障がい種別 / 皮膚疾患(アトピー性皮膚炎)

「その手、大丈夫?」と聞かれる前に、そっと袖を伸ばす。アトピー性皮膚炎と仕事、人前で掻けない毎日との付き合い方

おのざる(mimemime)2026年8月読了目安:13〜15分
毛布にくるまりマグカップを持つまめざるのイラストと共に「掻いた手をそっと袖で隠す」というタイトルを示したアイキャッチ画像。左上には「皮膚疾患/アトピー性皮膚炎」のオレンジ色のカテゴリータグが添えられている

目次

  1. 「その手、大丈夫?」会議中に掻いてしまう気まずさ
  2. 汗・乾燥・ストレスが重なって悪化する肌、見た目への視線という二重の負担
  3. 症状の全部を伝える必要はない、職場に「場面」で伝える工夫
  4. 使える制度と、一人で抱えないための相談先
アトピー性皮膚炎は子どもの病気だと思われがちですが、大人になっても症状が続いたり、大人になってから発症したりする方が少なくありません。会議中に無意識で腕を掻いてしまう、汗ばむ季節に長袖の制服で肌が悪化する。そんな毎日の中で「大袈裟に思われたくない」と黙ってしまう方へ。この記事では、アトピー性皮膚炎と仕事の両立で感じやすい摩擦と、伝え方、使える制度を当事者の声をもとに整理しました(2026年8月時点の情報です)。

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会議室で、二の腕の袖をそっと伸ばして手首を隠す人物のイラスト。向かいに座る同僚が心配そうな、しかし詮索するわけではない表情でその様子を見ている
掻いてしまった手を、とっさに袖の中へ

「その手、大丈夫?」会議中に掻いてしまう気まずさ

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が生まれつき弱く、乾燥や汗、アレルゲンなどの刺激に反応して炎症とかゆみを繰り返す慢性の皮膚疾患です。子どもの病気というイメージが強いですが、大人になっても続く方や、大人になってから症状が出る「成人型」の方もいるとされています。まめざる

就労支援の現場で関わってきた中で、アトピー性皮膚炎のある方から繰り返し聞いてきた場面があります。「会議中に無意識で腕を掻いてしまい、隣の人に『それ、大丈夫?』と聞かれるたびに、とっさに愛想笑いでごまかしてしまう」というものです。かゆみは我慢すればするほど強く感じられるとも言われ、集中したい場面ほど症状が気になってしまうという声も少なくありません。

本人にとっては、かゆみそのもののつらさに加えて、「掻いているところを見られた」「症状のある肌を見られた」という気まずさが重なります。うつるものではないと分かっていても、いちいち説明するのも大袈裟な気がして、結局は黙って袖を伸ばしたり、話題を変えたりしてやり過ごす方が多いようです。

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症状の重さや悪化のきっかけには個人差があります。この記事で挙げる内容がそのまま当てはまるとは限らないため、体調に不安がある場合は自己判断せず皮膚科医に相談することをお勧めします。

「正直言うと、症状と付き合ってもう10年くらいになります。アパレルの販売をしていて、夏場は半袖の制服なんですが、接客中に二の腕がかゆくなって、我慢できずにレジの陰でこっそり掻いちゃうことがあって。ある日お客様に『大丈夫ですか、痒いんですか』って心配されて、逆にすごく気まずくなったんです。うつるものじゃないですって説明するのも変な空気になりそうで、その場は愛想笑いでごまかしました。上司に長袖にしてもらえないか相談したときは『接客業だから明るい印象が大事』って一瞬渋られて。結局、診断書を見せてやっと長袖に変えてもらえました。最初からそう言えばよかったなって、今なら思います。」

30代・女性(アトピー性皮膚炎・アパレル販売職)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
接客業なんですが、半袖の制服で二の腕の症状が悪化しやすくて。長袖にしてほしいと言ったら「接客業だから」って渋られたことがあって、それ以来言い出せなくなってしまいました。
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まめざる
見た目の印象を気にされる職場では、そう言われてしまうことがあるかもしれません。ただ、症状を隠して我慢し続けると、かえって悪化しやすくなるとも言われています。
相談者のアイコン
相談者
診断書があれば、もう少し伝わりやすくなるものでしょうか。
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まめざる
それも一つの方法です。「肌のバリア機能が弱く、摩擦や乾燥で悪化しやすい」など、業務にどう影響するかを具体的に伝えると配慮してもらいやすくなる、という声もよく聞きます。次の章で、伝え方の工夫を一緒に見ていきましょう。

汗・乾燥・ストレスが重なって悪化する肌、見た目への視線という二重の負担

アトピー性皮膚炎は、汗・乾燥・摩擦・ストレスといった複数の要因が重なるほど、炎症とかゆみが強く出やすいとされています。一つひとつの要因は小さくても、いくつも重なった日ほど症状が強く出やすいというのは、就労支援の現場でもよく聞かれる話です。オフィスの乾燥した空調、満員電車での汗ばみ、締め切り前のストレス。どれも仕事にはつきものですが、アトピー性皮膚炎のある方にとっては、それぞれが症状を悪化させるきっかけになり得ます。

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汗をかくこと自体が悪いわけではなく、汗を肌に残したままにしてしまうことが刺激になりやすいとされています。こまめに拭き取ったり、通気性のよい服装を選んだりすることが、悪化を防ぐ工夫の一つとされています。
要因が重なるほど、かゆみは強くなりやすい 要因が重なった日 要因なし・安定 乾燥など1つ 乾燥+汗 複数が重複 ※症状の出方や悪化のきっかけには個人差があります
乾燥・汗・摩擦・ストレス、重なる要因が多いほど針は右へ傾く

また、見た目に症状が出やすいことも、この病気ならではの負担につながります。厚生労働省の研究では、アトピー性皮膚炎のある方のうち、仕事の量や内容が制限されることが「時々ある」「よくある」「いつもある」と答えた人が3割を超えているとされています。「うつるんじゃないか」という誤解や、「大袈裟に見せているのでは」という視線を感じ、実際のかゆみや痛みに加えて、周囲にどう見られているかという気疲れを重ねて抱えている方も少なくないようです。

「就活のとき、面接官の視線が首元の湿疹にずっと向いてる気がして、それだけで頭が真っ白になったことがあります。入社してからも、エアコンの効いた会議室に長時間いると乾燥でかゆみがぶり返して、気づいたら手首のあたりを無意識にガリガリ掻いてて。隣の先輩に『それ、大丈夫?』って聞かれた瞬間、恥ずかしくてとっさに『あ、虫刺されで』って嘘をついちゃいました。3ヶ月くらい黙ってたんですけど、体調を崩して初めて上司に事情を話したら、意外とあっさり『保湿剤を塗る時間、休憩中に取っていいよ』って言ってもらえて。もっと早く言えばよかったなって、今は思ってます。」

20代・男性(アトピー性皮膚炎・IT企業事務職)

症状の全部を伝える必要はない、職場に「場面」で伝える工夫

アトピー性皮膚炎の仕組みや治療の経過をすべて説明しようとすると、かえって伝わりにくくなることがあります。業務に関わる具体的な場面だけに絞って伝える方法が、双方にとって負担が少ないとされています。

具体的な場面に絞って伝えるという考え方

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症状を隠したまま我慢し続けるより、具体的な場面だけ先に伝えておくほうが、周りも対応しやすくなるという声をよく聞きます。「大袈裟かな」と迷う気持ちより、まず一つだけ伝えてみることから始めてみませんか。まめざる

病名や治療の詳細まで伝える義務はありません。信頼できる上司や人事担当者に、業務に関わる範囲でまず共有し、そこからチーム内に必要な情報だけ広げてもらう、という進め方をとっている方もいるようです。就職活動の段階から症状の傾向を伝えておくことで、入社後の調整がしやすくなったという声も聞かれます。

使える制度と、一人で抱えないための相談先

身体障害者手帳という選択肢について

アトピー性皮膚炎そのものは、身体障害者手帳の対象になるとは限らないとされています。身体障害者手帳は視覚・聴覚平衡・音声言語そしゃく・肢体不自由・内部障害といった区分で交付されるものであり、皮膚疾患そのものは基本的に対象に含まれていません。ただし、症状に伴う合併症がある場合や、他の障害を合併している場合は、その障害について手帳の対象となるケースもあります。自分の状態がどの制度に当てはまるかは、主治医や自治体の障害福祉窓口に確認するのが確実です(2026年8月時点の情報です)。

手帳がなくても相談できることがある

手帳の有無にかかわらず、職場に配慮を相談すること自体は可能です。障害者差別解消法における合理的配慮の考え方は、必ずしも手帳の保有を前提としていません。「長袖を着たい」「保湿の時間がほしい」といった具体的な相談を、まずは人事担当者や産業医に持ちかけてみる方法があります。医療費の負担が大きい場合は、高額療養費制度など一般的な医療費の助成制度が使えることもあるため、加入している健康保険組合に確認してみるとよいでしょう。

相談できる窓口

症状の重さや悪化のきっかけ、必要な配慮の内容には個人差があります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の判断は主治医・支援者・自治体の窓口とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年8月時点の情報です)。
掻いてしまうことも、隠したくなることも、我慢が足りないからではありません。要因が重なれば誰でも悪化しやすくなる、それだけのことです。

よくある質問

Q. アトピー性皮膚炎があっても接客業で働けますか?
症状の程度や職場の理解によって働き方は変わってくるとされていますが、実際に接客業で働き続けている方も少なくありません。制服の素材や長袖の可否など、業務に関わる範囲で職場に相談してみる方法があります。
Q. 汗をかく季節に症状が悪化するのはなぜですか?
アトピー性皮膚炎のある方は汗を出す機能が低下している場合があり、汗が肌に残りやすくなることで刺激やかゆみにつながりやすいとされています。こまめに汗を拭き取り保湿を心がけることが、悪化を防ぐ工夫の一つとされています。
Q. 半袖の制服や作業着がある職場では、どう対応すればいいですか?
制服の変更や長袖の着用が可能か、まずは人事担当者や上司に相談してみる方法があります。すべての事情を説明する必要はなく、「肌が乾燥や摩擦で悪化しやすいので長袖を着たい」など、業務に関わる範囲で伝えている方もいるようです。
Q. アトピー性皮膚炎は身体障害者手帳の対象になりますか?
アトピー性皮膚炎そのものは、身体障害者手帳の対象になるとは限らないとされています。ただし、症状に伴う合併症がある場合や、他の障害を合併している場合は、その障害について手帳の対象となるケースもあります。詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口にご確認ください(2026年8月時点の情報です)。
Q. 面接で症状のことを伝えたほうがいいのでしょうか?
必ず伝えなければならないものではないとされています。ただし、業務に影響しそうな場面(接客での見た目や、長時間の立ち仕事での汗など)がある場合は、入社後の調整をしやすくするために早めに共有しておく方法をとっている方もいるようです。
この記事のポイント 1 2 3 4 気合の問題じゃない 要因が重なると悪化 場面を絞って伝える 頼れる窓口がある
一つずつ、できることから登っていく

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。