レジに並んで、前のかごの中身をぼんやり見ていたら、視界の端に見覚えのある後ろ姿が映った。会社の人だ、と思った瞬間、手の中のかごがやけに重く感じた。会計まであと二人。列を抜けるには遅すぎるのに、体は勝手に一歩下がっていた。結局、その人は別人だったのかもしれない。確かめる前に、かごをレジ横の台に置いて、そのまま店を出た。
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カゴの中身より先に、逃げ道を探していた
「会社の人に見えた」その一瞬で、体が先に動いていた
休職中に「見られたら気まずい」という反応が出るのは、珍しいことではないとされています。大げさに感じても、体が勝手に動いてしまうのは自然な反応のようです。まめざる
その人が本当に会社の人だったのかは、正直分からない。似ていただけかもしれない。それでも一度そう思ってしまうと、頭より先に足が動く。サボっていると思われるかもしれないという感覚が、確認する余裕を奪っていく。休職中は、こういう瞬間が生活のあちこちに潜んでいる。
近所のスーパーやコンビニは、会社の人と生活圏が重なりやすい場所でもある。だからこそ、行きたい店なのに足が向かない、行くとしても人の少ない時間を選んでしまう、というようなことが起きやすい。
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ここで紹介している内容は、複数の方の体験をもとに再構成しています。外出への不安の感じ方や強さには個人差があるため、この記事の内容がそのまま当てはまるとは限りません。
「正直、スーパーに行くだけでめちゃくちゃ気を遣ってました。マスクして、フードかぶって、会社と反対方向の店まで自転車で15分かけて行ったり。近所のスーパーの方が断然近いのに、誰かに会うかもと思うと足が向かなくて。半年くらいそんな感じで、今思うとちょっとやりすぎだったかもとは思うんですけど、当時は必死でした。」
20代・女性(適応障害・事務職)
「サボってると思われるかも」が、ずっと抜けない
休職は治療のための期間のはずなのに、頭のどこかでは「働いていないのに出かけている自分」を責める声が消えない。外に出て気分転換したい気持ちと、誰かに見られたくない気持ちが、いつも綱引きをしている状態だ。
見られることそのものより、どう思われるかへの不安が重くなりやすい
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「元気そうだね」と言われて動揺してしまうのは、体調の波を知っているのが自分だけだからだとも言われています。外出できた日があっても、その裏で翌日ぐったり疲れてしまうことは珍しくないようです。
「休職して3ヶ月目くらいの時、近所のコンビニでばったり同期に会って『元気そうじゃん』って言われたのがきつかったです。その日はたまたま調子が良かっただけで、前日は起き上がれなかったのに。その場は愛想笑いして終わらせましたけど、帰り道でどっと疲れが出て、しばらく外出自体が怖くなりました。」
30代・男性(うつ病・営業職)
相談の一コマ
相談者
スーパーに行くだけなのに、会社の人に会うかもって思うと、それだけで動悸がしてくるんです。
まめざる
その感覚、休職中はよくあると言われています。見られること自体より「サボってると思われるかも」という不安の方が大きいのかもしれません。
相談者
まさにそれです。元気そうに見えたらどうしようって。実際、その日は動けても次の日ぐったりだったりするので。
まめざる
元気そうに見える日と、実際の体調が一致しないのはよくあることだと言われています。無理に外出を避けなくても、時間帯やルートを変えるだけで気持ちが楽になる場合もありますよ。
出かけること自体はやめず、時間とルートを変えてみる
外出そのものをやめてしまうと、生活のリズムが崩れやすくなるとも言われている。だからといって不安を我慢して同じルートを通り続ける必要もない。少し工夫するだけで、気持ちの負担が変わることがある。
- 開店直後や平日午前など、人が少ない時間帯を選ぶ
- いつもと違う店舗や、レジはセルフレジを使ってみる
- 遠回りでも、会社の人と行き会いにくい道を選ぶ
- どうしても外に出たくない日は、ネットスーパーや宅配に頼ってみる
大事なのは、これを「逃げ」だと捉えないことだと思う。今の自分が無理なく外に出られる方法を選んでいるだけで、いずれ状況が変われば、また元のルートに戻ればいい。
一人で抱えず、話せる場所を持っておく
相談できる窓口
- 主治医(外出の可否や体調に合わせたペースの相談)
- 社内に選任されている産業医
- 就労移行支援事業所やリワーク施設(生活リズムを含めた相談)
- 家族や信頼できる友人など、業務外で安心して話せる相手
外出や罪悪感への感じ方には個人差があります。つらさが強く続く場合は、自己判断せず主治医や支援機関にご相談ください(2026年9月時点の情報です)。
人目が気になって足が止まるのは、甘えでも大げさでもありません。ルートや時間を変えるだけでも、少しずつ外に出やすくなることがあります。
よくある質問
Q. 休職中に外出してもいいんでしょうか。会社の人に会うのが怖くて迷っています。
休職の目的は治療や回復であり、外出そのものが禁止されているわけではないとされています。むしろ体調に合わせた外出は回復の助けになる場合もあるようです。ただし就業規則や主治医の指示によって配慮すべき点が異なるため、不安が強い場合は主治医や産業医に相談しながら進めることをお勧めします(2026年9月時点の情報です)。
Q. スーパーやコンビニで会社の人を見かけたら、どうすればいいですか。
無理に挨拶をしたり説明したりする必要はないとされています。会釈だけで済ませる、視線を合わせずに別の通路に移動するなど、その場で無理のない対応で十分だという声が多いようです。動揺した気持ちを引きずりすぎないことも大切です。
Q. 元気そうに見られるのが怖くて、外に出るのをためらってしまいます。
「元気そう」という言葉と、実際の体調の波は必ずしも一致しないとされています。外出できた日があっても、翌日ぐったり疲れてしまうことは珍しくないようです。見た目の印象を過度に気にしすぎず、自分の体調に合わせたペースを優先することが大切だと考えられています。
Q. 誰にも会いたくない時期は、どう過ごせばいいですか。
ネットスーパーや食材宅配、コンビニの宅配サービスなどを一時的に頼るのも一つの方法とされています。「外に出られない自分はだめだ」と責めるのではなく、体調が落ち着くまでの期間限定の工夫として捉える考え方もあります。
Q. 罪悪感がずっと消えないのですが、これは普通のことでしょうか。
休職中に罪悪感を抱くこと自体は珍しくないとされています。ただしその感情が長く強く続き、日常生活に支障が出ている場合は、一人で抱え込まず主治医や支援機関に相談することをお勧めします。
遠回りでも、自分のペースで出かけられる道を選んでいい
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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。