障がい種別 / 発達障害(ADHD)

「また今日もギリギリだね」と言われるたびに苦しくなる。ADHDの先延ばし癖と仕事、信頼を失う不安との付き合い方

おのざる(mimemime)2026年7月読了目安:12〜14分
ADHDの先延ばしと仕事をテーマにしたアイキャッチ画像。ADHDという文字と「また今日もギリギリだね」ADHDの先延ばしと仕事、信頼を失う不安との付き合い方という見出し、時計のアイコンをあしらったオレンジと緑のグラデーション背景

目次

  1. 「まだ大丈夫」と思っているうちに、締め切りが目の前に来ている
  2. なぜ先延ばしが起きるのか、気合いや性格の問題ではない理由
  3. 職場にどう伝える、「信用を失うかもしれない」不安との付き合い方
  4. 使える工夫と、一人で抱えないための相談先
ADHDのある人にとって、先延ばしは「そのうちやろう」という軽い気持ちの問題ではなく、締め切りが目の前に迫るまで体が動かないという、もっと根深い困りごとであることがあります。頭では分かっているのに動けない自分を責め、周囲からは「また今日もギリギリだね」と冗談めかして言われるたびに、信頼を失っていくような不安を感じている方も少なくないようです。この記事では、ADHDの先延ばしがなぜ起きやすいのか、職場への伝え方、使える工夫を当事者の声をもとに整理しました(2026年7月時点の情報です)。

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夜のオフィスで、締め切り直前のパソコンと書類を前に頭を抱えて座り込んでいる人物のイラスト。壁の時計が締め切り間近の時間を示している
締め切りの2文字が視界に入った瞬間、ようやくスイッチが入る

「まだ大丈夫」と思っているうちに、締め切りが目の前に来ている

ADHDのある方は、締め切りまでの時間の流れを実感として捉えにくいという特性があるとされています。「まだ3日ある」という頭での理解と、体が「今すぐやらなきゃ」と感じるタイミングがずれてしまうんです。ミミ

就労支援の現場で関わってきた中で、先延ばしに悩むADHDのある方から繰り返し聞いてきた言葉があります。「やらなきゃいけないのは分かってるんです。分かってるのに、体が動かないんです」というものです。頭の中では締め切りのことをずっと気にしているのに、実際に手を動かし始めるのは決まって前日の夜か、当日の朝になってから。そのたびに「また今日もギリギリだ」と自分を責めながら、周りにもそう思われているんじゃないかという不安を抱えている方が多いようです。

厄介なのは、締め切りに間に合わせること自体はできてしまう場合があることです。徹夜同然で仕上げて、なんとか提出には漕ぎ着ける。だから傍目には「結局いつも通り終わらせている人」に見えて、本人の中にある「毎回綱渡りをしている恐怖」は伝わりにくいという声もあります。

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先延ばしの背景や程度には個人差があります。この記事で挙げる内容がそのまま当てはまるとは限らないため、日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合は自己判断せず、医師や専門家に相談することをお勧めします。

「正直言うと、締め切りの1週間前に上司から『早めにやっておいてね』って言われた瞬間は『はい、やります』って本気で思ってるんです。でも次の日になると、なぜか他の細かい作業から手をつけちゃって、気づいたら3日過ぎてる。半年前にも同じことをやって始末書みたいな始末書じゃないですけど始末書っぽいものを書かされたのに、また同じパターンにはまってる自分に、正直うんざりしてます。」

20代・女性(ADHD・IT企業事務職)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
締め切りのことはずっと頭にあるのに、なぜか前日にならないと手が動かないんです。怠けてるだけなんでしょうか。
ミミのアイコン
ミミ
怠けているというより、時間の切迫感を感じるタイミングが人より遅く来やすい特性が関わっている場合があるんです。頭で分かっていることと、体が動くことは別の話なんですよ。
相談者のアイコン
相談者
別の話、というのは初めて聞きました。ずっと意志が弱いだけだと思っていたので。
ミミのアイコン
ミミ
意志の強さの問題ではないとされています。次の章で、なぜこの特性が起きやすいのかと、実際に使える工夫を一緒に見ていきましょう。

なぜ先延ばしが起きるのか、気合いや性格の問題ではない理由

ADHDの先延ばしには、脳の実行機能と呼ばれる働きの特性が関わっているとされています。実行機能とは、計画を立てたり、優先順位をつけたり、作業を始めるきっかけを自分で作ったりする働きのことです。この働きが定型発達の人とは異なる形で作用するため、「頭では分かっているのに、最初の一歩が出ない」という状態が起きやすいと考えられています。

加えて、ADHDのある人は時間の感じ方そのものが独特だという指摘もあります。「締め切りまであと3日」という情報を頭では理解していても、体感として迫ってくる感覚が薄く、実際に強い緊迫感を覚えるのは締め切りが目前に迫ってからだけ、ということが起きやすいのです。

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先延ばしの背景には実行機能や時間認知の特性のほか、報酬系の働き方の違いも関わっているとされています。「今すぐやる」ことへのモチベーションが起きにくく、締め切り直前の緊張感がないと動き出せない、という状態になりやすい場合があります。
締め切りまでの「動き出したい気持ち」の波形 1週間前 5日前 2日前 締め切り当日 ※体感の一例です。感じ方には個人差があります
頭では気にしていても、体が動く緊迫感は締め切り直前にしか来ないことがある

この特性を知らないと、周囲からは「余裕があるのにサボっている」ように見えてしまい、本人も「自分の意志が弱いせいだ」と責め続けてしまう悪循環に陥りやすくなります。先延ばしは性格の欠陥ではなく、特性による部分が大きいと捉え直すことが、まず最初の一歩になるようです。

「営業なので、月末の売上報告書とか経費精算とか、細かい書類仕事がめちゃくちゃ苦手で。3ヶ月連続で提出が遅れて、上司から『次やったら本当にまずいから』って言われたことがあります。あのときは本当に焦って、経理の人にも頭を下げにいきました。悪気があるわけじゃないのに、信用を失っていく感覚があって、あれは今でも思い出すと胃が痛くなります。」

40代・男性(ADHD・営業職)

職場にどう伝える、「信用を失うかもしれない」不安との付き合い方

先延ばしを繰り返すと、能力や熱意とは関係のないところで「約束を守らない人」という印象がついてしまうことがあります。本人としては「次こそは」と毎回本気で思っているのに、結果が伴わないことで信用を積み重ねにくくなる。この信頼を失う不安は、ADHDのある方が仕事を続ける中で大きなストレスになりやすい部分のひとつです。

「まとめて伝える」より「早めに小さく共有する」

先延ばしの特性そのものをすぐになくすのは簡単ではないとされていますが、伝え方や仕組みを工夫することで、信用を守りやすくなる場合があります。特性の詳細を説明するより、業務上どう対応してほしいかを具体的に伝える方法が助けになるようです。

「間に合わなそうだと分かった時点ですぐ相談してくれる人」と「ギリギリまで抱え込んで結局遅れる人」では、同じ遅れでも周囲の受け止め方は変わることが多いです。早めの一声が、信用を守る一番の近道かもしれません。ミミ

特性そのものを職場にすべて理解してもらう必要はありません。信頼できる上司やチームメンバーに、業務上の対応の仕方だけをまず共有し、少しずつ「早めに相談してくれる人」という印象を積み重ねていく、という進め方をとっている方もいるようです。

使える工夫と、一人で抱えないための相談先

タスクを小さく分けるという考え方

大きな締め切りをそのまま抱えると、着手のハードルが高くなりがちです。「この作業なら5分でできる」と感じられるところまで細かく分解し、一番簡単な部分だけを最初の目標にすると、動き出しやすくなる場合があります。タイマーで5分だけ区切り、続けるかどうかはそのあとで決める、という工夫を取り入れている方もいます。

精神障害者保健福祉手帳という選択肢

ADHDの診断があり、日常生活や就労に支障が出ている場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象になることがあります。等級は特性の程度や生活への影響によって異なるため、詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口に確認するのが確実です(2026年7月時点の情報です)。手帳を取得すると、障害者雇用枠での就労や、タスク管理面での合理的配慮を職場に相談しやすくなる場合があります。

相談できる窓口

先延ばしの背景や必要な工夫には個人差があります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の判断は主治医・支援者・自治体の窓口とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年7月時点の情報です)。
先延ばしは意志の弱さではなく、特性によって起きやすくなっている部分があります。自分を責め続けるより、早めに小さく共有する仕組みを作ることが、信用を守る近道になるかもしれません。

よくある質問

Q. ADHDの先延ばしは意志の力で治せますか?
意志の力だけで解決するのは難しい場合があるとされています。ADHDの先延ばしは実行機能や時間の感じ方の特性が関わっていることが多く、気合いよりも仕組みや環境の工夫のほうが効果的なケースがあるようです。
Q. 「ギリギリじゃないと動けない」のはサボりですか?
単なる怠けとは言い切れないとされています。ADHDの特性として、締め切りが差し迫るまで脳が「今やる」という感覚を強く持ちにくいことがあり、これは意欲の問題というより特性による部分が大きいと考えられています。
Q. 職場にどう伝えれば理解してもらえますか?
特性の詳細をすべて説明する必要はないとされています。「早めに小さな締め切りを設定してもらえると助かる」「進捗を途中で確認してもらえると動きやすい」など、具体的な工夫を伝える方法が助けになる場合があります。
Q. 障害者手帳や合理的配慮は使えますか?
ADHDの診断があり、日常生活や就労に支障がある場合は精神障害者保健福祉手帳の対象になることがあります。取得すると、障害者雇用枠での就労や、タスク管理面での合理的配慮を職場に相談しやすくなる場合があります。詳しくは主治医や自治体の窓口にご確認ください。
Q. 先延ばしについて相談できる場所はありますか?
主治医や心療内科に加えて、就労移行支援事業所ではタスクの分解の仕方やスケジュール管理の工夫を一緒に考えてもらえる場合があります。一人で抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。
先延ばしと付き合う:この記事のポイント 1 先延ばしは意志の弱さだけが原因ではない 実行機能や時間の感じ方の特性が関わっていることがある 2 緊迫感は締め切り直前にしか来にくい 頭での理解と体が動くタイミングにずれが生まれやすい 3 早めに小さく共有すると信用を守りやすい 間に合わなそうな時点ですぐ相談する習慣が助けになる 4 タスクを小さく分けると動き出しやすい 5分だけ区切って着手するなどの工夫が助けになる場合がある 5 手帳や支援機関など、頼れる制度がある 一人で抱え込まず主治医・支援者と状況を共有する
この5点を頭に置いておくだけで、少し気持ちが軽くなるかもしれません

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。