検査結果を聞いた帰り道、頭の中でぐるぐる回るのは病気のことだけじゃなく、「この仕事、続けられるのかな」ということだったりします。治療のスケジュールも副作用の程度もまだわからないうちから、退職届のことがちらつく人もいれば、逆に「辞めたら負けな気がして」無理に普段通りを演じてしまう人もいる。どちらが正しいという話ではなく、そのくらい両立というのは揺れながら手探りで進むものだと思います。この記事では、治療と仕事を両立する中でよく聞く困りごとと、2026年4月から始まった支援の仕組みを、当事者の声をもとに整理してみました(2026年7月時点の情報です)。
働きながら治療する人は、実は珍しくない
がんと診断される人のうち、働く世代(20〜64歳)にあたる人はおよそ3人に1人とされています。かつては「がん=入院して長期療養するもの」というイメージが強かった時代もありましたが、通院での治療が主流になった今、診断を受けたあとも仕事を続ける人は決して少数派ではありません。
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障害と前向きに向き合う人のイメージ
それでも、がんと診断された人のうち約2割が離職・廃業に至り、そのうちの半数以上が、実は治療を始める前の段階で辞めてしまっているという調査結果もあります。つまり、実際に治療をしてみて「続けられない」と判断した結果というより、診断直後の不安の大きさそのものが、仕事を手放す決断を後押ししてしまっている面があるということです。
診断直後は「辞めるか続けるか」の二択で考えてしまいがちだが、実際は両立の形もさまざま
「告知された日、頭が真っ白になって、その場で『退職も考えます』って上司に言いそうになりました。でも主治医に相談したら『治療しながら働いている人はたくさんいますよ』と言われて、少し落ち着いて。あのとき勢いで辞めなくてよかったと今は思います。」
40代・女性(乳がん治療と営業事務の両立を経験)
「一番きつかったのは治療そのものより、『いつまで休むかわからない』という宙ぶらりんな状態を上司に説明することでした。自分でも先が見えないのに、会社には見通しを求められる。そのギャップに一番消耗した気がします。」
30代・男性(大腸がん治療とシステムエンジニア職の両立を経験)
「辞めるか、続けるか」診断直後に揺れる気持ち
診断を受けてすぐの時期は、治療方針も、副作用の出方も、仕事にどれくらい支障が出るのかも、ほとんどが「まだわからない」状態です。情報が少ないまま大きな決断を迫られているような感覚になり、「辞める」という選択肢が、先の見えない不安から逃れるための一番手っ取り早い答えに見えてしまうことがあります。
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治療の内容や副作用の程度は人によって大きく異なり、この記事の内容がそのまま自分に当てはまるとは限りません。仕事を続けられるかどうかの判断は、主治医や産業医に自分の病状と業務内容を具体的に伝えたうえで相談することをお勧めします。
一方で、「辞めたら負けな気がする」「治療していることを弱みだと思われたくない」と、無理に普段通りを演じてしまう人もいます。周囲に心配をかけたくない、偏見を持たれたくないという気持ちから、診断を受けたことを伝えないまま働き続けている人が一定数いるとも言われています。どちらの気持ちも自然なものですが、「今すぐ白黒つけなくてもいい」という視点を持てるかどうかが、後々の負担の大きさを左右するようです。
辞めるか続けるか、その日のうちに決めなくても大丈夫です。傷病手当金や休職制度を使いながら考える時間を確保する、という選択肢もあります。
ミミ
治療しながら働く中で、実際にぶつかる困りごと
治療と仕事の両立というと通院日程の調整ばかりが注目されがちですが、実際に声としてよく挙がるのは、もう少し地味で、でも毎日のことだからこそ効いてくる困りごとです。
- 抗がん剤治療後の倦怠感やだるさが、周囲には伝わりにくい
- 脱毛など外見の変化を、どう説明するか・そもそも説明するかで悩む
- 通院のたびに休みを取ることへの気まずさが積み重なる
- 「無理しないで」と言われる一方で、実際の業務量は変わらないことがある
- 治療の見通しが立たない中で、今後のキャリアや評価がどうなるか不安になる
特に外見の変化については、「体調は説明できても、見た目の変化は言葉で先回りしにくい」という難しさがあるようです。ウィッグや帽子を使うにしても、それ自体が「治療していることを表明する」ことになるため、隠すか、伝えるかの判断がまた一つ増える形になります。
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倦怠感や集中力の低下は、本人の気力の問題ではなく治療の影響であることが多いとされています。「サボっている」わけでは決してないので、必要であれば主治医に業務内容を伝え、可能な配慮について意見書をもらうという方法もあります。
2026年4月から始まった両立支援制度と、伝え方の工夫
2026年4月、事業主の努力義務になった
2026年4月に施行された改正労働施策総合推進法により、治療と仕事の両立を支援する措置を講じることが、事業主の努力義務として位置づけられました。時差出勤や時短勤務、休暇制度の整備など、会社側が体制を整えることが国から求められる形になったということです。「努力義務」であるため罰則を伴う強制力はまだ弱いものですが、企業側にも取り組みを進める根拠ができたという意味で、これまでより相談しやすくなる可能性はあります(2026年7月時点の情報です)。
一直線に進むとは限らず、行きつ戻りつでいい。慌てて全部を決めなくても大丈夫
職場への伝え方の例
病名や検査結果の詳細まで伝える法的な義務はありません。業務に影響する範囲を、必要な相手に必要な分だけ伝えるという考え方で十分とされています。
- 「月に◯回、通院で半休をいただくことがあります」
- 「治療の影響で、時期によって体力の波があるかもしれません」
- 「詳しい病状は伏せておきたいので、上司止まりでお願いできますか」
がん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院など全国の病院に設置されていて、その病院にかかっていない人でも無料で相談できます。一人で抱え込む前に、専門の窓口を頼ってみてください。
ミミ
治療の内容、仕事内容、職場の状況は一人ひとり違うため、この記事の内容がそのまま当てはまるとは限りません。実際の判断は、主治医・産業医・職場の窓口とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年7月時点の情報です)。
「辞めるか、続けるか」の二択で急いで決めなくていい。まずは今日の気持ちを、誰かに話してみることから始めても遅くありません。
よくある質問
Q. がんと診断されたら、会社を辞めなければいけませんか?
必ずしも辞める必要はありません。近年は通院しながら働き続ける人も多く、治療方法や副作用の程度によって続けられる働き方はさまざまです。ただし判断は個々の病状によるため、主治医や産業医とよく相談することが大切です。
Q. 治療のことを、職場にどこまで伝える必要がありますか?
法律上、病名まで詳しく伝える義務はありません。業務に影響する範囲(通院の頻度、体調が不安定になりやすい時間帯など)を、必要な相手に必要な分だけ伝えるという考え方で問題ないとされています。
Q. 治療と仕事の両立支援とはどんな制度ですか?
2026年4月に施行された改正労働施策総合推進法により、事業主が治療と仕事の両立を支援する措置を講じることが努力義務となりました。時差出勤や時短勤務、休暇制度の整備などが想定されています(2026年7月時点の情報です)。
Q. 治療の影響で以前のように働けない場合、障害者手帳の対象になりますか?
がんそのものは手帳の対象ではありませんが、治療の後遺症などにより身体機能に一定の障害が残った場合は、身体障害者手帳の対象になることがあります。詳しくは主治医や自治体の窓口にご確認ください。
この5点を頭に置いておくだけで、少し気持ちが軽くなるかもしれません
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新
おのざる / mimemime代表
就労支援の現場で当事者の声に向き合い続けてきた経験をもとに、生きた情報をお届けしています。