体調・感覚 / 化学物質過敏症

「香害かもしれない」と言えない。化学物質過敏症と職場の伝え方について

おのざる(mimemime)2026年6月読了目安:11〜14分
障害を持ちながら働く人のイメージ、就労と特性

目次

  1. 「気のせい」にされやすい、見えない不調
  2. 言えば「めんどくさい人」、言わなければ体が壊れる
  3. 伝え方と、職場でできる範囲の工夫
隣の席の人が変えた柔軟剤の匂いで、午後の会議中に頭が締めつけられるように痛くなる。エレベーターに一緒に乗った人の香水で、吐き気がして仕事に戻れなくなる。化学物質過敏症のある方にとって、職場はそうした「いつどこから来るか分からない」不調に常にさらされる場所になりがちです。それでいて、誰かを責めているわけでもないのに、言い出すと「神経質」「面倒な人」と思われそうで、結局黙ってしまう。そのジレンマについて、できるだけ丁寧に整理してみました(2026年6月時点の情報です)。

「気のせい」にされやすい、見えない不調

化学物質過敏症は、柔軟剤や香水、消臭剤、たばこの匂いといった、ごく微量の化学物質に反応して頭痛、倦怠感、吐き気、めまい、のどの痛みなど、さまざまな症状が出る状態です。原因物質や発症のしくみについては今も研究が続いている分野で、すべてが解明されているわけではありません。ただ、実際に症状が起きて生活や仕事が制限されている方が一定数いることは、複数の調査や報告で指摘されています。

PR

manaby 就労移行支援
特性を理解しながら働く人のイメージ
特性を理解しながら働く人のイメージ

厄介なのは、症状を引き起こすものの多くが「市販の安全な製品」として広く使われていることです。柔軟剤の香りも、消毒液の匂いも、多くの人にとっては気にならない、むしろ良い香りとして売られているもの。だからこそ、つらいと伝えた瞬間に「そんな普通のものに反応するなんて気にしすぎでは」という空気が生まれやすく、本人にとっては「症状を訴えること自体が攻撃のように受け取られる」という、もう一段階しんどい状況になりがちです。

何気なく談笑する同僚 同じ空間、感じ方はまるで違う 匂いで頭が痛くなり動けなくなる人
同じ匂いでも、感じ方や体への影響は人によって大きく異なります

そのため、化学物質過敏症のある方の多くが、症状そのものよりも「理解してもらえない」「迷惑がられる」ことのつらさを強く語る傾向があるようです。体の不調と、人間関係の不調が同時に起きてしまう構造そのものが、この困りごとを長く・重くしている面があります。

「そんな匂いで?」と言われるたび、自分の体がおかしいんじゃないかって思っちゃう気持ち、わかります。でも実際に頭痛や吐き気が出ているなら、それは気の持ち方の話じゃなくて、体の反応の話なんですよ。
ミミ

言えば「めんどくさい人」、言わなければ体が壊れる

多くの方が抱えるのが、このジレンマです。症状のことを伝えれば「クレーマー」「神経質」と思われるかもしれない。でも黙っていれば、毎日少しずつ体力と気力をすり減らし続け、最終的には仕事を続けられなくなる。どちらに進んでも苦しいという状況に、長い間ひとりで向き合っている方が少なくありません。

特に柔軟剤や香水は「個人の私物」であるぶん、誰かに使うのをやめてほしいと伝えること自体が、その人の生活や好みに踏み込むようで言いにくい、という声もよく聞かれます。職場の人間関係を壊したくない気持ちと、自分の体を守りたい気持ちが、いつも引っ張り合っている状態です。

「隣の席の子が新しい柔軟剤に変えてから、毎日午後になると頭が締めつけられるみたいに痛くなって、定時まで持たない日が増えた。でも『その柔軟剤やめてほしい』なんて言ったら、絶対関係が気まずくなる。結局マスクを二重にして、デスクの隅で耐えてた。気づいたら毎日鎮痛剤を飲むのが当たり前になってた。」

30代・女性(化学物質過敏症、事務職)

「上司には一応伝えたんだけど、『そんなこと言われたら何も使えなくなる』って苦笑いされて終わった。別に全部やめてくれなんて言ってない、ただ自分の席の近くだけでも何とかならないかって話だったのに。それ以来、何も言わない方が楽だなって、諦めるようになった。」

40代・男性(化学物質過敏症、製造業勤務)
!
ここで紹介した状況や工夫はあくまで一例です。化学物質過敏症の症状の出方や、反応する物質の種類・量には個人差が大きく、同じ対応がすべての方に当てはまるわけではありません。

こうした積み重ねの結果、転職や離職、場合によっては住む場所を変える「転地」まで選ぶ方もいると報告されています。それだけ、香りという「目に見えないもの」が、生活の選択肢を大きく左右しているということでもあります。

伝え方と、職場でできる範囲の工夫

すべてを一気に解決することは難しくても、伝え方や周囲の工夫次第で、状況が少し動くこともあります。ポイントは「誰かの私物を否定する」のではなく「自分の体に起きている反応を伝える」という順番にすることだとされています。

① 反応を具体的に伝える
「柔軟剤がダメ」ではなく「○○の匂いの後、頭痛と吐き気が出て30分ほど動けなくなる」と、体に起きる反応をセットで伝える。
② 産業医・人事を間に入れる
本人対本人で伝えにくい場合、産業医や人事を通すことで「個人攻撃」ではなく「職場環境の課題」として扱ってもらいやすくなる。
③ できる範囲の環境調整を探る
座席の位置・換気・社内アンケートでの無香料への協力依頼など、強制ではなく「できる範囲で」という形で相談してみる。
一人で言いに行くのはしんどいですよね。産業医や支援機関を間に挟むだけで、伝わり方がまったく変わることもあります。一人で抱え込まなくて大丈夫です。
ミミ

労働安全衛生の観点から、会社には働きやすい環境を整える努力が期待されていますが、香りに関する明確な基準は今のところ整備されていません。そのため「できることは配慮しよう」という、企業ごとの姿勢に委ねられている部分が大きいのが現実です(2026年6月時点の情報です)。すぐに完璧な環境が手に入るとは限りませんが、伝え方を変えることで、少しずつ理解者が増えていくケースもあります。

在宅勤務やフリーアドレス席、香りの少ないフロアへの配置転換など、会社によって取れる対応の幅はさまざまです。一人で交渉が難しいと感じたら、就労支援機関や産業医を通して相談する方法も検討してみてください。
「神経質だと思われたくない」という気持ちと、「体を守りたい」という気持ちの間で迷うのは、わがままではありません。その両方を抱えていること自体を、まず認めてあげてください。
i
症状がつらいときは、無理して職場に留まり続けることだけが正解ではありません。医療機関や支援機関に相談しながら、ご自身に合った働き方を一緒に探していく選択肢もあります。

よくある質問

Q. 化学物質過敏症は気のせいや神経質さの問題ですか?
いいえ。化学物質過敏症は、頭痛や倦怠感、吐き気などの体調不良が実際に起こる状態として知られており、本人の気持ちの問題ではないとされています。ただし原因や仕組みについてはまだ研究が続いている分野でもあります。
Q. 職場の柔軟剤や香水をやめさせることはできますか?
個人の私物の使用をやめさせる強制力までは難しい場合が多いですが、産業医への相談や座席・換気の調整、社内アンケートでの周知など、できる範囲の配慮を探ることは可能だとされています。
Q. 診断書がないと配慮をお願いできませんか?
診断名がなくても、体調の変化と状況をセットで伝えることで配慮につながるケースはあります。ただし制度や合理的配慮の手続きとしては、医療機関での相談や診断が助けになる場合も多いです(2026年6月時点の情報です)。
Q. 理解してもらえないとき、どう伝えればいいですか?
「わがまま」ではなく「この匂いの後、頭痛と吐き気が出て動けなくなる」など、体に起きる反応を具体的に伝える方法が、誤解を減らしやすいとされています。一人で伝えるのが難しい場合は、産業医や支援機関を間に入れる方法もあります。

PR

atGP 障害者求人・転職支援

言い出しにくいことも、一緒に整理しましょう

伝え方に悩んだときも、まずはお話を聞かせてください。

無料相談はこちら(オンライン可)
おのざる
おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。