障がい種別 / 聴覚障害(難聴・中途失聴)

聴覚障害と仕事、会議や雑談の輪に入れない「ひとりぼっち感」とどう向き合うか

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:12〜15分
障害について考え悩む人のイメージ、特性と生活
会議の声、こんな風に届くことがあります 「今の、聞こえてた?」 「え、もう一回言ってもらえますか」
声は波になって流れていくのに、自分の手元にはうまく届かないことがある(mimemimeアニメーション表現)

目次

  1. 会議で「話、ついていけてますか」と聞かれて固まった
  2. 雑談の輪に入れない、あの「ひとりぼっち感」
  3. 「聞こえているはず」という誤解と、伝え方の工夫
会議室で誰かが話している。口は動いているし、時々誰かが笑っている。けれど自分の耳に入ってくるのは、輪郭のぼやけた音のかたまりだけ。「今の話、大事なところだった気がする」と思っても、聞き返すタイミングを逃してしまい、結局うなずいて流す。聴覚障害や難聴のある方が職場で抱える悩みは、聞こえないこと自体よりも、「聞こえないことを、いつ・どう伝えればいいのか分からない」という戸惑いであることが多いようです。よく聞かれる悩みを、できるだけ整理してみました(2026年6月時点の情報です)。

会議で「話、ついていけてますか」と聞かれて固まった

聴覚障害がある場合、一対一の会話は比較的聞き取りやすくても、複数人が同時に話す会議や打ち合わせになると、急に難易度が上がるとされています。誰が話しているのか、声がどこから飛んでくるのかを目で追いながら聞く必要があり、集中力の消耗も大きくなりやすいです。資料を読みながら話を聞く、というように同時に複数のことをする場面ではさらに負担が増します。

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障害の記録や管理をする人のイメージ
障害の記録や管理をする人のイメージ

調査では、聴覚障害のある方が話の内容を十分理解できないことがある割合は、複数人の「打ち合わせや会議」の場面で93.4%にも上るというデータもあります。本人の聞く努力が足りないわけではなく、場面の構造そのものが聞き取りにくくなっているということです。

あ、 それで 来週まで ですよね どう思う?
口は動いているのに、声が輪郭のないかたまりになって流れていく感覚
聞こえの程度や聞こえ方(高い音が苦手、雑音の中での聞き取りが特に難しいなど)には個人差があります。「聴覚障害がある人はみんな同じように困っている」とひとくくりにできるものではありません。
「会議についていけてないんじゃないか」って心配になりますよね。でも実際は、聞く努力が足りないとかじゃなくて、複数人が同時に話す場面そのものが聞き取りにくい構造になっていることが多いんです。だから自分を責めなくて大丈夫ですよ。
ミミ

雑談の輪に入れない、あの「ひとりぼっち感」

会議よりもさらに聞き取りが難しいとされるのが、休憩中の雑談です。複数人がリラックスして早口で話し、話題も次々に変わっていくため、聞き取りの負担はむしろ会議以上になることがあります。実際、雑談の場面で内容を十分理解できないことがあると答えた割合は87.4%という調査結果もあります。

会議の内容は「聞き返してもいい場」だと思えても、雑談の輪は違います。「今さら聞き返すと空気を壊すかも」とブレーキがかかって、結局笑ってうなずくだけで終わる。それが毎日ちょっとずつ積もっていくと、ふと「自分だけこの場にいないみたいだ」と感じる瞬間が来ます。

「ランチの時間が一番しんどかった。仕事中はメモも筆談もOKな空気だったんだけど、休憩中に『さっきの話、何が面白かったの』って今さら聞くのは違う気がして、結局ずっと笑ってるだけの人になってた。半年くらいそれを続けて、ある日急にめちゃくちゃ疲れてることに気づいた。誰も悪くないのに、なんでこんなに孤独なんだろうって思った。」

30代・女性(先天性難聴・人工内耳使用、事務職)

「中途失聴で、聞こえなくなる前は普通に飲み会の輪の中心にいたタイプだったから、聞こえなくなってからのギャップが本当にきつかった。最初の三ヶ月くらいは『大丈夫です』しか言わなくなってた自分がいる。今思えば意味不明な相槌してたと思う。会社のチャットツールを雑談にも使ってもらえるようになって、ようやく少し息ができるようになった感じ。」

40代・男性(中途失聴・補聴器使用、企画職)
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聞き取れない場面で笑ってうなずくのは、悪気のない自然な防御反応だとされています。ご自身を「コミュニケーションが下手な人」だと結論づけてしまわないでください。

「聞こえているはず」という誤解と、伝え方の工夫

補聴器や人工内耳をつけていると、周囲から「それなら普通に聞こえているはず」と思われやすいことも、伝えづらさの一因になっています。実際には機器を使っても、雑音の中や複数人の会話では聞き取りの負担が残ることが多いとされ、見た目で分かりにくい分だけ誤解が生まれやすい障害のひとつです。

「どこまで言えばいいの?」とよく聞かれるんですが、答えはシンプルです。全部話すか何も話さないかの二択じゃなくていいんですよ。「聞き取りづらい場面がある」くらいから、少しずつ伝える深さを選んでみてください。
ミミ

伝え方の一例として、聞こえの状態を段階的に共有していく方法があります。

  1. 「複数人の会話だと聞き取りづらい場面がある」という範囲だけをまず伝える
  2. 「資料の事前共有」「発言の前に名前を呼んでもらう」など具体的に助かる工夫を伝える
  3. 必要に応じて、聞こえの程度やコミュニケーション手段(筆談・チャット・読話など)まで共有する
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聞こえの程度や得意・不得意な音の種類には個人差があります。ここで紹介した工夫がそのまま誰にでも当てはまるわけではない点にご留意ください。

電話対応についても、「全部できない」と伝えるより「取り次ぎや要件のメモであれば対応できる」「チャットや内線テキストに切り替えられないか相談したい」というように、できる条件をセットで伝えると調整の話し合いがしやすくなることがあります。会議では、発言者が名前を名乗ってから話す、資料を事前に共有する、議事録を文字で残すといった工夫も、聞こえに関わらず多くの人にとって助けになるとされています。

聞き取れずに笑ってうなずいてしまう自分を、責めなくて大丈夫です。その場をやり過ごしてきたこと自体が、十分な工夫であり頑張りです。

よくある質問

Q. 聴覚障害があっても会議に問題なく参加できますか?
補聴器や人工内耳、文字起こしツールなどを使うことで参加しやすくなるケースは多いとされています。一方で、複数人が同時に話す場面では聞き取りの負担が大きくなりやすく、資料の事前共有や発言順の整理など、進行面の工夫が助けになることがあります。
Q. 職場にどこまで聞こえの状態を伝えればいいですか?
伝える範囲に決まりはなく、段階的に選べるとされています。「聞き取りづらい場面がある」という範囲だけ伝える方法もあれば、聞こえの程度やコミュニケーション手段まで具体的に共有する方法もあります。
Q. 電話対応はどう調整すればいいのでしょうか?
電話以外の手段(チャット・メール・取り次ぎ)に業務を切り替えてもらう調整をしている方もいます。すべての電話対応を外すのではなく、可能な範囲を伝えながら相談していく方法が現実的な場合が多いとされています。
Q. 雑談の輪に入れない孤独感とどう向き合えばいいですか?
雑談の聞き取りは会議以上に難しいとされる場面も多く、孤独感を覚えるのは自然な反応だとされています。一人で抱え込まず、信頼できる同僚や支援員に状況を共有しながら、参加しやすい場面を少しずつ探していく方法もあります(2026年6月時点の情報です)。
この記事のポイント 1 会議は聞こえの負担が特に大きい場面 2 雑談の孤独感は能力の問題ではない 3 「聞こえてるはず」は誤解しやすい 4 伝える範囲は段階的に選べる 5 できる条件をセットで伝える
一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。1つずつで十分です

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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。