週3回、4時間。透析がある日の「もう一つの仕事」
血液透析の場合、多くは1回4時間程度の治療を週3回受けるとされています。通院時間や着替え、待ち時間を含めると、半日近くがその日のために使われることも珍しくありません。腹膜透析であれば通院の頻度は減りますが、自宅での処置に毎日一定の時間が必要になります。どちらの方法でも、「治療のための時間」が生活の中に固定で存在し続けることは変わりません。
透析そのものは見た目では分かりません。だからこそ、職場では「なぜそんなに頻繁に休むのか」「体は元気そうなのに」という疑問の目を感じやすく、本人は何度も同じ説明を繰り返すことに疲れてしまいます。透析後の倦怠感や血圧の変動も、外からは伝わりにくい事情のひとつです。
「またお休みですか」という一言が積み重なる
厚生労働省や障害者雇用に関する資料では、腎臓機能障害のある方の就労継続には、隔日ごとの通院時間を前提にした勤務シフトの工夫や、ワークシェアリングによって急な不在をカバーできる体制づくりが有効だと整理されています。一方で、こうした体制が整っていない職場では、本人が毎回「すみません、また病院なので」と頭を下げる場面が繰り返されることになります。
悪意のない一言、たとえば「最近よく休むね」「もう大丈夫なの?」が、本人にとっては積み重なって重くなっていくことがあります。透析は治療を続けることそのものが「治った」状態であり、休めば終わるものではありません。この前提が共有されていないと、励ましの言葉のつもりが、本人には「早く元の状態に戻ってほしい」という圧力として伝わってしまうこともあります。
体調の波と仕事の波が、別のタイミングでやってくる
透析直後は血圧が下がりやすく、強い倦怠感やこむら返りが出ることもあるとされています。仕事の締め切りや会議の予定は透析のスケジュールとは関係なく動いていくため、「体調が一番つらいタイミングと、仕事で一番頑張らなければいけないタイミングが重なる」という状況も起こりがちです。
「透析を始めて二年くらいは、誰にも言わずに普通に出社してた。終わった日の夜は本当にしんどくて、家に着いた瞬間に倒れ込むみたいな感じだったけど、次の日は何ともないフリして会議に出てた。今考えると無理しすぎてたと思う。上司に伝えたのは結局、立ちくらみで本当に倒れてからだった。」
「『最近休み多いね』って同僚にさらっと言われた時、笑って流したけど、家に帰ってから地味に効いた。悪気はないってわかってるんだけど、週3回病院に行くのを『多い』って言われると、これが私のベースなんだけどな、って一人でモヤモヤする。腹膜透析に変えてからは少し楽になったけど、それまでの半年はずっとそんな感じだった。」
体力ではなく「時間」の問題だと伝える
透析と仕事を両立するうえで誤解されやすいのが、「体力がないから無理をしている」という見られ方です。実際には、体力そのものよりも「決まった時間が固定で必要になる」という時間の制約が大きな要因になっていることが多いとされています。この違いを伝えられるかどうかで、職場の受け止め方が変わってくることがあります。
たとえば「体調が悪いので休みます」という伝え方では、毎回「大丈夫なの?」という心配や疑問につながりやすくなります。一方で「透析治療のため、毎週月・水・金は17時に退勤します」「治療翌日の午前は体調が不安定になりやすいので、重要な会議は避けてもらえると助かります」というように、固定のスケジュールとして伝えると、職場側も予定として組み込みやすくなります。残業や出張についても、「できない」と伝えるだけでなく「この曜日・この時間帯ならできる」という条件をセットで共有すると、調整の話し合いがしやすくなることがあります。
- 透析は「体力不足」ではなく「決まった時間が固定で必要」という時間の制約だと伝える
- 休む理由を毎回説明するより、固定スケジュールとして共有する方が職場側も調整しやすい
- 「できないこと」だけでなく「この条件ならできること」を併せて伝える
- 夜間透析やフレックス制度のある職場など、働き方の選択肢を知っておく
- 一人で抱え込まず、主治医や支援員と一緒に伝え方や働き方を整理してみる