布団から出ようとして、出られない。気持ちは「行きたい」のに、体がまったく言うことを聞かない。前日にちょっと頑張って外出しただけで、翌日からまるごと動けなくなる。慢性疲労症候群(ME/CFS)のある方が仕事で抱える悩みは、疲労そのものよりも「やる気はあるのに動けない自分」をどう自分自身が許すか、という静かな苦しさであることが多いようです。よく聞かれる悩みを、できるだけ整理してみました(2026年6月時点の情報です)。
「やる気の問題」じゃない、という説明のしづらさ
慢性疲労症候群の特徴として知られているのが、わずかな活動の後に症状が大きく悪化する「労作後倦怠感(PEM)」と呼ばれる反応です。運動した直後ではなく、半日後や翌日、ときには2〜3日後に重く出ることもあるとされ、本人にとっても「何が原因で今こんなにつらいのか」が分かりにくいことがあります。
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障害と向き合いながら歩む人のイメージ
一晩眠れば取れる一般的な疲労とは、回復のしかたそのものが違うと考えられています。休んでも休んでも芯の疲れが抜けず、長時間眠っても起きた瞬間からすでに疲れている。この感覚は、経験したことのない人にはなかなか想像してもらえません。
動いた直後ではなく、少し時間が経ってから重く出ることがあります
調査によれば、ME/CFSのある方の多くが発症前は活動的で、仕事に熱心だった人が多いとも言われています。だからこそ「前まで普通にできていたのに、なぜ今はこんな簡単なことすらできないのか」というギャップに、本人自身が一番戸惑っているケースが多いようです。
慢性疲労症候群の症状の重さや、悪化しやすい活動量の境界には個人差があります。「これくらいなら大丈夫」という基準を他の人と比べても、あまり意味がないことが多いとされています。
「気力がないだけなんじゃないか」って自分を責めたくなる気持ち、よく聞きます。でも休んでも回復しないという反応そのものが、根性とは別の領域の話なんです。動けないことと、頑張っていないことは違います。
ミミ
罪悪感が積み重なっていく仕組み
「今日も休んでしまった」「また早退してしまった」。その一回ひとつは小さな出来事でも、毎週、毎月積み重なると、本人の中では「迷惑をかけている自分」「使えない自分」というイメージが固まっていくことがあります。やる気はあるのに体がついてこないという矛盾は、外から見えにくいぶん、誰よりも本人が一番厳しくジャッジしてしまう傾向があるようです。
周囲の何気ない言葉が、思った以上に重く刺さることもあります。「無理しないでね」という優しい言葉すら、「自分が無理をしているように見えているんだ」と受け取って落ち込んでしまう人もいます。本人が一番、無理をしないように気をつけているからこそ、そのギャップに敏感になるのかもしれません。
「会議の準備を前日にちょっと頑張ったら、当日の朝起き上がれなくなった。連絡しようとスマホを持つ手すら重くて、結局既読すらつけられないまま昼を過ぎてしまって、もうそれだけで自分を責めて泣いてた。サボってるわけじゃないのに、なんで自分はこんなに使えないんだろうって。」
20代・女性(ME/CFS発症2年目、IT企業勤務)
「上司に『無理しなくていいよ』と言われるたび、逆に申し訳なくなる。無理してないつもりでも体が壊れていくから、結局また休む。それを繰り返すうちに、自分が一番この会社に必要とされていない人間だと思うようになった。誰も悪くないのに、しんどい。」
30代・男性(ME/CFS発症4年目、在宅勤務に切替済み)
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「やる気と体の動きが一致しない」状態が続くこと自体が、本人にとってもつらい体験だとされています。それを「気持ちの弱さ」と結びつけて、ご自身を追い詰めないでください。
伝え方と働き方、負荷を減らすという発想
ME/CFSの就労では「頑張って乗り越える」より「使えるエネルギーの範囲内に活動量を抑える」という発想のほうが現実的だとされる場合があります。これはペーシングと呼ばれる考え方で、症状が出る一歩手前でブレーキをかけ、悪化のサイクルに入らないようにする工夫です。
頑張って乗り越えようとするほど悪化しやすいのが、この病気の難しいところです。だから「今日はこれだけにしておく」と決める行為は、逃げではなくむしろ立派な対処法なんですよ。
ミミ
職場には、症状の重さよりも「動いた後にどう響くか」を伝えると理解されやすいことがあります。
- 「動いた翌日や数日後に強く響くことがある」という体の反応パターンを伝える
- 「今日できる量」を都度相談できる関係を作っておく
- 在宅勤務・時短・業務量の調整など、選べる働き方を一緒に探す
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ここで紹介した工夫は一例です。症状の出方や悪化しやすい活動量には個人差が大きく、同じ対応がそのまま誰にでも当てはまるわけではありません。
無理に続けることで悪化し、結果的に長期離脱せざるをえなくなるケースも報告されています。短期的に「頑張れた」ことよりも、長く働き続けられる量を維持することのほうが、結局は本人にとって楽になる場合が多いようです。
4つのカードに、今日お伝えしたかったことをまとめました
- 動けないのは気力や根性の問題ではなく、体の反応として知られている
- 症状は動いた直後ではなく、しばらく経ってから重く出ることがある
- 「無理しないで」という言葉が、逆に本人を追い詰めることもある
- 伝える内容は「動いた後にどう響くか」が伝わりやすい
- 頑張って乗り越えるより、使える範囲に活動量を抑える発想が現実的な場合がある
「働きたいのに働けない」というその矛盾を、誰よりも一番苦しく感じているのは本人自身です。まずその矛盾を抱えていること自体を、ご自身でねぎらってあげてください。
PEM労作後倦怠感。動いた後に遅れて症状が悪化する反応
⏳回復には一般的な疲労より長い時間がかかりやすい
📋伝え方は症状より「動いた後の影響」が伝わりやすい
🌱抑える工夫(ペーシング)が悪化を防ぐ手段になりうる
よくある質問
Q. 慢性疲労症候群でも仕事は続けられますか?
症状の重さや回復の波には個人差があり、無理に続けることで悪化するケースも報告されています。働き方や負荷量の調整を前提に、続けられる範囲を探っていく方法が現実的だとされています。
Q. やる気はあるのに動けないのは、気持ちの問題ですか?
いいえ。慢性疲労症候群では、わずかな活動でも症状が大きく悪化する「労作後倦怠感」という体の反応が知られており、気力や根性の問題ではないとされています。
Q. 普通の疲れとどう違うのですか?
休んでも回復しにくいこと、わずかな活動の後に強い症状の悪化が遅れて出ることなどが特徴とされています。一晩眠れば回復する一般的な疲労とは仕組みが異なると考えられています。
Q. 職場にどう説明すればいいですか?
診断名だけでなく「動いた翌日に強く響く」「回復に時間がかかる」など、行動と影響をセットで伝える方法が伝わりやすいとされています(2026年6月時点の情報です)。
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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。