満員電車に乗った瞬間、お腹がきゅっと締まる。次の駅まで何分あるか、頭の中で逆算してしまう。会議の最中も、内心ずっと「今、お腹の音が鳴ったらどうしよう」「途中で出ていったら何て思われるだろう」と考えている。過敏性腸症候群(IBS)のある方にとって、こうした感覚は決して珍しいものではないようです。検査では「特に異常なし」と言われることが多いぶん、周りには伝わりにくく、本人だけがずっとお腹と相談しながら毎日を過ごしている。そのしんどさについて、できるだけ丁寧に整理してみました(2026年6月時点の情報です)。
検査では「異常なし」、なのにこんなに苦しい
過敏性腸症候群は、内視鏡などの検査をしても炎症や腫瘍といった目に見える異常が見つかりにくいことが多いとされています。下痢が続く「下痢型」、便秘が続く「便秘型」、両方を繰り返す「混合型」、ガスの症状が中心の「分類不能型」など、出方にも個人差があります。日本では成人の一定割合がこの症状を抱えているとも言われ、決して珍しい状態ではありません。
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障害と前向きに向き合う人のイメージ
厄介なのは、検査で「異常なし」と言われることと、本人の苦しさが釣り合っていない点です。「数値も画像も正常なのに、なぜこんなにつらいのか」という戸惑いを、本人自身が抱えていることもあります。周囲からは「ちょっとお腹が弱いだけ」と見えてしまいがちですが、実際には「いつ来るか分からない腹痛」と毎日向き合い続ける緊張感そのものが、大きな負担になっています。
周りには見えない緊張感を、ひとりで抱えたまま電車に乗る時間
「お腹が弱い」という一言で片付けられてしまうことも多いのですが、実際には食事の内容だけでなく、緊張やストレスが症状を強めることがあるとも言われています。だからこそ、本人にとっては「気の持ちようでは片付けられない」感覚と「気にしすぎなのかもしれない」という自己疑念が、同時に押し寄せてくることがあります。
「検査で異常なし」って言われると、自分が大げさなのかなって思っちゃいますよね。でも数値に出ないからといって、苦しさがなかったことにはならないですよ。
ミミ
「次の駅まで持つかな」が、不安をどんどん大きくする
過敏性腸症候群でよく語られるのが、「症状そのもの」だけでなく「症状が起きるかもしれない」という予期不安が、さらに状態を悪化させてしまうという悪循環です。すぐにトイレに行けない満員電車や会議室にいるだけで緊張し、その緊張がお腹の調子をさらに乱す、という流れが起きやすいとされています。
予期不安と症状がぐるぐると結びついていく、よくあるパターン
この悪循環の中にいると、「電車に乗れない自分」「会議を抜けてしまう自分」を責める気持ちが積み重なっていきます。実際には体の反応であって、本人の性格や努力不足の問題ではないとされていますが、何度も同じことが続くと「自分はだらしないのかもしれない」と感じてしまう方も少なくありません。
「会議中にお腹が鳴りそうな気がして、内容が全然頭に入らない日がある。実際に鳴ったことは数えるほどなのに、毎回『今日も鳴るかも』って身構えてるだけで疲れる。誰にも言えなくて、ただ静かに耐えてる。」
20代・女性(IBS下痢型、営業職)
「通勤ラッシュの時間がどうしても無理で、始発で出るようにしてる。早起きはしんどいけど、各駅停車でいつでも降りられる方が、急行で速く着くより全然マシ。誰にも相談してないけど、これが今のところ一番効く対策。」
30代・男性(IBS混合型、SE)
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過敏性腸症候群の出方や対策の効き方には個人差があります。ここで紹介した工夫がすべての方に同じように当てはまるわけではありません。気になる症状が続く場合は、消化器内科や心療内科への相談も検討してみてください。
通勤・職場でできる工夫と、伝え方
すべての不安をゼロにすることは難しくても、環境や伝え方を少し変えるだけで、緊張の度合いが変わることがあります。よく紹介される工夫を整理してみます。
- 急行ではなく各駅停車を選び、「次の駅まで」の距離を短くしておく
- 時差通勤やフレックス制度が使える場合は、混雑する時間帯をずらす
- 初めて行く場所では、事前に駅や建物のトイレの位置を確認しておく
- 会議は可能な範囲でオンライン参加に切り替え、席を外しやすくする
- 座席をトイレに近い場所にしてもらえるか、相談してみる
伝え方に悩む方も多いのですが、「お腹が弱い」だけでは具体的に何に困っているのかが伝わりにくいとされています。「通勤や会議中に急な腹痛が起きることがあり、席を外す可能性がある」というように、起こりうる状況とセットで伝える方法が、誤解を減らしやすいようです。一人で伝えるのが難しい場合は、産業医や人事を間に入れる方法もあります。
「だらしないわけじゃない、体の反応だ」って自分に言ってあげるだけでも、ちょっと楽になることがあります。伝え方に困ったら、一人で抱えずに相談してくださいね。
ミミ
診断書があれば、座席の配慮や時差通勤、オンライン会議への切り替えなど、できる範囲の対応につながるケースもあるとされています。ただし対応の幅は会社や状況によって差があり、すべてが制度として保障されているわけではありません(2026年6月時点の情報です)。一人で交渉するのが難しいと感じたら、就労支援機関を間に入れる方法も検討してみてください。
食事内容やストレス、睡眠など、症状に影響する要因は人によって異なります。「これをやれば必ず治る」という単一の正解はなく、自分に合う工夫を少しずつ見つけていく形になることが多いようです。
「また今日も大丈夫かな」と毎朝考えてしまうこと自体、すでにとても頑張っている証拠です。不安と付き合いながら毎日を過ごしているあなたを、まず自分自身が労ってあげてください。
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症状が重く、通勤や勤務そのものが難しいと感じる場合は、無理を続けることだけが正解ではありません。医療機関や支援機関に相談しながら、ご自身に合った働き方を一緒に探していく選択肢もあります。
よくある質問
Q. 過敏性腸症候群は検査をすれば原因がわかりますか?
過敏性腸症候群は、内視鏡などの検査をしても炎症や腫瘍といった目に見える異常が見つかりにくいことが多いとされています。そのため「異常なし」と言われても症状自体がなくなるわけではなく、検査結果と本人のつらさが一致しにくい点が特徴のひとつです。
Q. 通勤電車がつらいとき、どんな対策がありますか?
急行ではなく各駅停車を選ぶ、出発時間を少し早めて始発寄りの電車にする、乗車前にトイレの場所を確認しておくなど、不安を減らす工夫が紹介されています。時差通勤やフレックス制度が使える場合は、混雑時間を避けることも選択肢になります。
Q. 上司にどう伝えればいいかわかりません
「お腹が弱い」だけでは伝わりにくいことがあるため、「通勤や会議中に急な腹痛が起きることがあり、席を外す可能性がある」など、具体的に起こりうる状況を伝える方法が助けになるとされています。産業医や人事を通す方法もあります。
Q. 職場で配慮を求めることはできますか?
診断書があれば、座席をトイレに近い場所にする、オンライン会議への切り替え、時差通勤の許可など、できる範囲の配慮につながるケースがあるとされています。ただし対応は会社や状況によって差があり、すべてが制度として保障されているわけではありません(2026年6月時点の情報です)。
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おのざる(mimemime)
就労支援員として障がいのある方の「働く」に伴走してきた経験をもとに、一人ひとりに向き合う支援を届けています。