グラフの赤い棒と緑の棒が、自分にはほとんど同じ色に見える。会議資料の「重要」が赤字なのに気づかず、あとから注意された。信号や配線の色分けで、一瞬迷ってヒヤッとしたことがある。色覚に特性のある方から、こういう話をよく聞きます。ただ、身体障害者手帳の対象になるようなものでもなく、パッと見て周りに気づかれるものでもないので、「これって困りごととして言っていいのか」と、ずっと一人で抱えている方も少なくないようです。この記事では、色覚の多様性と仕事の関係を、当事者の声をもとに整理してみました(2026年7月時点の情報です)。
色覚の多様性とは何か、どれくらいの人に関係があるのか
色の感じ方には生まれつきの個人差があり、特に赤と緑の区別がつきにくいタイプは、日本人男性の約20人に1人、女性では約500人に1人にみられるとされています。国内では300万人以上にのぼるとも言われ、決して珍しいものではありません。
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ゆっくり考える人のイメージ
かつては就職時の健康診断で色覚検査が行われることが一般的でしたが、2001年に省令が改正され、雇入時の健康診断での色覚検査は原則として廃止されています。そのため、自分の色の見え方に特性があることに気づかないまま学生時代を過ごし、就職してから、あるいは仕事の中でのちょっとしたつまずきをきっかけに初めて気づく、というケースもあるようです。
赤と緑の区別がつきにくいタイプでは、この2色が近い色に見えることがある(見え方には個人差があります)
「色覚異常」って名前がちょっと強く感じるかもしれませんが、いまは「色覚多様性」とも呼ばれます。見え方のタイプが違う、というだけで、優劣の話ではないんです。
ミミ
仕事の中で実際に「困った」と感じる場面
色の見分けにくさは、日常生活ではそれほど支障にならないことも多いのですが、仕事の場では色分けされた情報に頼る場面が意外と多く、困りごとにつながりやすいようです。よく挙がるのは次のような場面です。
- 資料やスプレッドシートで、赤字・緑字のセルの違いに気づきにくい
- ON/OFFを示すランプ(赤・黄・緑)の状態が瞬時に見分けにくい
- 配線や工具、部材が色コードで管理されている現場で、確認に時間がかかる
- グラフや地図の凡例が色だけで区別されていて、資料の意味が読み取りにくい
- 暗い場所や、小さく短時間しか見えない色ほど間違えやすい
「電気系の実習で、配線の色を見て作業する場面があったんですけど、赤と茶色がどうしても近く見えて。周りは一瞬で判断してるのに、自分だけ確認に時間がかかる。ミスはしなかったけど、『遅い』って思われてないかずっと気になってました。」
20代・男性(先天色覚特性・技術職を経験)
「事務職で、上司が資料に赤字で修正指示を入れてくれてたのに、パッと見ただけだと黒字と区別がつかなくて見落としたことがあって。指摘されて初めて『あ、そこ赤かったんだ』って。怒られたわけじゃないけど、自分だけ何かおかしいのかなって落ち込みました。」
30代・女性(色覚特性・事務職)
共通しているのは、「できない」わけではなく「時間がかかる」「見落としやすい」という感覚だという点です。集中していれば気づけることも多いぶん、忙しい時や疲れている時、急いでいる時にミスが出やすくなるとも言われています。
「障害というほどじゃない」と、言い出せなかった気持ち
色覚の特性は、多くの場合、身体障害者手帳の対象にはなりません。見た目でわかるものでもなく、「病気」というより「見え方の個人差」に近いものだとされています。だからこそ、困っていても「これは障害者雇用の相談窓口で話すようなことなのか」「単なる自分の不注意なんじゃないか」と、線引きに迷う方が多いようです。
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色覚の特性は障害者手帳の対象になるかどうかにかかわらず、実際に仕事のしづらさにつながっているなら、それは「配慮を相談していい困りごと」です。手帳の有無と、職場に配慮を求められるかどうかは、必ずしもイコールではありません。
また、「色が見分けにくい」という感覚そのものが説明しづらく、周りに伝えても「気をつければいいだけでは」と軽く受け止められてしまう不安もよく聞きます。実際には、本人が「気をつける」量を増やすほど疲れが蓄積していくという面もあり、資料や環境側の工夫のほうが、負担を減らす近道になることも少なくありません。
職場の中に「あの人に確認すれば大丈夫」というキーパーソンを一人つくっておくのも、実際に効果があったという声を聞きます。制度で解決できない部分は、人との関係でカバーできることもあるんですよね。
ミミ
資料の工夫と、職場への伝え方
色以外の情報も併用した資料にする
色覚の特性があっても伝わりやすい資料には、いくつかの共通した工夫があります。赤と緑の組み合わせを避け、青・黄・黒を軸にした配色にする、色分けだけでなく文字ラベルや模様(斜線・網掛けなど)も併用する、といった方法です。
色だけに頼らない資料は、色覚特性の有無に関わらず全員にとって読みやすくなる
職場への伝え方の例
病名や検査結果を詳しく説明する必要はありません。「何に困っていて、何があれば助かるか」を具体的に伝えるだけでも、状況は変わることがあります。
- 「色の見分けに特性があるので、資料は色だけでなく文字やパターンも併用してもらえると助かります」
- 「赤字の修正箇所を見落としやすいので、下線や太字も一緒に使ってもらえると安心です」
- 「配線・部材の確認に少し時間がかかることがあります」
色覚の特性は法律上の「障害」に該当しない場合が多いため、合理的配慮の対象として明確に定められているわけではありません。ただし、職場によっては個別の相談や工夫に応じてもらえることもあります。まずは上司や人事、産業医など話しやすい窓口に相談してみることをお勧めします(2026年7月時点の情報です)。
「気をつければいいだけ」ではなく、「資料や環境の側にも工夫の余地がある」と考えると、本人の負担だけに頼らない働き方に近づきます。
よくある質問
Q. 色覚の特性は障害者手帳の対象になりますか?
いわゆる先天色覚異常は、原則として単独では障害者手帳の対象にはなりません。ただし他の視覚的な症状を伴う場合など個別の事情もあるため、詳しくは眼科などの専門医療機関にご確認ください。
Q. 就職の健康診断で色覚検査は行われますか?
2001年の省令改正により、雇入時健康診断での色覚検査の実施義務は原則廃止されています。業務内容との関連が必要と判断された場合に、説明と同意のうえで行われることがあるとされています。
Q. 色覚の違いがあると就けない職業はありますか?
警察官や消防官など、一部の職業では色の識別に関する基準が設けられている場合があります。希望する職業がある場合は、募集要項や採用窓口に個別に確認することをお勧めします。
Q. 職場で色分け資料が見分けにくいとき、どう伝えればいいですか?
「色の見え方に特性があるので、色以外に文字やパターンも併用してもらえると助かります」など、具体的に困る場面と欲しい工夫を伝える方法があります。産業医や人事を通じて伝える方法もあります。
この5点を頭に置いておくだけで、少し伝えやすくなるかもしれません
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「これくらいで相談していいのかな」も、聞かせてください
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新
おのざる / mimemime代表
就労支援の現場で当事者の声に向き合い続けてきた経験をもとに、生きた情報をお届けしています。