メンタル / PTSD・複雑性PTSD

「その音が聞こえた瞬間、仕事どころじゃなくなる」PTSDのフラッシュバックと、職場でのやり過ごし方

おのざる(mimemime)2026年7月読了目安:11〜14分
気持ちを整理するためのメモ、精神的なケアのイメージ

目次

  1. フラッシュバックが来るとき、脳の中では何が起きているのか
  2. 職場で「引き金」になりやすいもの
  3. その場で試せるグラウンディングの方法
  4. 職場への伝え方と、求められる配慮
誰かが突然大きな声を出した瞬間、全身がこわばった。コピー機の紙詰まり音が、あの日の音と重なって手が震えた。においのせいで、ある記憶が一気によみがえって、しばらく動けなくなった。PTSDのフラッシュバックは、「ただ思い出す」のとは少し違います。体ごと、あの場所に引き戻されるような感覚を伴うことがある。仕事の場でそれが起きたとき、「なんで今?」「こんな自分はおかしい?」と思ってしまう方も少なくないようです。この記事では、フラッシュバックと職場の関係を、当事者の声をもとに整理してみました(2026年7月時点の情報です)。

フラッシュバックが来るとき、脳の中では何が起きているのか

PTSDは、強いストレスや恐怖を伴う出来事を経験したあとに、それに関連した症状が長く続く状態とされています(正式には「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれます)。フラッシュバックはその代表的な症状のひとつで、過去の出来事の映像や感覚が、今現在のこととして突然よみがえる体験とされています。

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精神的に追い詰められた人のイメージ
精神的に追い詰められた人のイメージ

ポイントは、「思い出す」のではなく「今起きているように感じる」というところです。脳が「これは過去の記憶だ」と判断する前に、体の防衛反応が先に動いてしまうことがあるとも言われています。そのため、当の本人も「なぜ急に?」と混乱することが多いのだそうです。

いまの職場 よみがえる記憶 感覚・映像がリアルによみがえる
今の職場にいるのに、脳が過去の場面を「今のこと」として処理してしまうことがある
「なんで今頃こんなことを」って自分を責めてしまう人がすごく多いんですよね。でもフラッシュバックは意志の力でどうにかなるものではなくて、脳と体の反応なので、「おかしい」じゃないんです。
ミミ

また、単回のトラウマではなく、長期間にわたる虐待やDV、ハラスメントなどによる「複雑性PTSD」では、フラッシュバックの出方がより多様だったり、感情の波が予測しにくかったりすることもあるとされています。

職場で「引き金」になりやすいもの

フラッシュバックには「引き金(トリガー)」があります。人によって違いますが、職場の環境でよく挙げられるものをまとめてみました。

引き金 (トリガー) 🔊 音 大声・怒鳴り・物音 💬 声・言葉 特定の口調・怒鳴り 👤 人間関係 体格・仕草が似た人物 👁 視覚 暗がり・閉鎖空間 📋 状況 叱責・密室・孤立 👃 匂い タバコ・香水・食べ物
引き金の種類は人によってまったく異なる。「それがなぜトリガーになるのか」は本人が一番わからなかったりする

「製造ラインで、機械の金属音がすごく大きい部署だったんですが、ある日そこで固まってしまって。前の職場でのことが全部戻ってきたんですよね。上司から怒鳴られた日と同じ音のトーンで。自分でもびっくりした。」

30代・男性(複雑性PTSD・製造業から転職)

「面談室に一対一で呼ばれただけで心拍数が上がって手が震える。別にきつい話じゃないのはわかってる。でも体が勝手にあのときの感覚を思い出してしまう。「お前だけ残れ」って言われた瞬間とリンクしてるみたいで。」

20代・女性(PTSD・事務職)

引き金は「論理的に怖いもの」じゃなくて、「感覚が過去の場面と結びついているもの」です。だから、第三者には「なぜそんなことで?」と見えても、本人にとっては体全体で反応するリアルな刺激になってしまいます。

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自分のトリガーがよくわからない場合、「いつ・どんな状況で・体がどう反応したか」を短くメモしておくと、2〜3週間後にパターンが見えやすくなるとされています。ただし、記録すること自体が負担になる場合は無理せず、主治医や支援者に相談してみてください。

その場で試せるグラウンディングの方法

フラッシュバックが起きたとき、「今ここにいる」ということを感覚で確かめるのが「グラウンディング」です。脳が過去の場面に引き込まれているとき、現在の感覚刺激を意識的に使うことで、少しずつ今の場所に戻りやすくなると言われています。

よく知られているのが「5-4-3-2-1法」と呼ばれる方法で、五感を順に使っていきます。

5
見えるものを
5つ数える
4
触覚
触れているものを
4つ感じる
3
聞こえる音を
3つ探す
2
匂い
においを
2つ感じる
1
口の中の
味を感じる

ただ、フラッシュバックの最中に「5つ数える」という作業を落ち着いてできるかどうかは、そのときの状態によります。まずは「足の裏が床についている」「手に何かが触れている」という一点だけに意識を向けるところから始めてみるのが、実際には続けやすいという声もあります。

グラウンディングは「練習するほど使いやすくなる」と言われています。フラッシュバックが来ていない落ち着いた時間に試しておくと、いざというときに動きやすいかもしれないです。
ミミ

また、職場でひとりになれる場所(休憩室・廊下・トイレなど)を事前に把握しておくことも、「ここに逃げられる」という安心感につながることがあります。逃げ場所を決めておくだけで、緊張の度合いが変わることがあるとも聞きます。

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グラウンディングはセルフケアの一つとして紹介されていますが、PTSDの症状がある場合は専門的な治療との組み合わせが重要とされています。症状が強い、または日常生活に大きな支障がある場合は、精神科・心療内科や主治医への相談を優先してください(2026年7月時点の情報です)。

職場への伝え方と、求められる配慮

「PTSDのことを職場に伝えるべきか」は、本当に悩ましい問題です。開示するかどうかは本人の意思次第ですし、状況によって正解も変わります。ただ、何も伝えないまま抱えきれなくなってしまう前に、「何を伝えるか」だけでも整理しておくと、選択肢が少し広がることがあります。

病名より「起こりうる状況」を伝える

「PTSD」という病名を開示することへの抵抗感がある場合は、病名を使わずに状況だけを伝える方法も選択肢のひとつです。たとえば、

こうした「具体的に何が起きるか」「何があれば助かるか」を伝えることで、職場が配慮しやすくなることがあります。産業医や人事を経由して伝える方法も、心理的な負担を減らす手段になります。

職場に求められることがある配慮の例

「配慮を求めること」は、弱さではなく、継続して働くための手段です。何が必要かを伝えられる状態にすること自体が、仕事を続けるうえで大きな力になります。
就労移行支援事業所など、就職前や就職後のサポートを行う機関では、職場への伝え方や自己理解の整理を一緒に考えてくれるところもあります(2026年7月時点。利用できる機関・条件は自治体によって異なります)。

よくある質問

Q. フラッシュバックが仕事中に来たとき、どう対処すればいいですか?
「今、ここにいる」を感覚で確かめるグラウンディングが有効とされています。目に見えるものを5つ数える、足の裏が床に触れているのを感じるなど、五感を通じて現在の場所を確かめる方法です。一点に絞って試すだけでも変わることがあるようです。ただし症状が強い場合は主治医への相談をお勧めします。
Q. 上司にPTSDのことをどこまで伝えるべきですか?
「病名」を開示する義務はありませんが、「特定の音で体調が乱れることがある」「一時的に席を外す必要が生じることがある」など、具体的に起こりうる状況を伝えることが助けになるケースがあります。産業医を経由して伝える方法もあります。
Q. 自分のトリガーがよくわからないのですが、どうすればいいですか?
症状が出た日時、直前の状況、体の反応をメモする方法が紹介されています。2〜3週間続けると引き金のパターンが見えやすくなることがあるとされています。ただし記録すること自体が負担になる場合は、無理せず主治医や支援者に相談してください。
PTSDフラッシュバックと職場:この記事のポイント 1 フラッシュバックは「意志の力」でどうにかなるものではない 脳と体の反応。自分を責めないことが大前提 2 引き金(トリガー)は人によってまったく違う 音・匂い・人の仕草など。記録するとパターンが見えやすい 3 グラウンディングで「今ここ」に戻る練習を 5-4-3-2-1法など。落ち着いた時間に試しておくと使いやすくなる 4 職場への伝え方は「病名」より「起こりうる状況」が伝えやすい 産業医経由で伝える選択肢もある
この4点を頭に置いておくだけで、少し違う見え方ができるかもしれません

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おのざる / mimemime代表
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