メンタルヘルス / 休職中の日常

「体調はどうですか」に、毎回きちんと返信してしまっていた

おのざる(mimemime)2026年9月読了目安:10〜12分
毛布にくるまりマグカップを持つまめざるのイラストと共に「既読をつけてから/三時間迷っていた」という見出しと「返信のペースを自分で決めるまで」というサブテキストを示したアイキャッチ画像。左上には「メンタルヘルス/休職中の日常」のオレンジ色のカテゴリータグが添えられている

目次

  1. 週に一度、「体調はどうですか」が届く
  2. 既読をつけてから、動けなくなる数時間
  3. 「甘えすぎですよね」と言われた日
  4. 返信のペースを、自分で決めていいと知るまで
スマホの画面に「体調はどうですか」の一文が浮かぶ。それだけで、その日の午後がまるごと重くなる。優しい言葉のはずなのに、指が止まる。今回は、休職中に会社から届く体調確認の連絡に、義務感で毎回きちんと返し続けていた方の話です。その律儀さこそが、実は一番休めていない原因になっていました。

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夕方、ベッドの端に座り両手でスマートフォンを持ち、画面を見つめたまま動けなくなっている人物のイラスト。まだ送っていない返信が頭の中に浮かんでいる様子が吹き出しで示されている
返信を打とうとして、また指が止まる。それが週に何度も繰り返される

週に一度、「体調はどうですか」が届く

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
休職の理由が職場そのものにある場合、会社からの連絡には「心配」と「事務的な確認」が入り混じっていることが多いようです。悪意がなくても、受け取る側の負担は別の話になります。まめざる

先月末から1ヶ月の休職に入った。理由は職場だった。だから休職中は、なるべく仕事のことを考えず、自分と向き合う時間にしようと決めていた。なのに、休職の連絡を入れたその日から、週に1回のペースで会社から連絡が来るようになった。「体調はどうですか」「これからの手続きについて聞きたいので連絡ください」「なにか職場に理由があるなら改善したいので、一度お話ししたい」。文面はいつも丁寧で、責めるような言葉は一つもない。

それでも、メールが来るたびに律儀に返信していた。事務の人からのLINEにも、もちろん返信していた。傷病手当金の申請書も、職場に置いてあった荷物も、向こうはちゃんと届けてくれた。借り上げ社宅の制度も使わせてもらっている。だから「迷惑をかけているのはこちらの方だ」という感覚が、いつも頭の片隅にあった。返信しないという選択肢が、最初からなかったように思う。

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ここで紹介している内容は、複数の方から伺った経験をもとに再構成したものです。休職の理由や会社とのやり取りの頻度には個人差があるため、この記事の内容がそのまま当てはまるとは限りません。

「休職して最初の頃は、正直、連絡が来るだけでちょっと嬉しかったんです。見捨てられてないんだなって。でも3週目くらいから、通知に会社の名前が出るだけで胃のあたりがぎゅっとなるようになりました。内容はいつも同じで、体調どうですかって。悪い人たちじゃないのは分かってるので、余計に『こんなことでしんどいと思う自分がおかしいのかな』って考えちゃって、そこがいちばん辛かったです。」

30代・女性(適応障害・営業事務職)

既読をつけてから、動けなくなる数時間

メールを開いて、既読の状態にする。そこまではすぐにできる。問題はそのあとだった。「ありがとうございます、体調は少しずつ落ち着いてきています」と打っては消し、「まだあまり良くありません」と打っては、それはそれで心配をかけて次の連絡が増えそうな気がして消す。結局、当たり障りのない一言に落ち着くまでに、既読をつけてから数時間かかることが何度もあった。

返信が遅れた日は、それはそれで気になった。「昨日も体調はいかがですかとメールが来たけど、まだ返信できていない」。そう思うと、返信していない時間そのものが新しい心配の種になる。休むために休職しているはずなのに、返信するかしないかで一日の気分が左右される。この矛盾に気づいたのは、実はだいぶあとになってからだった。

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横軸に時間の経過を取った折れ線グラフ型の図解。週1回の体調確認メールが届く段階から始まり、毎回きちんと返信する段階、他の人からのLINEにも律儀に返信する段階を経て、返信できない日に自分を責めてしまう段階まで、負担を示す線が右肩上がりに積み上がり、最後は高いまま横ばいになっていく様子を表している
優しい連絡のはずなのに、返信のたびに少しずつ重さが積み上がっていく

もらった連絡そのものは、決して悪いものではない。それは分かっている。それでも「返信しなきゃ」という気持ちが、休むために空けたはずの時間を静かに削っていった。事務の人からの何気ないLINEにまで同じ調子で返信していたことに気づいたときは、自分でも少し驚いた。

「営業やってて、休職初日から『あの案件どうなってる?』みたいな連絡がひっきりなしに来たことがあります。引き継ぎのマニュアルは一応作ったんですけど、属人的な仕事だったから結局頼られちゃって。休んでる感覚がまったくなくて、3ヶ月くらいそれが続きました。今思うと、あの時期の方が働いてた頃より疲れてた気がします。」

30代・男性(適応障害・営業職)

「甘えすぎですよね」と言われた日

ある日、休職中の職場との連絡について、思い切って匿名の相談掲示板に書き込んでみたことがある。「これは私が社会不適合者すぎるからでしょうか。甘えすぎですよね」と、自分でも情けなくなるような一文を添えて。返ってきた反応のひとつは、こうだった。「はい、申し上げるまでもありません。長文の自己語りをなさる余裕があれば、すぐさま会社からのメールに返信ください」。

正直、その一文を読んだ瞬間は体温が下がるような感覚があった。でも、しばらくして浮かんできたのは、意外にも「こんな人が上司じゃなくてよかった」という言葉だった。優しさに見える連絡と、それに応え続ける義務感は、別のものだと気づいたのは、たぶんこのあたりからだったと思う。

相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
会社は別に悪くないんです。心配してくれてるのも分かるし。なのに、返信するたびにすり減っていく感じがあって、それが自分でもよく分からなくて。
まめざるのアイコン
まめざる
「会社は悪くない」と「今のペースがしんどい」は、同時に成り立ちますよ。どのあたりが一番すり減る感じがしますか。
相談者のアイコン
相談者
たぶん、既読をつけてから返信するまでの間です。何て書けば心配されすぎず、かといって嘘にもならないか、ずっと考えちゃって。
まめざるのアイコン
まめざる
その「考えている時間」自体が、もう十分に休職中のエネルギーを使っていますね。そこに気づけたこと自体が、今回は大きいと思います。

返信のペースを、自分で決めていいと知るまで

掲示板への書き込みには、突き放すような反応だけでなく、「連絡を減らす、まとめて伝えるように言えないですかね」という声も返ってきていた。会社側の配慮と、回復に必要な環境が噛み合っていないだけで、どちらが悪いという話ではない。そう言われて、初めて返信の頻度や方法を自分から相談していいのだと知った。

試してみたこと

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
全部がすぐにできるようになるわけではないと思います。それでも「返信のペースは自分で決めていい」と知っているだけで、既読をつけたときの体の強張り方が少し変わることがあります。まめざる

今も、既読をつけてから返信までに数時間かかる日はある。それは正直、完全には抜けきれていない。ただ以前のように、返信していない時間そのものを責める感覚は減った気がする。休職は治療のための期間で、即レスを前提にした仕組みではない。分かってはいても、体に染みつくまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

会社とのやり取りの頻度や、必要な配慮の内容には個人差があります。この記事の内容がそのまま当てはまるとは限らないため、実際の判断は主治医や産業医、人事担当者とよく相談しながら進めることをお勧めします(2026年9月時点の情報です)。
優しい連絡に、義務感で応え続ける必要はありません。返信のペースを自分で決めることは、決してわがままなことではないはずです。

よくある質問

Q. 休職中、会社からの連絡には必ず返信しないといけないのですか?
必要な事務連絡には応じる必要がある場合が多いですが、返信のタイミングや頻度まで会社側の都合に合わせ続ける義務があるとは限らないとされています。体調確認のような定期連絡は、返信のペースを自分で決めてよい場合があります。迷う場合は主治医や産業医、人事担当者に相談してみることをお勧めします。
Q. 返信が遅れると、会社に悪い印象を持たれませんか?
個々の職場の対応によるため一概には言えませんが、休職は治療のための制度であり、即レスを前提とした仕組みではないとされています。あらかじめ「返信までに数日いただくことがあります」と伝えておくことで、双方の負担が減るケースもあるようです。
Q. 優しい連絡なのに負担に感じてしまうのは、おかしいことですか?
おかしいことではないとされています。相手に悪意がなくても、休養中は普段なら気にならない一通の連絡が大きな負荷になることがあります。負担に感じること自体を責める必要はないという意見も多く見られます。
Q. 返信の頻度について、会社にどう伝えればいいですか?
症状の詳細まで説明する必要はないとされています。「体調確認のご連絡は週1回程度にまとめていただけると助かります」など、業務に関わる具体的な希望に絞って伝える方法が負担を減らす場合があります。人事や産業医を窓口にする方法もあります。
返信との今後の付き合い方を示すチェックリスト型のまとめカード。返信の頻度は自分で決めていい、会社は敵ではないことが多い、既読をつけてすぐ返さなくていい、今も返信に数時間迷う日があるという4項目がチェックマーク付きで並んでいる
どれも、今の自分に必要なことだと思う

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。