見た目では分からないからこそ、抱え込んでしまう
ストーマとは、病気や治療によって便や尿を体外に出す経路が変わり、お腹に新しく作られた排泄のための出口のことだとされています。ストーマを持つ方は「オストメイト」と呼ばれ、定期的に専用の装具を交換しながら生活します。手術後、体調が落ち着けば、装具の管理をしながら以前と同じように働いている方も多いとされていますが、職場での過ごし方には独特の気がかりが残ります。
一番大きいのは、トイレに関する気がかりです。決まった時間に装具の様子を確認したい、ガスが出るタイミングが読めない、においが気になる。こうした体の事情は、服の上からはまったく分かりません。だからこそ「自分だけが気にしている」という感覚になりやすく、会議中にトイレに立つことすら、ためらいに変わっていきます。
「気にしすぎ」と「大げさ」の間で揺れる気持ち
トイレに行く回数が多いことを、職場でどう説明すればいいのか分からない、という声はよく聞かれます。頻繁に席を外すと「体調が悪いのか」「やる気がないのか」と思われそうで気が引けてしまう。一方で、何も伝えずにいると、急に体調が変化したときに周囲が対応に困ってしまう場面も出てきます。「気にしすぎなのかもしれない」と感じる日もあれば、「もっと早く伝えておけばよかった」と感じる日もあり、その間で気持ちが揺れ続けるのが実情です。
厚生労働省の内部障害に関する整理では、膀胱・直腸機能障害は一目で分かりにくいために周囲の配慮を得にくいことが課題として挙げられています。職場側に悪意がなくても、「見えないものは存在しないもの」として扱われてしまうことがあり、これが本人の孤独感をさらに深くしてしまいます。
「装具交換の時間」をどう確保するか
装具の交換には一定の時間がかかり、急なトラブル(装具のはがれや漏れなど)が起きることもあります。多目的トイレが近くにあるか、交換用の物品を職場に置いておけるか、急に席を外しても業務上大きな支障が出ない動き方になっているか。こうした環境面の工夫があるだけで、気持ちの余裕は大きく変わってきます。
「正直に言うと、最初の半年は会議中にお腹が鳴るんじゃないかってことしか考えてなかった。資料の内容より自分のお腹の方が気になってて、何回も『今、何の話してたっけ』ってなった。トイレ行くタイミングも、誰かが先に行った後を狙ったりして、もう完全に意味不明な行動してたと思う。今思えば馬鹿みたいだけど、当時は本当にそれだけで頭がいっぱいだった。」
「装具が外れかけてるかもって不安になった日に、上司に『ちょっと体調管理で席外します』って言ったら、何も聞かれずに『はいよ』で終わった。拍子抜けしたけど、あとで考えたら、別に詳しく知りたいとも思ってなかったんだろうな。自分の中で勝手に大ごとにしてたのかもしれない。それでも、最初に言うまでの三ヶ月はめちゃくちゃ長かった。」
伝えるか、伝えないか。どこまで話すかは自分で選べる
開示そのものに法的な義務はないとされています。ただし、休憩やトイレに関する配慮を継続的に受けたい場合は、必要な範囲の人にだけ事情を伝えておくと、調整がしやすくなることがあります。病名を詳しく説明する必要はなく、「体調管理のために定期的に席を外す時間が必要」という伝え方で十分なケースもあります。
どの段階を選ぶ場合でも、「何に困っていて、どんな配慮があると助かるか」を具体的に言葉にしておくことが、伝える側にとっても受け取る側にとっても助けになります。たとえば「多目的トイレを使いたい」「席をトイレの近くにしてほしい」「急に席を外しても業務が止まらない体制にしてほしい」というように、配慮の内容をセットで共有する形です。言葉にするのが難しいときは、主治医や支援員と一緒に整理することもできます。
- 開示は法的な義務ではないが、継続的な配慮を受けたい場合は伝えておくと調整しやすい
- 病名を詳しく話さなくても「体調管理のための時間」という伝え方で配慮を得られる場合がある
- 伝える範囲は「全部隠す/全部話す」の二択ではなく段階的に選べる
- 装具交換の時間や場所など、環境面の工夫だけで気持ちの余裕が変わることもある
- 一人で抱え込まず、主治医や支援員と一緒に伝え方を整理してみる