「働きたい気持ちが分からない」状態になる理由
働くことへの意欲が湧かない・分からないという状態には、様々な背景があります。うつ・双極性障害などで「何もしたくない」という症状が出ている場合、過去の職場でつらい経験(ハラスメント・燃え尽き・人間関係の消耗)があり、働くこと自体に恐怖・嫌悪が結びついている場合、「働く意味」そのものへの問いに行き詰まっている場合、自己肯定感が低く「どうせ自分なんか」という諦めが先立っている場合などが挙げられます。
これらは「性格の弱さ」ではありません。状態や経験から生まれた、とても自然な反応です。
「意欲があってから動く」は順番が逆かもしれない
多くの方は「やる気が出てきたら就労支援に行こう」と思っています。しかし、うつや回避的な状態のときは、行動する前にやる気を待っていると、永遠に動けないことがあります。認知行動療法的な観点からは、「行動が先、気持ちはあと」という考え方があります。小さな行動(見学に行くだけ・電話するだけ)が、次の気持ちを少し動かすことがあります。
「意欲がないのに動くのは嘘をついている気がする」と感じる方もいます。でも、「完全にやりたい気持ちが持てなくても、取りあえず行ってみる」という態度は、自分への不誠実ではありません。人は動いてみて初めて「あ、これは嫌だな」「これは思ったより悪くないな」と気づくことができます。
「やる気が全くないのに就労移行支援に行くのって変かな、と思ってたけど、行ってみたら担当の人が『やる気があって来る人の方が少ないですよ』って言ってくれた。その一言でものすごく楽になった。」
「働く理由」を探す必要はない
「なぜ働きたいのか」「働くことで何を叶えたいのか」——こういった大きな問いに答えられなくて当然です。就労支援の現場では、「立派な働く理由」がなくていいと考えています。「お金が必要」「家にいるとしんどい」「誰かと話したい」——これで十分です。「働く崇高な意味」を持っている人より、「なんとなく働いた方がいいかな」と思っている人の方が、実際の就労につながっているケースは多くあります。
「今の自分」の状態を正直に話すことから始まる
「働きたいのか分からない」「意欲が湧かない」という状態のまま支援機関を訪ねることは、全く問題ありません。むしろ、その状態を正直に話すことが、最もその人に合った支援を考えるための出発点になります。「完璧な状態で行かなければ」という思い込みは、最初の一歩を遠ざけてしまいます。
「やる気がない」と伝えること自体が、支援者にとって重要な情報です。「今は体調が安定していない段階かもしれない」「まず医療的なケアを優先した方がいいかもしれない」——支援者はそこから一緒に考えることができます。
「意欲が持てない」ことを責めないための視点
働く意欲が湧かないことを、自分の「怠け」や「甘え」だと責めてしまう方は多くいます。でも、意欲は「気合で絞り出すもの」ではなく、「状態・環境・経験の結果として生まれるもの」です。意欲が持てない状態にある自分を責めるより、「どんな状態にあるか」を正確に見て、そこから動ける小さな一歩を探すことが、建設的なアプローチです。
- 「意欲がない」状態は性格の問題ではなく、状態・経験・症状から生まれる
- 「やる気が出てから動く」ではなく「動いてからやる気が生まれる」ことがある
- 「立派な働く理由」は必要ない——「なんとなく」で十分な出発点になる
- 「意欲がない状態のまま」支援機関に来ることは、全く問題ない