障害者雇用 / 気持ちと向き合う

障害者雇用で働くことは「負け」なのか——その問いと、正直に向き合ってみる

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:15〜20分
前向きに歩む人のイメージ、mimemimeコラム

この記事の目次

  1. 「恥ずかしい」という気持ちはどこから来るのか
  2. 障害者雇用とは何か——制度の本質を知る
  3. 「一般雇用 vs 障害者雇用」という比較の落とし穴
  4. 「言いたくない」気持ちとどう向き合うか
  5. 障害者雇用を選んだことへの「納得感」を育てる
「障害者雇用って、なんか負けみたいで嫌だ」「周りに言いたくない」「一般雇用で働けないから障害者雇用を選ぶ——そう思われそうで怖い」。 この記事を読んでいるあなたは、おそらくこういった気持ちを一度は感じたことがあるのではないでしょうか。その気持ちを、「間違っている」とも「正しい」とも言わずに、一緒に見ていきたいと思います。

「恥ずかしい」という気持ちはどこから来るのか

障害者雇用に対して「恥ずかしい」「みじめ」「負けた気がする」という感情を持つことは、珍しくありません。むしろ、多くの方が同じ気持ちを経験しています。この感情の根っこには、社会が作り上げた「普通の就職像」があります。新卒一括採用で大手企業に入り、キャリアアップしていく——そのイメージを「成功」と捉え、そこから外れることを「失敗」と感じるような価値観が、私たちの周りには根強く存在しています。

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仕事のプレッシャーを感じる人のイメージ
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しかし、少し立ち止まって考えてほしいのです。その「普通の就職像」は、誰が決めたものでしょうか?日本社会が高度経済成長期に作り上げたモデルが、今もなお「基準」として機能しているだけで、それがあなたにとっての「正しい働き方」である必要は、どこにもありません。

感情は否定できません。「恥ずかしい」という気持ちは本物です。でも、その感情の出どころを知ることで、少し自由になれることがあります。

社会が作った「基準」 「普通の」就職ルート 「あなたにとっての働く意味」 ・続けられる仕事がしたい ・体調を崩さずにいたい ・自分らしくいたい これが「あなたの基準」
「社会の基準」ではなく「自分の基準」で働き方を考えることから始まる

障害者雇用とは何か——制度の本質を知る

障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用」は、障害のある方が安定して就労できるよう、企業に一定の雇用率(法定雇用率)を義務づける制度です。企業は障害者雇用枠で採用することで、法定雇用率を達成します。この制度は、「能力がないから特別扱いをする」のではなく、「多様な人材が活躍できる職場環境を整える」ことを目的としています。

2026年現在、日本では多くの大手企業が積極的に障害者雇用に取り組んでいます。特例子会社を設立するほど力を入れている企業も増えており、障害者雇用は「お情けで雇う制度」ではなく、「企業の多様性戦略の一環」として位置づけられています。

※法定雇用率・制度の詳細は変更される場合があります。最新情報はハローワークや厚生労働省のウェブサイトでご確認ください(2026年時点の情報に基づきます)。
障害者雇用の「実態」——よくある誤解と現実 ❌ よくある誤解 「能力がない人向けの制度」 「給与が低くて当然」 「キャリアアップできない」 「恥ずかしいことを選んでいる」 「一般雇用より劣る」 ✓ 現実 「配慮があれば十分に活躍できる」 「一般雇用と同等給与の職場も多い」 「資格・昇格できる企業が増加中」 「自分に合う環境を選ぶ賢い判断」 「多様性戦略として企業が注目」
障害者雇用への誤解と現実のギャップ——知ることで視野が広がる

「一般雇用 vs 障害者雇用」という比較の落とし穴

「一般雇用の方が障害者雇用より上」という比較軸自体に、大きな問題があります。一般雇用で就職した場合と障害者雇用で就職した場合を比べるとき、多くの場合「職場での続けやすさ」「体調への影響」「精神的な消耗」を考慮に入れていません。

一般雇用に就職して3ヶ月で体調を崩して辞めることより、障害者雇用で配慮を受けながら3年間安定して働き続けることの方が、あなたの人生に与えるプラスは大きい——こう考えると、どちらが「上」かという問い自体が、意味を失います。

「続けられる仕事」を選ぶことは、合理的な判断です。そのために障害者雇用を活用することは、弱さではなく、自分の特性を理解したうえでの賢い選択です。

「最初は障害者雇用って言葉が嫌で、一般応募にこだわってた。でも3社受けて全部長続きしなくて、やっと障害者雇用を試してみた。今の職場では2年半続いてる。続けられることの方が、どれだけ大事か、今はよく分かる。」

30代・男性(うつ病・一般雇用から障害者雇用に転換)

「言いたくない」気持ちとどう向き合うか

友人や家族に「障害者雇用で働いている」と伝えることへの抵抗感は、多くの方が持っています。この気持ちは、決して「おかしい」ことではありません。ただ、一つ考えてみてほしいのは、「伝えなければならない義務はない」ということです。

どんな形で就労しているかを、誰に・どこまで・どんな言葉で伝えるかは、すべてあなたが選べます。「△△という仕事をしています」と職種だけ伝えることも、会社名だけ伝えることも、すべて正直な答えです。「障害者雇用枠で」と付け加える必要は、どこにもありません。

それよりも大切なのは、あなた自身が「自分の選択に納得できているかどうか」です。自分が納得していれば、他者の評価は気にならなくなってきます。時間はかかりますが、それは本物の自信になります。

「友達に言うのが恥ずかしくて、ずっと曖昧に答えてたけど、あるとき思い切って話したら、『そういう枠があるんだ、いい会社だね』って言われた。自分が一番こだわってたんだって気づいた。」

20代・女性(ASD)

障害者雇用を選んだことへの「納得感」を育てる

「障害者雇用で働くことは正しかった」という納得感は、最初から持てるものではなく、働き続ける中で少しずつ育つものです。「続けられている」「体調が安定している」「職場で感謝される」——こういった経験の積み重ねが、自分の選択への信頼に変わっていきます。

最初は「仕方なく選んだ」と思っていた方も、数年後に「この選択は正解だった」と感じるケースは多くあります。もし今、完全に納得できていなくても、それは自然なことです。一緒に、その納得感を育てていきましょう。

障害者雇用を選ぶことは「負け」ではありません。今の自分に合った場所で、続けられる形で働くことを選んだ——それは、自分を知ったうえでの「選択」です。

よくある質問

Q. 障害者雇用は一般雇用より給与が低いですか?
職場・職種によって異なります。一般雇用と同等水準の給与を設定している企業も多くあります。
Q. 障害者雇用で働いていることを周りに言いたくないです
言う義務はありません。伝える内容・範囲はすべてあなたが選べます。
Q. 障害者雇用だとキャリアアップはできないですか?
昇格・資格取得・正社員登用を設けている職場も増えています。最初から決まっているわけではありません。
Q. 一般雇用の方がいいと親に言われます
「続けられる仕事」を選ぶことが長い目で見て最善です。親への説明を一緒に考えることもできます。
Q. 障害者雇用という言葉自体に抵抗があります
その気持ちを大切にしながら、少しずつ自分の選択への納得感を育てていきましょう。

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おのざる
おのざる(mimemime)
元介護福祉士・現役就労移行支援員を経て、障がいのある方の就労支援に特化した伴走型サービスmimemimeを設立。「答えを出すより、一緒に考える」が信条。