会議中に急に息が苦しくなって、手が震えて、その場にいられなくなる。パニック障害の発作は、本人にとってはただの体調不良ではなく「みんなの前で取り乱してしまった」という記憶として残りやすいものだと言われています。発作そのものより、そのあと待っている「次の日、どんな顔で出社すればいいのか」という気まずさのほうがつらい、という声も少なくありません。この記事では、就労支援の現場で聞いてきた声をもとに、パニック障害のある方が抱えやすい職場での気まずさとの向き合い方、伝えるかどうかの迷い、使える配慮について整理しました(2026年7月時点の情報です)。
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会議中、あの「息ができない」瞬間が来たとき
パニック発作の前兆は、たいてい何の前触れもなくやってくると言われています。会議室の椅子に座っているだけなのに、急に心臓がドキドキと速く打ち始め、息が浅くなり、手のひらにじわっと汗をかく。「このままだと倒れるかもしれない」「みんなの前で変になったらどうしよう」という恐怖が重なって、余計に呼吸が乱れていくという悪循環が起きやすいそうです。
発作そのものは、体に危険な異常があるわけではないとされています。「死ぬかもしれない」と感じるほどの強い不安が出ることがありますが、それ自体が命に関わるものではないと知っておくだけで、少し落ち着ける場合もあるようです。
ミミ
実際にその場でできることは限られています。「すみません、少し外します」と一言だけ伝えて席を立つ、水を一口飲む、深呼吸を意識する。それでも収まらないときは、静かな場所に移動して数分やり過ごすしかない、という声が多く聞かれます。
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パニック発作の現れ方や強さには個人差があります。この記事で挙げる例がそのまま当てはまるとは限らないため、症状が続く場合や強い不安がある場合は、自己判断せず医療機関に相談することをお勧めします。
誰にも気づかれないように、机の下でだけ耐えている瞬間がある
「正直、あの日のことを思い出すと今でも胃のあたりがぎゅっとなります。会議中に急に息が苦しくなって、手が震えて、みんなの前で『すみません、ちょっと外します』って言うのがやっとでした。次の日、あの時隣に座ってた先輩の顔をまともに見れなくて、朝からずっとトイレに隠れてました。3日くらい、誰かに何か言われるんじゃないかってびくびくしてました。」
20代・女性(パニック障害・事務職)
一番つらいのは発作そのものより「次の日」
発作が起きた瞬間より、そのあとの時間のほうがつらいと感じる人は多いようです。周りを驚かせてしまった申し訳なさ、取り乱した姿を見られた恥ずかしさ、「次にまた起きたらどうしよう」という予期不安が重なって、翌日の出社そのものが大きなハードルになってしまいます。
同僚が普段通りに接してくれていても、「本当は気を遣われているんじゃないか」「陰で心配されているんじゃないか」と考えてしまい、素直に受け止められないこともあるそうです。結果として、必要以上に距離を置いてしまったり、無理に元気にふるまってしまったりする人もいます。
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発作を見られたあとに強い恥ずかしさや自己嫌悪を感じるのは、珍しいことではないとされています。まずはその気持ち自体を否定せず、少しずつ落ち着ける環境を整えていくことが助けになる場合があります。
「営業してた頃、朝の満員電車で息ができなくなって、次の駅で無理やり降りたことが何度もありました。会社には『体調不良で少し遅れます』としか言ってなくて、上司には最後まで本当のことを話せませんでした。今思えば、あの頃はただ我慢すればいつか治ると思ってたんですけど、半年経っても良くならなくて、結局産業医に相談しました。もっと早く言えばよかったなと今は思います。」
40代・男性(パニック障害・営業職)
次の日、少し気持ちが軽くなった人がやっていたこと
- 信頼できる同僚に「昨日はありがとう、もう大丈夫です」と一言だけ自分から伝えた
- その日の出来事をメモに書き出して、頭の中だけでぐるぐる考え続けるのをやめた
- 「今日は誰にも何も聞かれなかった」という事実を意識して確認するようにした
- 体調が万全でない日は、無理に普段通りにふるまおうとしなかった
「気まずい」という感覚は、実際には自分が思っているほど周りには残っていないことも多いようです。もちろんすぐには消えない気持ちですが、一言伝えるだけで少し楽になったという声もあります。無理のない範囲で試してみてください。
ミミ
職場に伝えるか、黙っておくか。揺れる天秤
発作を見られたことをきっかけに、「いっそのこと職場に伝えてしまおうか」「でも詳しく知られるのも怖い」という間で気持ちが揺れる人は少なくありません。伝えること(オープン就労)にも黙っておくこと(クローズ就労)にも、それぞれ良い面と負担になる面があるとされています。
どちらが正解というより、自分がどちらの負担なら耐えやすいかで選ぶことになる
「部下の前で発作を起こしてしまって、情けないやら申し訳ないやらで、しばらく笑って誤魔化すことしかできませんでした。管理職なのにこんな姿見せてしまってって、めちゃくちゃ自己嫌悪でした。でも後から一人の部下が『実は私も似たようなことがあって』と話しかけてくれて、それで少し救われました。」
50代・女性(パニック障害・管理職)
病名や症状の詳細まですべて伝える義務はありません。「発作が起きやすい場面」「起きたときにしてほしい対応(救急車は呼ばなくてよい、少し休めば落ち着くなど)」といった、業務に関わる範囲だけを、必要な相手に必要な分だけ共有するという考え方で十分とされています。信頼できる上司が一人でもいれば、その人を通じてチーム内の調整をお願いするという方法もあります。
使える配慮と、一人で抱えないための相談先
精神障害者保健福祉手帳という選択肢
パニック障害は不安障害の一つとして、精神障害者保健福祉手帳の対象になり得るとされています。等級は症状の程度や生活・仕事への影響によって異なるため、詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口に確認するのが確実です(2026年7月時点の情報です)。手帳を取得すると、障害者雇用枠での就職や、企業側の合理的配慮を前提にした働き方を選びやすくなる場合があります。
通勤・勤務面で相談できる配慮の例
- 時差出勤・フレックスタイム制度の利用(満員電車を避ける)
- 在宅勤務(リモートワーク)への一部切り替え
- 会議での座席位置の配慮(出入口に近い席にするなど)
- 発作時に周囲へどう対応してほしいかの事前共有
相談する相手は上司が望ましいですが、話しにくければ産業医や人事担当者でも構いません。安心して話せる相手が一人でも見つかると、抱え込んでいた気持ちが少し軽くなることがあります。
ミミ
相談できる窓口
- 主治医・かかりつけの心療内科/精神科(症状の記録や治療の相談)
- 職場に選任されている産業医(50人以上の事業場に選任義務あり)
- 精神保健福祉センター、自治体の障害福祉窓口
- 就労移行支援事業所(症状との付き合い方を含めた就労準備)
パニック発作の現れ方や、気まずさとの向き合い方には個人差があります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の判断は主治医・支援者・自治体の窓口とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年7月時点の情報です)。
発作を見られたことは、恥ずかしい失敗ではありません。次の日をどう過ごすかは、今から少しずつ選び直せます。気まずさを抱えているのは、決してあなた一人ではありません。
よくある質問
Q. パニック障害でも障害者手帳は取れますか?
パニック障害は不安障害の一つとして、精神障害者保健福祉手帳の対象になり得るとされています。生活や仕事への影響の程度によって等級が変わるため、詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口にご確認ください(2026年7月時点の情報です)。
Q. 発作を見られたあと、周りにどう説明すればいいですか?
病名や詳しい症状まで説明する必要はないとされています。「体調を崩しただけなので大丈夫です」など、必要最低限の一言で済ませてよい場面も多いようです。落ち着いてから改めて伝えたい場合は、信頼できる上司や産業医を通す方法もあります。
Q. 満員電車がつらい場合、どんな配慮が受けられますか?
時差出勤やフレックスタイム制度の利用、在宅勤務への切り替えなど、通勤の負担を減らす配慮を受けられる場合があります。制度の有無は勤務先によって異なるため、人事担当者や産業医に相談してみることをお勧めします。
Q. 発作が続く場合、休職も選択肢になりますか?
断定はできませんが、症状が続き業務への影響が大きい場合、休職して治療に専念する選択をする人もいます。休むこと自体を責める必要はなく、主治医と相談しながら判断していくことが助けになるとされています。
Q. クローズ就労のままで働き続けることは可能ですか?
可能な場合もありますが、体調の変化を理解してもらいにくい面もあるとされています。無理に開示するかどうかを急いで決める必要はなく、就労移行支援機関などの支援者と相談しながら、自分に合った形を探っていくことをお勧めします。
この5点を頭に置いておくだけで、少し気持ちが軽くなるかもしれません
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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。