身体障害 / 下肢障害(杖歩行)と就労

「杖のことを伝えたら、その場で不採用に」下肢障害と仕事、車椅子でも杖でもない「その間」との付き合い方

おのざる(mimemime)2026年9月読了目安:12〜14分
毛布にくるまりマグカップを持つまめざるのイラストと共に「杖のことを伝えたらその場で不採用に」というタイトルと「車椅子でも杖でもない、その間の話」というサブテキストを示したアイキャッチ画像。左上には「身体障害/下肢障害」のオレンジ色のカテゴリータグが添えられている

目次

  1. 「杖のことを伝えたら、その場で不採用に」下肢障害と仕事の摩擦
  2. 車椅子でもない、健常者でもない。「杖歩行」という中途半端な扱われ方
  3. 職場にどう伝える、必要な配慮を言葉にするために
  4. 使える制度と、一人で抱えないための相談先
下肢障害があり杖を使って働いている方は大勢います。それでも「車椅子じゃないから、そこまで大変じゃないですよね」と決めつけられたり、逆に杖のことを伝えただけで選考から外れてしまったりすることがあります。車椅子でもなく、健常者でもない。その「間」に立たされるつらさは、なかなか言葉にしづらいものです。この記事では、下肢障害があり杖を使って働く方が感じやすい摩擦と、必要な配慮の伝え方、使える制度を当事者の声をもとに整理しました(2026年9月時点の情報です)。

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LITALICOワンダー プログラミング教室 発達障害
静かなオフィスの廊下でエレベーターの前に一人で立ち、自分の杖を見下ろしている人物のイラスト。エレベーターの扉は閉まっており、少しためらうような表情を浮かべている
助けを求めるべきか、自分で何とかするべきか。エレベーターの前で、いつも一瞬迷う

「杖のことを伝えたら、その場で不採用に」下肢障害と仕事の摩擦

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
下肢障害とは、股関節・膝・足首などの機能に障害があり、歩行や立位に困難がある状態のことです。杖や装具を使うことで歩行できる方も含まれ、必要な配慮の程度は一人ひとり大きく異なります。まめざる

就労支援の現場で関わってきた中で、杖を使って働く方から繰り返し聞いてきた言葉があります。「面接で杖のことを話したとたん、空気が変わった気がした」というものです。下肢障害があり杖を使っている方は、車椅子を使っている方とはまた違う扱われ方をされることがあるようです。車椅子であれば「配慮が必要な人」だとすぐに伝わる一方で、杖の場合は「それくらいなら大丈夫でしょう」と見た目だけで判断され、必要な配慮を伝える機会そのものを失ってしまうことがあります。

本人にとっては、杖をついて歩くだけでも人より時間がかかり、長時間の立位や重い荷物を持つことには実際の負担があります。それでも「車椅子じゃないから」という理由だけで、配慮の対象から静かに外されてしまう。そうした経験を重ねるうちに、「杖のことは、もう話さない方がいいのかもしれない」と考えるようになる方も少なくないようです。

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下肢障害の程度や、必要な配慮の内容には個人差があります。この記事で挙げる内容がそのまま当てはまるとは限らないため、体調や業務内容に不安がある場合は自己判断せず主治医や支援機関に相談することをお勧めします。

「面接で杖のことを話したら、その場の空気が変わったのが分かりました。『車椅子じゃないので、そこまで大変じゃないですよね』って言われて、はいそうですねって答えちゃったんですけど、あれ絶対よくなかったなって後で思いました。結局その会社は落ちて、次の面接でも似たような空気になって、もう3社連続です。車椅子の人の方が『配慮が必要な人』だってはっきり分かってもらえるみたいで、正直ちょっと羨ましいって思うことすらあります。自分でもそんなこと思うのやだなと思うんですけど。」

30代・男性(下肢障害・杖歩行、転職活動中)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
杖のことを話したら、その場で「今回は見送らせてください」って言われて、何も聞かれないまま面接が終わりました。
まめざるのアイコン
まめざる
それはつらかったですね。杖という言葉だけで判断されてしまうと、実際にどんな配慮が必要かを伝える機会すらもらえないことがあります。
相談者のアイコン
相談者
車椅子だったら、もっとちゃんと話を聞いてもらえたのかなって思っちゃいます。
まめざるのアイコン
まめざる
そう感じるのも無理はないと思います。ただ、杖歩行でも障害者雇用制度の対象になりますし、必要な配慮も車椅子とは違う形で伝えられます。次は「長時間の立位は難しいですが、デスクワークは問題ありません」のように、具体的な場面から話してみるのはどうでしょう。

車椅子でもない、健常者でもない。「杖歩行」という中途半端な扱われ方

下肢障害があり杖を使っている方が感じやすいのは、車椅子ほど分かりやすく配慮されるわけでもなく、かといって健常者と同じようにも扱ってもらえないという、宙ぶらりんな立ち位置です。同じ下肢の障害でも、移動手段の違いだけで職場や採用の場での伝わり方に差が出てしまうことがあります。

同じ下肢障害でも、伝わり方に差がある 車椅子 配慮が必要だと、すぐ伝わる 「大丈夫でしょ」と見過ごされやすい
見た目の違いだけで、必要な配慮の伝わり方が変わってしまうことがある

身体障害者手帳の制度上は、車椅子でも杖でも下肢の機能障害として同じく等級が判定される場合があります。それにもかかわらず、日常のやり取りの中では「車椅子=配慮が必要」「杖=そこまでではない」という無意識の線引きが生まれやすいようです。この線引きのしわ寄せを受けるのは、多くの場合、杖を使っている本人です。

「入社して半年経ちますけど、いまだに荷物運びを頼まれます。『杖だけなら大丈夫でしょ』って言われて、断れなくて持ったら、次の日足首がパンパンに腫れて、結局2日休みました。上司に言えばよかったんですけど、面接のときに『杖くらいなら特に配慮いらないですよね』って自分で言っちゃったのを覚えてて、今さら違いますとは言い出しにくくて。避難訓練のときも、みんな階段を駆け下りる中、一人だけ最後尾でゆっくり降りるのが、地味にしんどいです。」

40代・女性(下肢障害・杖歩行、IT企業事務職)

職場にどう伝える、必要な配慮を言葉にするために

杖を使っていることを伝えるとき、「車椅子ではないので大丈夫です」と、つい自分から配慮を手放してしまう場面があります。面接や入社直後の緊張した状況では、なおさらそう答えやすくなるようです。しかしその一言が、後から配慮を求めにくくする原因になってしまうこともあります。

具体的な場面に絞って伝えるという考え方

下肢障害の状態や歩行の仕組みをすべて説明しようとすると、かえって伝わりにくくなることがあります。業務に関わる具体的な場面だけに絞って伝える方法が、双方にとって負担が少ないとされています。

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
「車椅子じゃないから大丈夫です」と答えたくなる場面でも、実際に困っていることがあるなら、それを具体的な場面に置き換えて伝え直すことができます。一度手放した配慮でも、後から改めて伝え直して構わないんですよ。まめざる

病名や障害の詳細まで伝える義務はありません。信頼できる上司や人事担当者に、業務に関わる範囲でまず共有し、そこからチーム内に必要な情報だけ広げてもらう、という進め方をとっている方もいるようです。面接の段階から「杖を使っていますが、デスクワーク中心であれば問題ありません」のように、できることとできないことをセットで伝えておくと、入社後の調整がしやすくなったという声も聞かれます。

使える制度と、一人で抱えないための相談先

身体障害者手帳という選択肢

下肢障害は、身体障害者手帳の肢体不自由の区分に含まれる場合があります。等級は下肢の機能低下の程度や日常生活への影響によって異なり、車椅子か杖かという移動手段の違いだけで等級が決まるわけではないとされています。詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口に確認するのが確実です(2026年9月時点の情報です)。手帳を取得すると、障害者雇用枠での就職や、企業側の合理的配慮を前提にした働き方を選びやすくなる場合があります。

障害者雇用枠は、杖を使っている方も対象

身体障害者手帳を取得していれば、車椅子でも杖でも同じく障害者雇用制度の対象になるとされています。「杖くらいで障害者枠を使っていいのだろうか」とためらう方もいるようですが、制度上は移動手段の違いによって対象から外れることはありません(2026年9月時点の情報です)。就労移行支援事業所や障害者専門の転職エージェントでは、下肢障害に理解のある求人を紹介してもらえる場合もあります。

相談できる窓口

下肢障害の程度や、必要な配慮の内容には個人差があります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の判断は主治医・支援者・自治体の窓口とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年9月時点の情報です)。
「車椅子じゃないから大丈夫」は、周りが決めることではなく、本人が伝えることです。杖だからこそ見過ごされやすい配慮を、具体的な場面に置き換えて伝え直すことは、決して大袈裟なことではありません。

よくある質問

Q. 杖を使って働くことは可能ですか?
杖を使いながら働いている方は多くいるとされています。事務職やIT関連職などデスクワーク中心の仕事であれば、移動や立ち仕事の負担を減らしやすいとされていますが、業種や職場環境によって必要な配慮は異なるため、就職・転職の際は事前に業務内容を確認しておくと安心です。
Q. 車椅子ではなく杖を使っている場合でも、障害者雇用枠で働けますか?
身体障害者手帳を取得していれば、車椅子でも杖でも同じく障害者雇用制度の対象になるとされています。手帳の等級は移動機能の障害の程度によって判定される仕組みのため、杖を使っているからといって対象外になるわけではありません(2026年9月時点の情報です)。詳しくは自治体の障害福祉窓口にご確認ください。
Q. 面接で「杖だけなら配慮は不要ですよね」と聞かれたら、どう答えればいいですか?
その場で「大丈夫です」と答えてしまうと、後から配慮を求めにくくなることがあるとされています。「基本的なデスクワークは問題ありませんが、長時間の立ち仕事や荷物運びは難しい場合があります」など、具体的な業務内容に絞って伝える方法が助けになる場合があります。
Q. 下肢障害があると身体障害者手帳は取得できますか?
下肢障害は身体障害者手帳の区分に含まれる場合があります。等級は下肢の機能低下の程度や日常生活への影響によって異なるため、詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口にご確認ください(2026年9月時点の情報です)。
Q. 杖を使っていることを、職場にどう伝えればいいですか?
症状の詳細をすべて説明する必要はないとされています。「長時間の立位や荷物運びは避けたい」「エレベーターを使わせてほしい」など、業務に関わる具体的な場面に絞って伝える方法が、双方にとって負担が少ないとされています。
ここまでの道のり 1 杖でも雇用対象と知る 2 場面を絞って伝える 3 自分に合う配慮を探す 4 相談先を持つ 車椅子でも杖でもない、自分のペースで進んでいくための道のり
「大丈夫でしょ」に流されず、自分のペースで一歩ずつ

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おのざる
おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。