いつ起きるか分からない、という不安と一緒に働く
てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰な電気活動を起こすことで、意識を失ったり、体の一部または全体が動いてしまったりする発作が繰り返される病気だとされています。発作の型や頻度、持続時間には大きな個人差があり、薬による治療で発作が長期間起きていない方もいれば、治療を続けても発作が完全になくならない方もいます。
厄介なのは、発作そのものよりも「次がいつ来るか分からない」という予測のつかなさです。今日は大丈夫でも、明日の会議中に起きるかもしれない。そう考えると、人前に立つ仕事や、一人で外回りをする時間そのものが緊張の対象になっていきます。発作が起きていない時間まで、不安に使われてしまう感覚です。
「運転できない」「危ない」というイメージとの距離
てんかんに対しては、「運転は一切できない」「危ないから任せられる仕事がない」といったイメージが今も残っていることがあります。しかし実際には、発作の状態によって判断が分かれます。2026年6月時点では、一定期間発作が起きていないなど一定の条件を満たせば、運転免許の取得や更新が認められる場合があるとされていますが、これは個別に公安委員会や主治医へ確認すべき事柄です。「てんかんだから絶対に無理」と決めつけるものではない一方、「誰でも大丈夫」と言えるものでもありません。
業務内容についても同じです。高所での作業や、火気・刃物を扱う作業、長時間の単独運転など、発作が起きた場合に安全への影響が大きい業務は、症状の状態に応じて調整が必要になることがあります。一方で、それ以外の多くの業務には法的な制限はなく、「てんかんがあるから事務職しかできない」というわけでもありません。向き不向きは、病名ではなく発作の状態と業務内容の組み合わせで考えるものです。
「隠れているもの」だからこそ生まれる誤解
発作が起きていないときの本人は、見た目には何の症状もありません。だからこそ、「本当に病気なのか」「気にしすぎなのではないか」と周囲から軽く受け取られてしまうことがあります。逆に、過去に発作の場面を見た人からは「何が起きるか分からない、怖い」という印象だけが強く残ってしまうこともあります。どちらも、発作という出来事の一部分だけを見て、全体像が伝わっていないために起こるすれ違いです。
「採用面接のとき、てんかんがあることを伝えたら『運転業務は無理だよね』とすぐに言われた。実際は出張で運転をすることはほとんどない職種だったのに、病名だけで判断された感じがして、その場で一歩引いてしまった。後で『発作が起きたらどう対応すればいいか教えてほしい』と聞かれたときの方が、ずっと話しやすかった。」
伝えるか、伝えないか——発作との向き合い方を一緒に考える
病名の開示そのものに法的な義務はないとされています。ただし、発作が起きた場合に安全への影響が大きい業務に関わる場合は、業務内容に応じて事前の相談が必要になることがあります。「全部隠す」か「すべて話す」かの二択ではなく、業務に関係する範囲だけを先に伝えておく、という選択肢もあります。
どの段階を選ぶ場合でも、「発作が起きたときに何をしてほしいか/何をしないでほしいか」を具体的に言葉にしておくことが、伝える側にとっても受け取る側にとっても助けになります。たとえば「発作中は体を強く押さえず、周りの危ないものを遠ざけてほしい」「発作が終わったらしばらく休ませてほしい」というように、対応の手順をセットで共有する形です。一人で言葉にするのが難しいときは、主治医や支援員と一緒に整理することもできます。
- 病名の開示は法的な義務ではないが、危険を伴う業務では事前の相談が必要になることがある
- 「運転できない」「危ない」というイメージは、発作の状態によって当てはまらない場合も多い
- 伝える範囲は「全部隠す/全部話す」の二択ではなく段階的に選べる
- 病名より先に「発作時にしてほしいこと・しないでほしいこと」を言葉にしておく
- 一人で抱え込まず、主治医や支援員と一緒に伝え方を整理してみる