障がい種別 / 内部障害(オストメイト)

ストーマ(人工肛門・人工膀胱)と仕事の「トイレに行きづらい」という気がかり、誰にも言えなかった

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:12〜15分
障害を持ちながら働く人のイメージ、就労と特性

目次

  1. 見た目では分からないからこそ、抱え込んでしまう
  2. 「気にしすぎ」と「大げさ」の間で揺れる気持ち
  3. 伝えるか、伝えないか。どこまで話すかは自分で選べる
会議の途中、装具のことが頭をよぎる。今日は何時間トイレに行けていないか、においは大丈夫か、ガスの音が漏れないか。誰にも気づかれていないはずなのに、頭の中はずっとそのことでいっぱいになる。ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のある方が仕事を続けるうえで抱える苦しさは、体調そのものへの不安だけでなく、「見た目には分からないからこそ、誰にも言えない」という孤独感でもあります。トイレに行きづらい、伝えるべきか迷う。現場でよく聞かれる悩みを整理しました(2026年6月時点の情報です)。

見た目では分からないからこそ、抱え込んでしまう

ストーマとは、病気や治療によって便や尿を体外に出す経路が変わり、お腹に新しく作られた排泄のための出口のことだとされています。ストーマを持つ方は「オストメイト」と呼ばれ、定期的に専用の装具を交換しながら生活します。手術後、体調が落ち着けば、装具の管理をしながら以前と同じように働いている方も多いとされていますが、職場での過ごし方には独特の気がかりが残ります。

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特性を理解しながら働く人のイメージ
特性を理解しながら働く人のイメージ

一番大きいのは、トイレに関する気がかりです。決まった時間に装具の様子を確認したい、ガスが出るタイミングが読めない、においが気になる。こうした体の事情は、服の上からはまったく分かりません。だからこそ「自分だけが気にしている」という感覚になりやすく、会議中にトイレに立つことすら、ためらいに変わっていきます。

ある一日の「気がかりの高さ」 満員電車 朝礼・着席 長めの会議 退勤前の確認 9:00 11:00 14:00 17:00 18:00
本人にしか見えていない緊張の波が、一日のあちこちにある
ストーマの状態や原因疾患には個人差があります。「オストメイトだからこう」と一括りにできるものではなく、装具の管理方法や体調の経過によって、必要な配慮も変わってきます。

「気にしすぎ」と「大げさ」の間で揺れる気持ち

トイレに行く回数が多いことを、職場でどう説明すればいいのか分からない、という声はよく聞かれます。頻繁に席を外すと「体調が悪いのか」「やる気がないのか」と思われそうで気が引けてしまう。一方で、何も伝えずにいると、急に体調が変化したときに周囲が対応に困ってしまう場面も出てきます。「気にしすぎなのかもしれない」と感じる日もあれば、「もっと早く伝えておけばよかった」と感じる日もあり、その間で気持ちが揺れ続けるのが実情です。

厚生労働省の内部障害に関する整理では、膀胱・直腸機能障害は一目で分かりにくいために周囲の配慮を得にくいことが課題として挙げられています。職場側に悪意がなくても、「見えないものは存在しないもの」として扱われてしまうことがあり、これが本人の孤独感をさらに深くしてしまいます。

「装具交換の時間」をどう確保するか

装具の交換には一定の時間がかかり、急なトラブル(装具のはがれや漏れなど)が起きることもあります。多目的トイレが近くにあるか、交換用の物品を職場に置いておけるか、急に席を外しても業務上大きな支障が出ない動き方になっているか。こうした環境面の工夫があるだけで、気持ちの余裕は大きく変わってきます。

「正直に言うと、最初の半年は会議中にお腹が鳴るんじゃないかってことしか考えてなかった。資料の内容より自分のお腹の方が気になってて、何回も『今、何の話してたっけ』ってなった。トイレ行くタイミングも、誰かが先に行った後を狙ったりして、もう完全に意味不明な行動してたと思う。今思えば馬鹿みたいだけど、当時は本当にそれだけで頭がいっぱいだった。」

30代・女性(人工肛門・営業事務職)

「装具が外れかけてるかもって不安になった日に、上司に『ちょっと体調管理で席外します』って言ったら、何も聞かれずに『はいよ』で終わった。拍子抜けしたけど、あとで考えたら、別に詳しく知りたいとも思ってなかったんだろうな。自分の中で勝手に大ごとにしてたのかもしれない。それでも、最初に言うまでの三ヶ月はめちゃくちゃ長かった。」

40代・男性(直腸機能障害・経理職)

伝えるか、伝えないか。どこまで話すかは自分で選べる

開示そのものに法的な義務はないとされています。ただし、休憩やトイレに関する配慮を継続的に受けたい場合は、必要な範囲の人にだけ事情を伝えておくと、調整がしやすくなることがあります。病名を詳しく説明する必要はなく、「体調管理のために定期的に席を外す時間が必要」という伝え方で十分なケースもあります。

行きづらいと感じた瞬間 黙ってやり過ごす 会議中も内容が入らない トイレに行くタイミングを 人の目を見て探ってしまう 一言だけ伝える 席や休憩のことで いちいち気を張らずに 済む時間が増える
同じ出来事でも、その後に続く時間の質は分かれていく

どの段階を選ぶ場合でも、「何に困っていて、どんな配慮があると助かるか」を具体的に言葉にしておくことが、伝える側にとっても受け取る側にとっても助けになります。たとえば「多目的トイレを使いたい」「席をトイレの近くにしてほしい」「急に席を外しても業務が止まらない体制にしてほしい」というように、配慮の内容をセットで共有する形です。言葉にするのが難しいときは、主治医や支援員と一緒に整理することもできます。

見た目に分からないからといって、あなたの困りごとが軽いわけではありません。誰にも気づかれない事情と毎日付き合っていること自体が、すでに十分にがんばっていることです。

よくある質問

Q. ストーマがあると、できない仕事はありますか?
装具の管理や体調が安定していれば、多くの職種で働いている方がいるとされています。ただし長時間トイレに行けない業務や、強い腹圧がかかる作業については、本人の状態に応じて配慮や調整が必要になる場合があります。
Q. 職場にストーマのことを伝える必要はありますか?
開示そのものに法的な義務はないとされています。一方で、休憩やトイレの配慮を継続的に受けたい場合は、必要な範囲の上司や人事に伝えておくと調整がしやすくなることがあります。伝える範囲は段階的に選べます。
Q. トイレの回数が多いことを職場でどう説明すればいいですか?
病名を詳しく説明しなくても、「体調管理のため定期的に席を外す時間が必要」という伝え方で配慮を得られる場合があります。具体的な伝え方に迷う場合は、支援員と一緒に言葉を整理する方法もあります。
Q. オストメイトは障害者手帳の対象になりますか?
原因疾患や状態によって内部障害として身体障害者手帳の対象になる場合があります。2026年6月時点では、対象となるかどうかは個別の診断や申請手続きによって判断されるため、医療機関や自治体の窓口への確認が前提になります。
大切にしたい4つのこと 自分で言葉にする 気にしすぎではない 事情はちゃんとある 配慮を先に伝える 病名より「必要なこと」 体調管理の時間でいい 環境の小さな工夫 座席・多目的トイレ 予備の装具の置き場 一人で抱えない 主治医や支援員と 一緒に整理してもいい
できることから一つずつ、自分のペースで取り入れてみてください

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就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。