書類を前にすると、頭が真っ白になる
子どもの頃から「読むのが遅い」「字を書くと友達に笑われた」という記憶がある人もいれば、学生時代は何となくやり過ごせていたのに、社会人になって急に苦しくなったという人もいます。学習障害は知的な遅れがあるわけではなく、「読む」「書く」「計算する」のうち、特定の力だけがうまく働きにくい状態だとされています。だからこそ、本人も周りも「なぜこれだけができないんだろう」と戸惑いやすいのです。
新卒で配属された部署で、毎日の業務報告書を書くだけで定時を過ぎてしまう。先輩からは「もっと早く書けるでしょ」と言われ、自分でも「努力が足りないんだ」と思い込んでしまう。実際には、文字の形を認識する力や、文章を音にして処理する力に特性があり、人並みの努力では追いつかない部分があることが多いのです。
「読み書きの苦手さ」は、なぜ起きるのか
学習障害(LD・SLD)は、知的な発達や視力・聴力に問題がないのに、読む・書く・計算するという特定の学習だけがうまくいかない状態だとされています。文字を音に変換する処理や、形として記憶する処理のどこかに特性があり、本人の努力量とは別のところで困難が起きていると考えられています。
子どもの頃は教科書を読む量も限られ、周りに合わせて何となく乗り切れることもあります。ところが社会人になると、報告書・メール・マニュアルなど、読み書きを求められる場面が一気に増えます。「能動的に動いて価値を出す側」になった途端、それまで隠せていた苦手さが表面化しやすくなるのです。
「怠けている」という誤解との距離
学習障害は見た目で分かりづらいため、「本人がやる気を出せばできるはず」と誤解されやすい特性でもあります。実際には、本人が一番もどかしさを感じながら、人より何倍も時間をかけて取り組んでいることが少なくありません。
大人になってから気づくケースも少なくない
学生時代は何となくやり過ごせていたのに、社会人になってから「自分は学習障害かもしれない」と気づく人もいます。診断の有無にかかわらず、「読み書きに人より時間がかかる」という感覚があるなら、その感覚を軽く扱わなくていいはずです。
「書類を読むのに人の3倍かかるのを、誰にも言えなかった。残業して何とか間に合わせていたけど、ある日もう無理だと思って、初めて上司に伝えた。怒られると思っていたら、『先に言ってくれたら良かったのに』と言われて、拍子抜けした。」
隠したまま頑張るしんどさと、工夫を取り入れる楽さ
学習障害のある方が職場で感じる困りごととしてよく挙げられるのが、報告書作成やメール対応、数字を扱う業務での苦労です。「隠したまま頑張る」道を選ぶと、確認に時間がかかって再提出が増えたり、一人で抱え込む心の重さが積み重なったりしやすくなります。一方で、使える工夫を取り入れることで、負担が軽くなったという声も多くあります。
職場に伝えるときは、「読み書きが苦手です」だけで終わらせず、「音声読み上げソフトを使わせてほしい」「チェックリスト形式で指示してほしい」「確認の時間を少し多くもらえると助かる」など、具体的な工夫の形にしておくと、相手も対応しやすくなります。伝えるかどうか、どこまで伝えるかは本人の自由です。一人で決めきれないときは、支援員と一緒に伝え方を整理することもできます。
- 音声読み上げ・文字拡大など使える道具を試してみる
- チェックリスト化して、確認の手順を仕組みにする
- 得意な人とペアで確認する仕組みを相談してみる
- 「確認の時間が少し欲しい」を具体的な配慮として伝える
- うまくいかなかった日も、自分を責めすぎない