おのざるコラム / 支援員のノート

「頑張ってください」と言いかけて、飲み込んだ。就労支援の面談で起きていたこと

おのざる(mimemime)2026年9月読了目安:9〜11分
毛布にくるまりマグカップを持つまめざるのイラストと共に「『頑張れ』が喉から出なくなった」というタイトルと「支援員として、言葉を選び直した日々」というサブテキストを示したアイキャッチ画像。左上には「おのざるコラム」のオレンジ色のカテゴリータグが添えられている

目次

  1. 「頑張ってください」が、喉の途中で止まった
  2. なぜ、その一言が引っかかるようになったのか
  3. 言葉を変えてみたら、相手の顔が変わった
  4. 今、面談で気をつけていること
感謝や励ましのつもりで出かけた言葉が、その日はなぜか続かなかった。8ヶ月間、頑張り続けてきた人を前に、今さら何を言えばいいのか分からなくなった。

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夕方のミーティングルームで、テーブルに散らばった書類を前に手を組み、静かにうつむいている人物のイラスト
面談室のテーブルには、折りたたまれた不採用通知が何枚か置かれていた

「頑張ってください」が、喉の途中で止まった

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
就労支援の面談は、応募書類の準備や面接の練習だけでなく、相談者の気持ちの状態に合わせて、かける言葉そのものを一緒に考えることも仕事のひとつです。まめざる

就職活動を始めて8ヶ月が経っていた相談者が、面談室の椅子に座っていました。手元には、不採用の通知メールを印刷した紙が数枚。丁寧に折りたたまれていて、それだけで何度も読み返した跡が伝わってきました。

「また落ちました」と、相談者は小さく言いました。
次の面接は3日後。
ここで自分が何を言うか、頭の中で言葉を組み立てながら、気づけば「頑張ってください」という言葉が喉のあたりまで出かかっていました。

いつもならそのまま口にしていたはずです。相手を励ますつもりで、数え切れないほど使ってきた言葉でした。でもその日は、なぜか続きが出てきませんでした。

8ヶ月間、その人はずっと頑張ってきたはずです。
面接のたびに自己PR欄を書き直し、落ちるたびに次の応募先を探し、それでもまた申し込むということを、8ヶ月間続けてきた人に向かって、今さら「頑張れ」と言う必要があるのだろうか。そう思った瞬間、言葉は喉の途中で止まりました。

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励ましの言葉をどう感じるかには個人差があります。この記事は就労支援員おのざる自身が経験したことをもとに、複数の場面を組み合わせて書いており、特定の一人を指すものではありません(2026年9月時点の情報です)。

なぜ、その一言が引っかかるようになったのか

最初からそう思っていたわけではありません。むしろ支援員になりたてのころは、「頑張ってください」を面談の締めの言葉として、ほとんど反射的に使っていました。励ましているつもりでしたし、相談者からそれを指摘されたことも一度もありませんでした。

引っかかるようになったのは、ある相談者から聞いた話がきっかけでした。

「面接に落ちるたびに、支援員さんに『次も頑張りましょう』って言われるんです。分かってはいるんですけど、正直、その言葉を聞くと『まだ頑張りが足りないってことなのかな』って考えちゃって。もう十分やってるつもりなのに、それでも頑張れって言われると、自分がまだ本気を出してないみたいに聞こえて、しんどくなる時があります。」

20代・男性(発達障害・求職中/自分が関わった相談者の一人)

その時は、正直ピンと来ていませんでした。励ますつもりで言った言葉が、相手にとっては「まだ足りない」という指摘に聞こえることがあるという発想が、自分の中になかったからです。

それから意識して周りの相談者の様子を見るようになると、似たような反応に何度も出くわしました。「頑張ってください」と言われたあと、一瞬だけ表情がこわばる人が、思っていたよりずっと多かったのです。大きくうなずいて「はい、頑張ります」と返してくれる人ほど、実はその一言のあとに、小さく息を吐いていることに気づきました。

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」の応援アイコン
「頑張れ」がすべての場面で悪い言葉というわけではありません。ただ、すでに頑張っている人にとっては、努力の量を測られているように感じられることがあると言われています。まめざる
同じひと言でも、届き方は変わる 「頑張ってください」 まだ余力がある人 (頑張りに余白がある) すでに限界近くまで 頑張っている人 後押しとして 届きやすい まだ足りないという 指摘に聞こえやすい ※どちらが正しいということではなく、状況によって届き方が変わるという一例です
同じ「頑張ってください」でも、相手がどこまで頑張ってきたかで届き方が変わる

もうひとつ、印象に残っている場面があります。就職活動を1年近く続けていた相談者が、面談の終わりに、こちらが何も言う前にぽつりとこう言ったのです。

「正直、『頑張って』って、もう聞き飽きちゃったんですよね。家族にも、前の職場の人にも、就活サイトのメールにまで書いてあって。みんな優しさで言ってくれてるのは分かるんですけど、頑張れの数だけ、まだ結果を出せてない自分を突きつけられてる気がして、めちゃくちゃ苦しかった時期がありました。」

30代・女性(精神障害・求職中/自分が関わった相談者の一人)

この言葉を聞いてから、面談の最後に「頑張ってください」と言う前に、一呼吸置くようになりました。

言葉を変えてみたら、相手の顔が変わった

次にその相談者と会ったのは、面接の前日でした。
正直に言うと、何を話せばいいのか、こちらもまだ決めきれていませんでした。

ただ、「頑張ってください」だけは、もう言わないと決めていました。

ある面談の一コマ(複数の場面を組み合わせた一例)
相談者のアイコン
相談者
明日の面接、正直あまり自信がなくて。もう何回目か分からなくなってきました。
まめざるのアイコン
まめざる
8ヶ月間、毎回応募先を探して、履歴書を書き直して、ここまで続けてきましたよね。それだけでも、簡単なことじゃないと思っています。
相談者のアイコン
相談者
…そんな風に言われたの、初めてかもしれません。てっきり、また「頑張ってください」って言われるんだと思ってました。
まめざるのアイコン
まめざる
明日、一番不安なのはどんなところですか。そこだけ、今日一緒に整理しておきましょう。

相談者の肩から、少しだけ力が抜けたのが分かりました。
それまで背筋を伸ばして座っていたのが、少しだけ前かがみになって、面接で聞かれそうな質問について、自分から話し始めたのです。

結果として、その面接がどうなったかは、ここには書きません。
ただ、あの日、言葉を飲み込んでよかったと、今でも思っています。

今、面談で気をつけていること

まず、ここまでの頑張りを言葉にする

「頑張ってください」を言う前に、その人がこれまで何をしてきたかを、できるだけ具体的な言葉で伝えるようにしています。回数や期間、行動そのものを言葉にするだけで、「見てもらえている」と感じてもらえることがあるようです。

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これは全ての人に当てはまる正解というわけではありません。「頑張れ」という言葉そのものが力になる、好きだという方もいます。大切なのは、目の前の相手が今どちらの言葉を必要としているかを考えることだと感じています。

次に、不安の中身を具体的に尋ねる

漠然と励ますより、「何が一番不安ですか」「どこが引っかかっていますか」と、不安の中身を具体的に尋ねるようにしています。抽象的な励ましより、その人が今抱えている一点に焦点を当てる方が、結果として次の一歩につながりやすいと感じています。

「頑張ってください」は、まだ余力のある人には後押しになる言葉かもしれません。けれど、すでに限界近くまで頑張っている人には、その言葉が新しい重みになることがあります。何と言うかより先に、相手がどこまで頑張ってきたかへ目を向けることから、今も続けています。

よくある質問

Q. 就労支援の面談で「頑張って」と言われるのがつらいと感じるのは、おかしいことですか?
おかしいことではないとされています。すでに努力を重ねている人にとって、励ましの言葉が「まだ足りない」という指摘のように聞こえることがあると言われています。つらいと感じる感覚を、必要以上に責める必要はありません。
Q. 支援員は、「頑張って」の代わりにどんな言葉をかけているのですか?
決まった正解はないとされていますが、現場では「ここまでよくやってきましたね」「今、一番しんどいのはどんなところですか」など、これまでの努力を認めたり、具体的な状況を尋ねたりする声かけを試みることが多いようです。
Q. 家族や友人が「頑張れ」と言ってしまう場合、どう伝えればいいですか?
「頑張れ」という言葉自体を禁句にする必要はないとされています。「今は、頑張れよりも、大丈夫だよって言ってもらえると楽なんだ」というように、自分が今欲しい言葉を具体的に伝える方法が助けになる場合があります。
Q. 「頑張れ」と言われて苦しくなるのは、精神的に弱いということですか?
そうではないとされています。長期間努力を続けている人ほど、自分の頑張りを他者の言葉で測られることに敏感になりやすいと言われており、感じ方の強さと精神的な強さは別の話です。
この記事のまとめ 以前 反射的に 「頑張ってください」で 面談を締めていた 気づいてから 変えたこと 今 まず努力を言葉にし そのあとで 不安の中身を尋ねる 正解を決めつけず、目の前の相手に合わせて言葉を選び直していく
反射的な励ましから、相手に合わせた言葉選びへ

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。