朝起きた瞬間に、今日は「動ける日」か「動けない日」かが何となく分かる。検査をしても数値には何も出ない。でも体は重くて、椅子に座っているだけでも背中や腕がじわじわ痛む。線維筋痛症や原因のはっきりしない慢性的な痛みのある方が職場で抱える悩みは、痛みそのものよりも「この痛みを、どう説明すれば大袈裟だと思われずに伝わるのか」という戸惑いであることが多いようです。よく聞かれる悩みを、できるだけ整理してみました(2026年6月時点の情報です)。
痛みが日によって違う、その説明できなさ
線維筋痛症の特徴のひとつは、全身に痛みが出ること、そして痛みの強さが日によって、ときには同じ日の中でも変動することだとされています。気圧や天候、睡眠の質などに左右されやすく、「昨日は普通に動けたのに今日は腕も上げられない」ということが起こります。周囲からは「昨日は元気そうだったのに」と見えてしまい、説明のしにくさにつながります。
PR


障害の特性に悩む人のイメージ
検査で異常が出にくいことも、伝えづらさの一因です。レントゲンや血液検査で「これが原因です」とはっきり示せる材料がないまま、本人にとっては紛れもない激しい痛みと付き合っている。この「見た目と検査結果」と「実際の体感」のギャップが、本人を一番苦しめている部分かもしれません。
「昨日は普通に動けたのに今日は」という体感の差は、本人にとってもよく分からないことがあります
調査によれば、線維筋痛症のある方の多くが、長時間労働や同じ姿勢での作業によって症状が悪化しやすいと感じているとされています。立ち仕事や同じ姿勢を続ける作業は特に負担が大きく、疲労感や睡眠障害も重なって、仕事のパフォーマンスにムラが出やすくなります。
線維筋痛症の症状の出方や悪化しやすい場面には個人差があります。「この病気の人はみんな同じように困っている」とひとくくりにできるものではありません。
「検査で何も出ないから、気のせいなんじゃないか」って自分でも疑いたくなりますよね。でも検査に映らないことと、痛みが存在しないことは別の話です。体感そのものを、わざわざ否定する必要はないんです。
ミミ
「大袈裟」だと思われたくなくて、言えなくなる
見た目では分からない痛みは、周囲から「大袈裟」「気のせい」と受け取られやすいという誤解を生みがちです。一度でもそういう反応をされた経験があると、次からは黙って耐える方を選んでしまう人も少なくないようです。結果として、本当はつらい日でも「大丈夫です」と答えてしまい、誰にも気づかれないまま無理を重ねていくことになります。
痛みをわざわざ言葉で説明しないと伝わらないという点が、骨折や見た目に分かる障害とは違う難しさです。説明したところで「そこまでつらいの?」と疑われるリスクもあり、伝えること自体にエネルギーを使ってしまう。それなら言わない方が楽だ、という判断にたどり着くのも無理はないことだと思います。
「会議中に座ってるだけなのに、背中から腰まで火がついたみたいに痛い日があって、でも見た目は普通にパソコン触ってるだけだから誰も気づかない。一度『ちょっと体調悪くて』って言ったら『じゃあ早退すれば』って軽く流されて、それ以来言わなくなった。早退したいわけじゃなくて、ただ分かってほしかっただけなんだけど。」
30代・女性(線維筋痛症・発症3年目、事務職)
「現場仕事から事務に異動させてもらったんだけど、『楽な仕事に変えてもらえてよかったね』って言われるのが地味にきつい。楽になったわけじゃなくて、立ち仕事を続けたら多分働けなくなってたから今の状態を保つために変えてもらったんですよ、っていうのを毎回説明する気力がなくて、結局『そうですね』って流してしまう。」
40代・男性(線維筋痛症・元現場職、現在は事務職)
見えている部分はごくわずか。水面の下には、説明しないと伝わらないものがたくさんあります
i
痛みを我慢して「大丈夫です」と答えるのは、悪気のない自然な防御反応だとされています。ご自身を「弱い人」だと結論づけてしまわないでください。
伝え方と働き方、少しずつ調整するという選択
痛みの説明は、診断名から始めなくても構いません。「どんな場面で困るか」「何があると助かるか」という行動レベルの言葉に置き換えると、伝わりやすくなることがあります。「長時間同じ姿勢が続くと体がつらくなる」「立ちっぱなしの作業が続くと翌日に響く」というように、症状そのものではなく影響を伝える方法です。
「大袈裟だと思われたくない」という気持ち、すごく分かります。でも配慮を頼むことと大袈裟であることは、そもそも別の話なんです。困りごとと、助かる対応をセットで伝えるだけで十分ですよ。
ミミ
働き方そのものを調整できる場合は、無理のないペースを探っていく方法もあります。
- 「日によって体調差がある」という前提だけをまず伝える
- 「長時間同じ姿勢が続くとつらくなる」など具体的に困る場面を伝える
- 必要に応じて、時短勤務や在宅勤務、休憩の取り方まで相談する
!
痛みの強さや悪化しやすい場面には個人差があります。ここで紹介した工夫がそのまま誰にでも当てはまるわけではない点にご留意ください。
診断名を出すかどうかは、段階的に選べます。「体調に波があります」という範囲だけ伝える方法もあれば、線維筋痛症という病名や、痛みの出方まで具体的に共有する方法もあります。どちらが正しいということはなく、本人が安心できる範囲を選べることが大切だとされています。
- 痛みの強さが日によって違うのは、体感としてよくあること
- 検査で異常が出ないことと、痛みが存在しないことは別の話
- 「大袈裟」だと思われたくない気持ちは、配慮を頼まない理由にしなくていい
- 伝える内容は症状そのものより「困る場面」「助かる対応」のほうが伝わりやすい
- 診断名を出すかどうかは段階的に選べる
「今日は調子が悪い」と言えること自体が、すでに十分な伝える努力です。誰にも言えずに耐えてきた日々を、まず自分でねぎらってあげてください。
よくある質問
Q. 線維筋痛症があっても仕事を続けられますか?
症状の出方には個人差がありますが、治療や働き方の調整によって仕事を続けている方は多くいます。痛みの強い日とそうでない日の差が大きいことを前提に、無理のないペースを探っていく方法が現実的な場合が多いとされています。
Q. 検査で異常が出ないのに、職場にどう説明すればいいですか?
検査数値で説明できない分、「どんな場面で困るか」「何があると助かるか」という具体的な行動レベルで伝える方法が伝わりやすいとされています。診断名を出すかどうかは段階的に選べます。
Q. 痛みの強い日と弱い日の差が大きいのですが、どう伝えればいいですか?
日によって体調差があること自体を、あらかじめ伝えておく方法があります。「今日は調子がいい」「今日は控えめにしたい」を都度伝えられる関係性を作っておくと、調整がしやすくなる場合があります。
Q. 大袈裟だと思われそうで、配慮を頼みづらいです。どうすればいいですか?
配慮を頼むことと大袈裟であることは別の話だとされています。困りごとと具体的に助かる対応をセットで伝えると、誤解を減らしやすい場合があります(2026年6月時点の情報です)。
痛みの強さに目盛りはあっても、伝え方に正解の形はありません
PR


おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。