選ぶことは、合理的な判断です。そのために障害者雇用を活用することは、弱さではなく、自分の特性を理解したうえでの賢い選択です。
「最初は障害者雇用って言葉が嫌で、一般応募にこだわってた。でも3社受けて全部長続きしなくて、やっと障害者雇用を試してみた。今の職場では2年半続いてる。続けられることの方が、どれだけ大事か、今はよく分かる。」
「言いたくない」気持ちとどう向き合うか
友人や家族に「障害者雇用で働いている」と伝えることへの抵抗感は、多くの方が持っています。この気持ちは、決して「おかしい」ことではありません。ただ、一つ考えてみてほしいのは、「伝えなければならない義務はない」ということです。
どんな形で就労しているかを、誰に・どこまで・どんな言葉で伝えるかは、すべてあなたが選べます。「△△という仕事をしています」と職種だけ伝えることも、会社名だけ伝えることも、すべて正直な答えです。「障害者雇用枠で」と付け加える必要は、どこにもありません。
それよりも大切なのは、あなた自身が「自分の選択に納得できているかどうか」です。自分が納得していれば、他者の評価は気にならなくなってきます。時間はかかりますが、それは本物の自信になります。
「友達に言うのが恥ずかしくて、ずっと曖昧に答えてたけど、あるとき思い切って話したら、『そういう枠があるんだ、いい会社だね』って言われた。自分が一番こだわってたんだって気づいた。」
障害者雇用を選んだことへの「納得感」を育てる
「障害者雇用で働くことは正しかった」という納得感は、最初から持てるものではなく、働き続ける中で少しずつ育つものです。「続けられている」「体調が安定している」「職場で感謝される」——こういった経験の積み重ねが、自分の選択への信頼に変わっていきます。
最初は「仕方なく選んだ」と思っていた方も、数年後に「この選択は正解だった」と感じるケースは多くあります。もし今、完全に納得できていなくても、それは自然なことです。一緒に、その納得感を育てていきましょう。
- 障害者雇用は「劣る就労形態」ではなく、「自分に合った環境を選ぶ手段」のひとつ
- 「続けられる仕事」を選ぶことは、合理的かつ積極的な判断
- 他者への説明義務はない。自分の納得感を育てることが優先
- 「恥ずかしい」という感情は自然だが、その感情の出どころを知ることで自由になれる
よくある質問
あなたの「どうしよう」を聞かせてください
「まだ準備できていない」「何から話せばいいか分からない」——そのままで大丈夫です。
答えを持って来なくていいです。今の状態のまま、話しに来てください。