障がい種別 / 学習障害(LD)

学習障害(LD)と「書類が読めない」を隠してきた話——大人になってからの工夫と伝え方

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:12〜15分
気持ちを整理する人のイメージ、発達障害と向き合う

目次

  1. 書類を前にすると、頭が真っ白になる
  2. 「読み書きの苦手さ」は、なぜ起きるのか
  3. 隠したまま頑張るしんどさと、工夫を取り入れる楽さ
報告書のフォーマットを開いた瞬間、文字が頭に入ってこない。何度も同じ行を目で追っているのに、内容がつかめない。隣の席の人は10分で終わらせている作業に、自分は1時間かかる。それでも「ちゃんとやっている」と思われたくて、休憩時間を削って机に向かう。学習障害(LD)のある方の中には、こうした苦しさを何年も誰にも言わずに抱えてきた人がいます。この記事では、書類業務でつまずく理由と、現場で試せる工夫、職場への伝え方を整理します(2026年6月時点の情報です)。

書類を前にすると、頭が真っ白になる

子どもの頃から「読むのが遅い」「字を書くと友達に笑われた」という記憶がある人もいれば、学生時代は何となくやり過ごせていたのに、社会人になって急に苦しくなったという人もいます。学習障害は知的な遅れがあるわけではなく、「読む」「書く」「計算する」のうち、特定の力だけがうまく働きにくい状態だとされています。だからこそ、本人も周りも「なぜこれだけができないんだろう」と戸惑いやすいのです。

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障害の記録や管理をする人のイメージ
障害の記録や管理をする人のイメージ

新卒で配属された部署で、毎日の業務報告書を書くだけで定時を過ぎてしまう。先輩からは「もっと早く書けるでしょ」と言われ、自分でも「努力が足りないんだ」と思い込んでしまう。実際には、文字の形を認識する力や、文章を音にして処理する力に特性があり、人並みの努力では追いつかない部分があることが多いのです。

書類を開いた、その瞬間 文字が並んでいる 同じ行を何度も読む 「また終わらない」
本人にしか見えない苦労が、この数十分の中にある
学習障害の出方は人によって大きく異なります。読むことだけが苦手な人、書くことだけが苦手な人、計算が苦手な人など、特性の組み合わせや強さは一人ひとり違います。

「読み書きの苦手さ」は、なぜ起きるのか

学習障害(LD・SLD)は、知的な発達や視力・聴力に問題がないのに、読む・書く・計算するという特定の学習だけがうまくいかない状態だとされています。文字を音に変換する処理や、形として記憶する処理のどこかに特性があり、本人の努力量とは別のところで困難が起きていると考えられています。

子どもの頃は教科書を読む量も限られ、周りに合わせて何となく乗り切れることもあります。ところが社会人になると、報告書・メール・マニュアルなど、読み書きを求められる場面が一気に増えます。「能動的に動いて価値を出す側」になった途端、それまで隠せていた苦手さが表面化しやすくなるのです。

「怠けている」という誤解との距離

学習障害は見た目で分かりづらいため、「本人がやる気を出せばできるはず」と誤解されやすい特性でもあります。実際には、本人が一番もどかしさを感じながら、人より何倍も時間をかけて取り組んでいることが少なくありません。

大人になってから気づくケースも少なくない

学生時代は何となくやり過ごせていたのに、社会人になってから「自分は学習障害かもしれない」と気づく人もいます。診断の有無にかかわらず、「読み書きに人より時間がかかる」という感覚があるなら、その感覚を軽く扱わなくていいはずです。

「書類を読むのに人の3倍かかるのを、誰にも言えなかった。残業して何とか間に合わせていたけど、ある日もう無理だと思って、初めて上司に伝えた。怒られると思っていたら、『先に言ってくれたら良かったのに』と言われて、拍子抜けした。」

30代・女性(学習障害・事務職)

隠したまま頑張るしんどさと、工夫を取り入れる楽さ

学習障害のある方が職場で感じる困りごととしてよく挙げられるのが、報告書作成やメール対応、数字を扱う業務での苦労です。「隠したまま頑張る」道を選ぶと、確認に時間がかかって再提出が増えたり、一人で抱え込む心の重さが積み重なったりしやすくなります。一方で、使える工夫を取り入れることで、負担が軽くなったという声も多くあります。

隠したまま頑張る / 工夫を取り入れる 隠したまま頑張る 読み上げソフトを使わない 確認できず再提出が増える 残業で何とか間に合わせる 一人で抱え込む心の重さが 積み重なっていく 工夫を取り入れる 音声読み上げソフトを使う チェックリストで確認する 得意な人とペアで確認する 道具に頼ることを「自分への サポート」として受け入れる
どちらを選ぶかで、心の負担はかなり変わる

職場に伝えるときは、「読み書きが苦手です」だけで終わらせず、「音声読み上げソフトを使わせてほしい」「チェックリスト形式で指示してほしい」「確認の時間を少し多くもらえると助かる」など、具体的な工夫の形にしておくと、相手も対応しやすくなります。伝えるかどうか、どこまで伝えるかは本人の自由です。一人で決めきれないときは、支援員と一緒に伝え方を整理することもできます。

読み書きに時間がかかることは、能力の欠如ではありません。工夫を取り入れながら働き続けている人は、すでに大勢います。

よくある質問

Q. 学習障害は努力すれば克服できますか?
学習障害は努力不足が原因ではなく、特定の情報処理の仕方に特性があるとされています。「努力で治す」ことを前提にせず、特性に合った工夫を取り入れる視点が大切です。
Q. 読み書きが苦手なことを職場に伝えるべきですか?
伝えるかどうかは本人の自由です。伝える場合は「できません」ではなく「こうしてもらえると助かります」という具体的な工夫の形にすると、職場側も対応しやすくなる傾向があります。
Q. 大人になってから学習障害だとわかることはありますか?
はい。子どもの頃は何となくやり過ごせていたことが、社会人になって書類作成や報告業務が増えたタイミングで困難が表面化し、大人になってから特性に気づくケースは少なくないとされています。
Q. 学習障害は障害者手帳の対象になりますか?
学習障害そのものは知的障害とは異なるため、手帳の対象になるかは状態や診断によって異なります。2026年6月時点では、対象となるかは医療機関や自治体への確認が必要です。
読み書きがつらいときに大切にしたい5つのこと 1 苦手さは努力不足ではない 特性であって、能力の問題ではない 2 使える道具に頼っていい 読み上げソフトやチェックリストを試す 3 工夫は具体的な形で伝える 「助かる配慮」として希望を整理する 4 一人で抱え込まない 支援者・専門家に相談してみる 5 働き方は一つじゃない 自分に合うやり方を一緒に探していい
5つのポイントを、できることから少しずつ取り入れてみてください

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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。