障がい種別 / 統合失調症

統合失調症と仕事——「誤解されるかもしれない」という静かな恐怖とどう向き合うか

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:12〜15分
メンタル不調を感じる人のイメージ、うつ・精神疾患

目次

  1. 「危ない人」だと思われたら、もう終わりだ
  2. 誤解はどこから来るのか
  3. 伝えるか、伝えないか——その間にある選択肢
休憩室で誰かが小さく笑っただけで、自分のことを話されている気がしてしまう。そんな日が続いたとき、「病名を知られたら、もう普通に見てもらえなくなる」という思いが頭から離れなくなった。実際には誰も何も知らないのに、知られた瞬間を何度も想像してしまう。統合失調症のある方が職場で抱える苦しさは、症状そのものだけでなく、「誤解されるかもしれない」という恐怖と静かに付き合い続けることでもあります。なぜそう感じてしまうのか、そして開示するかどうかをどう考えればいいのか、現場で聞かれることが多い内容を整理しました(2026年6月時点の情報です)。

「危ない人」だと思われたら、もう終わりだ

統合失調症は、幻覚や幻聴、考えがまとまりにくくなることに加えて、意欲の低下や表情の乏しさといった症状(陰性症状)が現れることがあるとされています。およそ100人に1人がかかるとされる、決して珍しい病気ではないにもかかわらず、「怖い」「何をするか分からない」といった誤ったイメージを持たれることが少なくありません。

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障害と向き合いながら歩む人のイメージ
障害と向き合いながら歩む人のイメージ

このイメージは、本人が一番よく知っています。だからこそ、職場で少しでも変な空気が流れると「気づかれたのではないか」「もう信用されないのではないか」という不安が一気に膨らみます。実際には誰にも話していなくても、その恐怖だけで一日が消耗していくこともあります。

本人が感じている世界 / 実際の職場 気づかれたかもしれない 同僚はいつもと同じ一日を過ごしている
不安が膨らむのは、誤解を生む情報がまだ正しく届いていないことの裏返しでもある
幻覚や幻聴の有無、症状の強さや出方には大きな個人差があります。「統合失調症だからこう」と一括りにできるものではありません。

誤解はどこから来るのか

統合失調症は、かつて「精神分裂病」という病名で呼ばれていました。2002年に現在の名称へ変更されましたが、その間に広まった「何をするか分からない」というイメージは、名称が変わった後もすぐには消えませんでした。実際の症状とイメージの間に大きなギャップがあることが、誤解の一つの背景にあるとされています。

もう一つの理由は、陰性症状そのものが誤解を招きやすい形をしていることです。意欲が出ない、表情が動きにくい、会話が短くなる——これらは本人の努力不足や愛想のなさのように見えてしまいますが、症状の表れ方の一つだと考えられています。本人が「分かってもらえない」と感じる場面の多くは、ここから生まれています。

「普通に話しているだけなのに」というすれ違い

幻聴がある時期でも、外から見て分かるとは限りません。本人の中では声が聞こえていて、その対応に意識を使っているのに、周りからは「ぼんやりしている」「話を聞いていない」と見えてしまうことがあります。本人にしてみれば精一杯やり取りをしているつもりでも、結果として誤解が積み重なっていくことがあります。

「変わった人」という扱いが固定化してしまう

一度「変わった人」という見方がついてしまうと、その後の言動がすべてその枠で解釈されやすくなります。本人が体調の波で少し元気がない日も「やっぱりあの人は」という見方で受け止められてしまうと、関係を修復する機会自体が減っていきます。

「症状が落ち着いていても、『統合失調症』という言葉を出した瞬間に相手の表情が変わるんじゃないかと、いつも身構えていた。実際に話したときは、上司が『そうなんだ、教えてくれてありがとう』と言っただけで、特別な反応はなかった。身構えていた分だけ、拍子抜けするくらい何も変わらなかった。」

30代・女性(統合失調症・事務職)

伝えるか、伝えないか——その間にある選択肢

「開示する」か「黒子のように隠し続ける」かの二択だと思われがちですが、実際にはその間にいくつもの選択肢があります。病名は伝えずに「通院のため月一回休みをいただきたい」と伝えるだけの場合もあれば、信頼できる上司一人にだけ簡単に共有しておく場合もあります。誰に、どこまで、どんな言葉で伝えるかは、本人が選べる範囲です。

開示にはいくつもの段階がある 通院配慮のみ 「月1回、通院で 休みたい」 病名は伝えない 困りごとを伝える 「集中しづらい時間が ある」など具体的に 信頼できる人にだけ 診断名まで伝える 必要な配慮を制度として 受けたい場合など 支援員と相談しながら
どの段階を選ぶかは状況や相手によって変えてよい

どの段階を選ぶ場合でも、「病名」よりも「何があると助かるか」を先に言葉にしておくと、相手も対応しやすくなります。たとえば「声が聞こえて集中しづらい時間があるので、その時間は一人で作業できる場所があると助かる」というように、状態と工夫をセットで伝える形です。一人で言葉を整理するのが難しいときは、支援員と一緒に伝え方を練習することもできます。

誤解への恐怖は、あなたが弱いから感じるのではありません。これまで広まってきたイメージとのギャップが、その恐怖を作り出しています。

よくある質問

Q. 統合失調症は「危ない病気」なのですか?
そのような事実は確認されていません。誤った印象が広がった背景には、かつての病名や報道のされ方が影響したとも言われていますが、2002年に名称が変更され、より実態に近い理解が広がってきています。
Q. やる気がないように見えるのは病気のせいですか?
本人の意欲の問題とは限りません。統合失調症では意欲の低下や感情表現の乏しさといった症状(陰性症状)が現れることがあり、これが「やる気がない」と誤解されやすい一因だとされています。
Q. 職場に病名を伝えるべきですか?
伝えるかどうか、どこまで伝えるかは本人の判断によります。病名そのものよりも、必要な配慮や困りごとを具体的な形で伝えるほうが理解されやすい場合があります。一人で決めきれないときは支援員と一緒に整理することもできます。
Q. 統合失調症のある人は働き続けられますか?
経過や状態には個人差が大きく、一概には言えません。2026年6月時点では、治療の継続や職場の理解、働き方の調整によって安定して就労を続けている方もいるとされていますが、状況は人それぞれのため医療機関や支援機関への相談が前提になります。
誤解の恐怖と向き合うときに大切にしたい4つのこと 1 恐怖はイメージのギャップから来る あなた自身の弱さではない 2 開示には段階がある 全部話すか隠すかの二択ではない 3 病名より「助かること」を先に 具体的な工夫として伝える 4 伝え方は一人で抱えなくていい 支援員と一緒に練習してみる
できることから一つずつ、自分のペースで取り入れてみてください

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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。