メンタルヘルス / 休職中の日常

産業医面談で「だいぶ良くなりました」と言ってしまった帰り道。休職中の面談の話

おのざる(mimemime)2026年9月読了目安:8〜10分
毛布にくるまりマグカップを持った男の子がテーブルについているイラストと共に「面談で話すメモを夜中に3回書き直した」という見出しを示したアイキャッチ画像。左上には「メンタルヘルス/休職中の日常」のカテゴリーバッジが添えられている

目次

  1. 「部長も同席します」の一行
  2. メモを3回書き直した夜
  3. 口から出たのは「だいぶ良くなりました」
  4. 2回目は、メモを読み上げた
「次回の産業医面談は、産業医の先生、部長、あなたの3名で行います」。
人事から来たメールは、たったそれだけでした。

その晩、話すことをメモに書いて、消して、また書いて。3回書き直しました。
なのに当日、私の口から最初に出たのは「おかげさまで、だいぶ良くなりました」だったんです。

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夜の部屋で、低いテーブルの前に座った人がデスクライトの明かりの下でメモ帳にペンを当てたまま手を止めているイラスト。横には丸めたメモが何枚か転がり、スマートフォンは伏せて置かれている
書いては丸めて、また書いて。夜中の2時を過ぎていた

「部長も同席します」の一行

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
産業医さんと二人きりなら言えたことが、会社の人が一人入るだけで言えなくなる。これ、わりとよく聞く話です。まめざる

休職して3ヶ月目のことでした。
産業医面談そのものは、前にも一回だけ受けたことがあります。そのときは先生と二人で、20分くらい、ふつうに体調の話をして終わり。

だから今回も同じだろうと思ってたんです。
メールの2行目を読むまでは。

「部長」。
休む前、最後の1ヶ月で、いちばん顔を合わせたくなかった人です。
別に怒鳴られたとかではないんです。ただ、部長の前だと、「ちゃんとした社員の顔」をしないといけない気がして、それがもう体に染みついてる。

3人で何を話すんだろう。
「いつ戻れるの?」って聞かれるのかな。
「まだです」って言ったら、部長の顔、どうなるんだろう。
……そこから先は、考えるだけで胃がきゅっとなって、スマホを置きました。

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この記事は、休職中に産業医面談を受けた経験のある方の声をもとに、複数の場面を組み合わせて書いています。面談の進め方や同席者は会社によって異なり、感じ方にも個人差があります。

メモを3回書き直した夜

面談の前の晩、話すことを整理しようと思って、メモ帳を開きました。

1回目:正直に書いた

「朝はまだ起きられない日が多い」
「会社の最寄り駅の名前を聞くだけで、胸がざわっとする」
「戻る日のことは、まだ考えられない」

書いて、読み返して、これを部長の前で言うのか、と思った瞬間に手が止まりました。
これ言ったら、「じゃあ、いつになったら戻れるの」って話になるよな。
下手したら、「戻る気あるの?」って思われるよな。

2回目:ちょっと盛った

「朝は少しずつ起きられる日が増えてきた」
「散歩もできるようになった」

嘘ではないんです。週に2回くらいは、コンビニまで歩けてた。
でも「増えてきた」は、ちょっと盛ってる。自分でわかってる。

3回目:何を書いたか覚えていない

2時を過ぎたあたりで、もう何が正解なのか分からなくなって。
「体調はどうか」と聞かれたときの答えを、敬語の言い回しまで含めて3パターン書いたところで、力尽きて寝ました。
いや、寝てない。横になって天井を見てただけです。

「1年半休んでて、半年ぶりの面談だったんです。正直、もう戻れる気がしなかった。でもそれを言ったら『じゃあ辞めれば?』ってなるんじゃないかって、面談の1週間前から毎晩それ考えてて。辞めたくないのか辞めたいのか、自分でも分かんないんですよ。分かんないまま行ったら、先生に『辞めるかどうかを決めるのは私の仕事じゃないですよ』って言われて。え、そうなの?って。1週間ぶんの寝不足、なんだったんだろうって。」

40代・男性(適応障害で休職・製造業の事務職)

口から出たのは「だいぶ良くなりました」

面談は、会社の会議室でした。
先生がいて、その隣に部長がいて、テーブルの上には私の診断書のコピー。

「どうですか、最近は」
先生がやわらかく聞いてくれた、その次の瞬間です。
「おかげさまで、だいぶ良くなりました」。

自分の声なのに、自分で言った気がしませんでした。
部長がちょっとほっとした顔をして、それを見た私もなぜかほっとして。
3回書き直したメモは、カバンの中から一度も出てきませんでした。

そのあとは、たぶん30分くらい。
「散歩はできてます」「夜は、まあまあ寝られてます」。
2回目のメモに書いた、ちょっと盛ったほうの私が、勝手に全部しゃべってくれました。

最後に部長が「じゃあ、そろそろ戻る時期も考えていこうか」と言って。
私は「はい」と言いました。
「はい」以外の返事を、あの部屋で言える気がしなかったんです。

帰りの電車で、窓に映った自分の顔を見て、ああやっちゃった、と思いました。
家に着いてから、夜まで起き上がれませんでした。
「だいぶ良くなった人」は、たぶんこんなふうに寝込まない。

産業医面談の部屋にいる人とそれぞれの役目を示した相関図。中央の「わたし」から、左上の産業医(働ける状態かを医師として見る人。会社に伝わるのは必要な範囲が基本)、右上の部長・人事(戻る段取りを考える人。病状の細かい中身まで知る必要はない)、下の主治医(ふだんの様子をいちばん知っている人。面談の前に相談しておける)へ線が伸びている。線の横には、産業医には今の一日を盛らずにそのまま話す、部長・人事には「まだ戻れない」だけで足りる、主治医には「何を言えばいい?」と聞いていい、と添えられている
同じ部屋にいても、話す相手ごとに「言えば足りること」は違う

「面談、会社でやるから来てって言われて。しかも上司に『みんながいるフロアを通って、奥の部屋まで来てね』って。いや無理でしょって思ったけど、無理ですって言えなくて。当日、駅のトイレに20分こもって、結局行ったんですけど、フロア通るとき誰とも目を合わせられなくて、面談の中身ほとんど覚えてないです。あとで人事の人に『次から別の入口使っていいよ』って言われて、え、それ最初に言ってよって。言えなかった私も私なんですけど。」

20代・女性(うつ状態で休職・営業事務)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
面談で「だいぶ良くなりました」って言っちゃって。全然良くなってないのに。自分で自分の首しめてる感じです。
まめざるのアイコン
まめざる
言った瞬間のこと、覚えてますか?
相談者のアイコン
相談者
……部長の顔を見てました。部長がほっとした顔したら、私もほっとして。がっかりさせるのが、たぶんいちばん怖かったんだと思います。病気のことより。
まめざるのアイコン
まめざる
部長をがっかりさせたくなかった。それ、首をしめたんじゃなくて、あの部屋で自分を守ろうとしてたのかもしれません。次は、先生にだけ本当のことが届く方法を一緒に考えてみませんか。

2回目は、メモを読み上げた

次の診察で、主治医にこの話をしました。
「面談で、良くなったって言っちゃいました」って。
先生は笑いもせず、「じゃあ、次は紙に書いて持っていけばいいですよ。読み上げたっていいんだから」と。

読み上げていいんだ、って、そのとき初めて思いました。
面談って、ちゃんと自分の言葉でスラスラ話さないといけない場だと思い込んでたので。

1ヶ月後の2回目の面談。今度は、メモを最初から机の上に出しました。
書いたのは3行だけ。

「すみません、うまく話せないので、読みます」と言って、読みました。
声は震えてたと思います。途中で一回、つっかえた。

部長は、前回みたいにほっとした顔はしませんでした。
でも、怒った顔もしなかった。ただ「そうか」と言って、手帳に何か書いてました。
先生は「じゃあ、戻る時期は主治医の先生の意見を聞いてからにしましょう。今日決めなくていいです」と。

……今日決めなくていい。
それを聞いた帰りの電車は、前回とはちょっと違いました。
元気になったわけじゃない。まだ全然。でも、窓に映った自分の顔から目をそらさずにいられた。それくらいの違いです。

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面談の前って、自分がどれくらいしんどいのか、何を言いたいのかが、頭の中でごちゃっとしがちです。2問だけの「気持ちスキャン診断」で、今の気持ちをいったん眺めてみるのもいいかもしれません。よかったら覗いてみてください(/shindan)。
産業医面談の進め方、同席者、会社へ共有される内容の範囲は、会社や産業医によって異なります。上司が同席するのがつらい場合や、面談のための出社が負担な場合は、人事や産業医に「一部だけ産業医と二人で話したい」「場所や方法を相談したい」と伝えてみるのも一つの方法です(2026年9月時点の情報です)。
「面談の前に書いておく、メモ1枚」と題したまとめ図。テープで留めたメモ用紙の上に、1.今の一日。何時に起きて、何ができて、何がまだできないか、2.主治医に言われたことを、そのまま書き写す、3.「まだ戻れない」と思っていることを、一行だけ、の3項目が番号付きで並び、下に「メモは見ながら話していい。書いてあれば、言い忘れない」と書かれている
3行でいい。読み上げたっていい
Q. 休職中の産業医面談では、どんなことを聞かれますか?
会社や産業医によって異なりますが、今の体調、睡眠や生活リズム、主治医からどう言われているか、復職についての今の気持ちなどを確認されることが多いようです。うまく答えられるか不安なら、今の一日の過ごし方を簡単にメモしておくと話しやすくなることがあります(2026年9月時点の情報です)。
Q. 上司が同席する面談で、本当の体調を言うのが怖いです。
上司の前だと体調を軽めに言ってしまう、という方は少なくないようです。ただ、実際より良く伝わると、必要な配慮が受けにくくなることもあります。事前に人事や産業医へ「一部だけ産業医と二人で話す時間がほしい」と相談できる場合もあるので、会社に確認してみてください。
Q. 「まだ復職は難しい」と伝えたら、退職を勧められませんか?
一般に、産業医の役割は働ける健康状態かどうかを医学的な立場から意見することで、退職を決めたり勧めたりすることではないとされています。ただし会社の対応はそれぞれなので、不安が強い場合は主治医や、社外の相談窓口に話しておくと気持ちが整理しやすくなることがあります(2026年9月時点の情報です)。
Q. 面談にメモを持っていって、読みながら話してもいいですか?
メモを見ながら話すことを問題にされるケースは多くないようです。緊張で頭が真っ白になりやすい方は、「うまく話せないので読みます」と一言添えて読み上げる方法もあります。書く内容は、今の生活の様子、主治医に言われたこと、今いちばん不安なこと、くらいで十分なこともあります。
Q. 面談のために会社へ行くこと自体がつらいときは?
会社によっては、オンラインでの面談や、職場のフロアを通らずに入れる場所・時間帯に調整してもらえる場合があります。体調面で出社が負担になっていることを、主治医の意見も添えて人事に伝えてみると、相談に乗ってもらいやすくなることがあります(2026年9月時点の情報です)。

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。