精神障害 / 強迫性障害(強迫症)と就労

「送信ボタンが押せない」何度も見直しても消えない不安。強迫性障害(強迫症)と仕事、確認行為との付き合い方

おのざる(mimemime)2026年8月読了目安:11〜13分
毛布にくるまりマグカップを持つまめざるのイラストと共に「何度見直しても送信ボタンが押せない」という見出しを示したアイキャッチ画像。左上には「精神障害/強迫性障害」のオレンジ色のカテゴリータグが添えられている

目次

  1. 何度見直しても、送信ボタンが押せない
  2. なぜ確認をやめられないのか、不安と確認の悪循環
  3. 職場でできる工夫、確認行為と付き合いながら働くために
  4. 使える制度と、一人で抱えないための相談先
書き終えたメールを、もう5回も読み返している。宛先は合っているか、添付ファイルは入っているか、変な言い回しになっていないか。頭では「もう大丈夫」と分かっているのに、指がマウスの上で止まったまま動かない。強迫性障害(強迫症)の特性がある方の中には、こうした確認行為が仕事の時間を静かに削っていく感覚を、繰り返し経験している方がいるようです。この記事では、確認行為が仕事にどう影響しやすいか、職場での付き合い方、使える制度や相談先を当事者の声をもとに整理しました(2026年8月時点の情報です)。

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デスクでノートパソコンの前に座り、送信前のメール画面を不安げに見つめながら手を止めている人物のイラスト。机にはチェックマークの書かれた付箋、湯気の立つコーヒー、メモ帳、デスクライトが置かれている
読み返すたびに、まだ何か見落としている気がしてしまう

何度見直しても、送信ボタンが押せない

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
強迫性障害(強迫症)は、不安を打ち消すために特定の確認や行動を繰り返してしまいやすいとされる特性です。診断や治療については、必ず精神科医など専門家にご相談ください。まめざる

就労支援の現場で関わってきた中で、こんな声を聞いたことがあります。「メールを送る前に、宛先と添付ファイルと文面を、最低でも3回は見直さないと押せないんです」というものです。確認したい気持ちそのものは誰にでもあるものですが、それが「何度確認しても安心しきれない」というところまでいくと、業務の時間そのものを圧迫してしまうことがあるようです。

本人にとっては、頭では「もう十分確認した」と分かっていても、不安のほうが先に体を動かしてしまう感覚に近いのかもしれません。何度も同じ箇所を読み返してしまう、送信した後も内容が気になって仕方がないといった行動は、決して大げさな反応ではなく、その人なりに不安と付き合おうとしている結果でもあるようです。

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確認行為の強さや、不安の感じ方には個人差があります。この記事で挙げる内容がそのまま当てはまるとは限らないため、気になる症状がある場合は自己判断せず、精神科・心療内科など専門家にご相談ください。

「入社2年目なんですけど、メールの送信ボタンを押すのに毎回5分くらいかかるんです。宛先合ってるか、添付ファイル入ってるか、変な言い回しになってないか、3回くらい見直さないと押せなくて。この前なんて、送信して30秒後にまた文面が気になって、慌てて『先ほどのメールの訂正です』って追いメールしちゃって、逆に恥ずかしいことになりました。上司には『丁寧だね』って言われるんですけど、正直そんな余裕のある話じゃなくて、毎日メール10通で1時間近く溶けてる自覚はあります。3ヶ月前に心療内科に行ったら、確認行為が強く出るタイプかもしれないと言われて、なんか少し納得したというか、性格の問題じゃなかったんだ、と思いました。」

20代・女性(強迫性障害の傾向・事務職)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
昨日も、上司に送るメールを7回くらい読み返してから送ったんです。それでも送った瞬間にまた不安になって、結局今日も朝からその話ばかり考えちゃって。
まめざるのアイコン
まめざる
7回読み返しても不安が消えなかった、ということですね。確認するほど安心できると思いがちですが、実は確認を重ねるほど不安がかえって強くなることがあるとされています。
相談者のアイコン
相談者
え、そうなんですか。もっと確認したほうが安心できると思ってました。
まめざるのアイコン
まめざる
そう感じるのは自然なことです。ただ、確認を重ねるほど「これで本当に大丈夫か」という基準そのものが上がってしまい、際限がなくなることがあるようです。まずは確認する回数をあらかじめ決めておく、というやり方を試してみる方法もありますよ。無理のない範囲で、主治医とも相談しながら進めてみてください。

なぜ確認をやめられないのか、不安と確認の悪循環

強迫性障害の特性がある方の中には、「不安→確認→一時的な安心→再び不安」というサイクルを繰り返してしまうという経験をしている方がいるとされています。確認した直後は少し気持ちが落ち着いても、その安心は長く続かず、しばらくするとまた同じ不安が顔を出す。そしてまた確認する。この繰り返しの中で、不安の「基準」そのものが少しずつ底上げされてしまい、以前は1回で済んでいた確認が2回、3回と増えていくことがあるようです。

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こうした確認行為は、本人の意志の弱さや性格の問題ではなく、特性として理解されているものです。つらさの背景を知ることが、責めるのではなく付き合い方を考える出発点になる場合があります。
確認を重ねるほど、不安は下がりきらない ①きっかけ発生 送信前の不安が生まれる ②確認1回目・一時的に安心 少しだけ気持ちが落ち着く ③再び不安が戻る 安心が長く続かない ④確認2回目・3回目 確認の回数が増えていく ⑤それでも消えない不安 最初の水準まで下がらない 確認を重ねるほど、不安の「基準」自体が上がっていく
確認した直後の安心は、長くは続かないことが多い

ここで大切なのは、このサイクルに気づくこと自体が、対処の第一歩になるという点です。「また同じパターンに入っているな」と自分で気づけるようになるだけでも、確認を重ねる前に立ち止まりやすくなる場合があるとされています。次の章では、職場という場面に絞った具体的な工夫を見ていきます。

「経理なんで数字の確認は仕事のうちなんですけど、それとは別に、家を出るときの戸締まりの確認がひどくて。鍵閉めたっけ、コンロ消したっけって、玄関出てから3回くらい戻る日もあります。半年前、電車に乗ってから『ガス、本当に消したかな』って気になって、次の駅で降りて引き返したことがあって、結局大丈夫だったんですけど、その日は1時間近く遅刻しました。上司には体調不良って言って誤魔化しましたけど、正直しんどかったです。今はスマホで写真を撮って『確認した証拠』を残すようにしてから、多少マシになりました。それでもゼロにはならないですけどね。」

30代・男性(強迫性障害の傾向・経理職)

職場でできる工夫、確認行為と付き合いながら働くために

確認回数をあらかじめ決めておく

不安になったときほど、「もう1回だけ」と際限なく確認を重ねやすくなります。「送信前は2回まで」「書類チェックは1回、気になったら5分後にもう1回」など、あらかじめ回数を決めておくことで、確認そのものを止めるのではなく「区切りをつける」練習になる場合があるとされています。

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確認をゼロにしようとすると、かえって苦しくなってしまうことがあります。「まず1回で一旦手を止めてみる」くらいの距離感から始めてみることが、続けやすい工夫になる場合があります。まめざる

職場に伝えるなら、具体的な場面に絞って

症状の詳細をすべて説明する必要はありません。「特定の作業で確認に時間がかかりやすいこと」「ダブルチェックの仕組みがあると助かること」など、業務に関わる範囲に絞って伝える方法をとっている方もいるようです。すべてを一度に伝えようとせず、信頼できる一人に少しずつ共有していくところから始めても大丈夫です。2026年8月時点では、障害者差別解消法の改正により、企業が合理的配慮についてより丁寧に話し合うことが求められるようになっています。

確認行為への対処法や、職場への伝え方の正解は人によって異なります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の対処は主治医やカウンセラー、支援者とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年8月時点の情報です)。

使える制度と、一人で抱えないための相談先

精神障害者保健福祉手帳という選択肢

強迫性障害の診断がある場合、精神障害者保健福祉手帳の対象となることがあります。等級は症状の重さや日常生活・社会生活への影響によって異なるため、詳しくは主治医や自治体の障害福祉窓口に確認するのが確実です(2026年8月時点の情報です)。手帳を取得すると、障害者雇用枠での就職や、企業側の合理的配慮を前提にした働き方を選びやすくなる場合があります。

治療を続けながら働くという前提

認知行動療法や薬物療法などの治療を続けながら働いている方は多くいるとされています。通院の頻度や時間帯を勤務先にあらかじめ伝えておくことで、通院日を調整しやすくなる場合があるほか、産業医やEAP(従業員支援プログラム)を導入している職場であれば、そちらに相談できることもあります。

相談できる窓口

確認をやめられないことは、怠けでも大げさな反応でもありません。確認の回数を決める工夫を重ねながら、一人で抱え込まずに相談先を持っておくこと自体が、働き続けるための土台になります。

よくある質問

Q. 強迫性障害があると、仕事を続けるのは難しいのでしょうか?
確認行為に時間がかかることで負担を感じる場面がある一方、治療や職場での工夫を続けながら安定して働いている方も多くいるとされています。症状の程度や職場環境によって差があるため、一人で判断せず専門家に相談しながら進める方法もあります。
Q. 確認行為を今すぐやめる方法はありますか?
無理に確認をゼロにしようとすると、かえって不安が強まってしまうことがあるとされています。まずは確認の回数をあらかじめ決めておく、タイマーを使うなど、少しずつ工夫を試していく方法が現実的な場合があります。詳しい治療法については精神科・心療内科にご相談ください。
Q. 強迫性障害でも障害者雇用枠で働けますか?
精神障害者保健福祉手帳を取得している場合、障害者雇用枠での就職を選べることがあります。手帳の取得可否や等級は症状の状態によって異なるため、主治医や自治体の窓口に確認することをお勧めします(2026年8月時点の情報です)。
Q. 診断を受けていない場合でも、確認行為のつらさを相談していいのでしょうか?
診断の有無にかかわらず、仕事における確認行為のつらさについて相談することは可能だとされています。精神科・心療内科のほか、就労移行支援事業所でも話を聞いてもらえる場合があります。
Q. 職場にはどこまで伝えればいいのでしょうか?
症状の詳細をすべて説明する必要はなく、業務に関わる範囲に絞って伝えている方が多いようです。「特定の作業で時間がかかりやすいこと」など、具体的な場面に絞って、信頼できる一人に少しずつ共有していく方法もあります。
今の確認、どのくらい続いていますか 確認が止まらず、仕事に支障が 出ている 一人で抱えず相談するタイミング 確認の回数が増えてきた 工夫を試してみるタイミング 確認1回で気持ちを 切り替えられる 自然な範囲
赤に近づいてきたら、一人で頑張りすぎず相談先を頼ってみてください

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おのざる
おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。