障がい種別 / 強迫性障害(OCD)

強迫性障害(OCD)と仕事——「確認行為が止まらない」を職場でどう乗り越えるか

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:12〜15分
自分の道を進む人のイメージ、障がいと向き合うコラム

目次

  1. 鍵をかけたか、もう一度だけ確認したい
  2. なぜ「もう大丈夫」と思えないのか
  3. 確認をやめるのではなく、仕組みで支える
エレベーターに乗った瞬間、「さっき送ったメールに変なことを書いていなかったか」が頭から離れなくなる。一度席に戻って確認する。大丈夫だと分かっても、数分後にまた同じ不安が浮かぶ。鍵をかけたはずなのに、家を出てから3回戻った日もある。周りからは「ちゃんとしてるね」と言われることもあるけれど、本人にしてみればちゃんとしているからではなく、不安を止める方法がそれしかないからやっている。強迫性障害(OCD)のある方が職場で抱える「確認行為が止まらない」という苦しさについて、起きている仕組みと、現場で試せる工夫を整理します(2026年6月時点の情報です)。

鍵をかけたか、もう一度だけ確認したい

強迫性障害は、本人の意志とは関係なく繰り返し浮かぶ不快な考え(強迫観念)と、その不安を一時的に打ち消すために行わずにはいられない行動(強迫行為)の組み合わせで起きるとされています。職場での代表的な例として、メールの送信ボタンを押した後に何度も内容を確認し直す、施錠や戸締りが気になって遅刻してしまう、手が汚れている気がして何度も席を立って洗いに行く、といったことが挙げられます。

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障害の特性に悩む人のイメージ
障害の特性に悩む人のイメージ

「気をつければ直る」「神経質なだけ」と見られがちですが、本人の中では「確認しないと、もし何か起きたら取り返しがつかない」という強い恐れが先にあります。確認した瞬間はほっとするものの、その安心は長く続かず、また同じ不安が戻ってくる。このループが一日に何十回も起きる人もいて、業務時間そのものを圧迫していきます。

送信したのに、確かめたくなる 「変なこと書いてないかな」 何度も読み返す送信履歴 一瞬の安心、また不安に
確認は「だらしなさ」の逆——むしろ過剰な責任感の表れであることが多い
確認行為の出方は人によって大きく異なります。施錠・送信内容・手の汚れ・数字の入力ミスなど、何が気になるかは一人ひとり違い、症状の強さにも幅があります。

なぜ「もう大丈夫」と思えないのか

強迫性障害では、「不安→確認→一時的な安心→不安の再燃」というサイクルが繰り返されることで、確認行為そのものが脳にとって「不安を消すための唯一の手段」として強化されていくと考えられています。本人も「これはやりすぎだ」「意味がないかもしれない」と分かっていながら、その場の不安に耐えられずに行動してしまう、というのが特徴の一つです。

厄介なのは、確認すればするほど「もっと確認しないと安心できない」感覚が強まりやすいことです。一度休憩時間に5回戻って確認した経験があると、次は6回でないと安心できなくなる。本人の意志の弱さの問題ではなく、不安と行動が結びついて固定化していく仕組みの問題だとされています。

「真面目すぎる人」という評価との距離

確認を重ねる人は、表面的には「丁寧」「ミスがない」と評価されることもあります。しかしその裏で、終業後も頭の中で確認作業が続いていたり、確認のために他の仕事が後回しになっていたりするなど、見えない負荷を抱えていることが少なくありません。

誰にも言えないまま、自分を責めてしまう

「こんなことで悩んでいるなんて言えない」「変な人だと思われたくない」という思いから、確認行為を隠したまま一人で耐えている人もいます。その結果、業務量に対して必要以上の時間がかかり、自己評価がさらに下がってしまう悪循環に陥りやすくなります。

「鍵をかけたか不安で、駅まで歩いてから引き返したことが何度もある。遅刻が続いて上司に怒られたとき、初めて『確認が止まらなくて』と話した。怒られると思っていたら、『そういうことなら、ドアの写真を撮って確認したら?』と一緒に考えてくれて、少し肩の荷が下りた気がした。」

20代・男性(強迫性障害・営業職)

確認をやめるのではなく、仕組みで支える

強迫性障害のある方が職場で感じる困りごととしてよく挙げられるのが、確認に時間がかかることそのものと、それを誰にも言えずに一人で抱え込む心理的な負担です。「確認をゼロにする」ことを目標にすると、かえって苦しさが増す場合があります。実際の現場では、確認という行為自体を否定せず、回数や時間に見通しを持てるような仕組みを取り入れることで、負担が軽くなったという声があります。

一人で抱え込む / 仕組みで支える 一人で抱え込む 確認の回数に上限がない 誰にも言えず時間だけが 削られていく 遅刻や提出遅れで評価が 下がり、自分を責める 仕組みで支える 写真を撮って確認を1回で 区切る ダブルチェックを同僚と 分担する 「確認は何回まで」と自分 なりのルールを決める
確認そのものをなくすのではなく、見通しの持てる形に変えていく

職場に伝えるときは、「強迫性障害です」だけで終わらせず、「確認に少し時間がかかることがあります」「ダブルチェックの仕組みがあると助かります」など、具体的な困りごとと工夫の形にしておくと、相手も対応しやすくなります。伝えるかどうか、どこまで伝えるかは本人の判断によります。一人で決めきれないときは、支援員と一緒に伝え方を整理することもできます。

確認が止まらないのは、責任感が強すぎるからかもしれません。それは欠点ではなく、向き合い方を変えれば力になる部分でもあります。

よくある質問

Q. 確認行為がやめられないのは意志が弱いからですか?
意志の弱さが原因とは考えられていません。強迫性障害は、不安を一時的に打ち消すための行動が習慣化し、本人の意志でコントロールしづらくなる状態だとされています。
Q. 確認に時間がかかることを職場に伝えるべきですか?
伝えるかどうかは本人の判断によります。伝える場合は「病名」よりも「確認に時間がかかることがある」「ダブルチェックの仕組みがあると助かる」など、具体的な困りごとと工夫の形で伝えると理解されやすい傾向があります。
Q. 強迫性障害は治療で軽減しますか?
治療法や経過は人によって異なります。2026年6月時点では、認知行動療法や薬物療法など複数のアプローチがあるとされていますが、効果や期間は個人差が大きいため、医療機関への相談が前提になります。
Q. 確認行為が多いことは障害者雇用の対象になりますか?
診断や状態によって異なります。2026年6月時点では、精神障害者保健福祉手帳の対象となるかどうかは医療機関や自治体への確認が必要です。
確認が止まらないときに大切にしたい4つのこと 1 確認は怠けではなく特性 過剰な責任感が背景にあることも多い 2 確認を「記録」に変える 写真やチェックリストで区切りをつける 3 具体的な工夫を職場に伝える 病名ではなく困りごとの形で共有する 4 一人で抱え込まない 支援者・専門家に相談してみる
できることから一つずつ、自分のペースで取り入れてみてください

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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。