メンタルヘルス / 休職中の日常

「これ以上休職されると困る」と言われて、パートで戻る話に「はい」と言いかけた

おのざる(mimemime)2026年9月読了目安:7〜9分
毛布にくるまりマグカップを持った男の子がテーブルについているイラストと共に「「パートなら戻れる?」と言われて固まった」という見出しを示したアイキャッチ画像。左上には「メンタルヘルス/休職中の日常」のカテゴリーバッジが添えられている

目次

  1. 平日の午後2時、知らない番号だった
  2. 「はい」と言いかけて、家賃の数字が浮かんだ
  3. 電話のあと、就業規則を開いた
  4. 返事をしたのは、5日後のメールだった
「これ以上休職されると、こちらも困るんです。
正社員のままだと、また体調を崩したときにお互い大変なので、パートで戻ってもらえませんか」

電話の向こうの人事の人は、たぶん、悪気なくそう言いました。
休職して8ヶ月。

私はその場で、「あ、はい」と言いかけていました。

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濃い紺のカーテンを閉めた薄暗い寝室で、灰色のパーカーを着た男性がベッドの上に座り、スマートフォンを両手で持ってうつむいているイラスト。ベッド脇のチェストには、ランタンのような小さな明かりとマグカップが置かれている
電話を切ってから、しばらく画面が真っ暗になるのも気づかなかった

平日の午後2時、知らない番号だった

mimemimeのマスコットキャラクター「まめざる」のアイコン
会社からの電話って、それだけで心臓が跳ねますよね。しかも内容が「戻り方の相談」じゃなくて「戻り方の指定」だったとき、頭は真っ白になりがちです。まめざる

去年の12月から休んでいて、傷病手当をもらいながら、なんとか生活してました。
朝は起きられる日と起きられない日が半々。
やっと「来月あたり、主治医に復職のこと聞いてみようかな」って思い始めた頃でした。

平日の午後2時。
画面に出たのは、登録してない番号。会社の代表番号だって、出てから気づきました。

最初の3分くらいは、ふつうの近況確認でした。
「体調どうですか」「はい、少しずつです」「それはよかった」。
このまま終わるのかなって思ったところで、声のトーンが、ちょっとだけ変わって。

「実は、これ以上休職が続くと、部署の体制的にも厳しくて。
復職してほしいんですけど、正社員だとまた体調が悪くなったときに困るので、パートという形で戻ってもらうのはどうでしょう」

どうでしょう、って。
聞かれてるのに、質問の形をした決定事項みたいに聞こえたんです。
私の耳には、そう聞こえた。実際どうだったかは、今でも分かりません。

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この記事は、休職中に会社から雇用形態の変更を打診された経験のある方の声をもとに、複数の場面を組み合わせて書いています。会社の対応や受け止め方には個人差があります。

「はい」と言いかけて、家賃の数字が浮かんだ

「あ、はい」の「あ」まで出てたと思います。
なんで「はい」なのか、自分でも分からない。
ただ、断ったら「戻る気がない人」になる気がして。それが、めちゃくちゃ怖かった。

で、次に頭に浮かんだのが、パートの時給×週の日数を、家賃で割る計算でした。
電話中に、ですよ。相手の話を聞きながら。
足りない。ぜんぜん足りない。
でも「足りません」とは言えなくて、「あ、えっと」を3回くらい繰り返してました。

「持ち帰ります」が出てきたのは、たぶん奇跡

そしたら、口が勝手に言ったんです。
「あの、一度、持ち帰って考えてもいいですか」。
自分で言っておいて、びっくりしました。

相手は「もちろんです。ただ、あまりお待たせはできないので、来週中には」って。
「来週中」という期限がついた瞬間、また胃のあたりがぎゅっとなりました。
電話を切ったあと、スマホの画面がいつ暗くなったのかも分かりません。

「パートで戻ってほしい」と言われたあとの3つの持ち帰り先を示した分岐のフローチャート。中央上に「その場では返事を決めない」と書かれた箱があり、そこから左に「就業規則を読む」、中央に「主治医に聞く」、右に「相談窓口に聞く」の3つの箱へ矢印が伸びている。3つの箱の下には、それぞれ確認できること、として、休職や復職の決まり、今の体調で働ける形、雇用形態の変更に本人の同意は要るかが書かれ、最後にすべてが「返事はメールで」の箱に集まっている
その場で決めなくていい。3つの場所に持ち帰ってから、メールで返事をする

「上司から『復職するなら時短の契約社員に切り替えたほうが、お互い楽じゃない?』って言われたのは、休職して4ヶ月目でした。楽って、誰が楽なんだろうって思いながら、『考えます』って言って電話切って。そのあと2日間、ずっと『やっぱり私、戦力じゃないんだ』ってそればっかり。契約書とか就業規則とか、見る気力もなかったです。結局、最初に相談したのは友達でも家族でもなくて、ネットの匿名の掲示板でした。」

20代・女性(うつ病で休職・メーカーの事務職)

電話のあと、就業規則を開いた

電話を切ってから、3時間くらいベッドに座ってました。
夕方になって、なんとなく、会社のイントラで昔ダウンロードしたPDFがパソコンに残ってるのを思い出して。
就業規則です。入社したときに一回も読まなかったやつ。

休職の欄を探したら、思ったより短くて。
「勤続年数に応じて、最長〇ヶ月」みたいな一文と、復職の条件が3行くらい。
雇用形態を変えるなんて、どこにも書いてなかった。
……いや、書いてなかったのか、私が見つけられなかっただけなのか、その日は判断がつきませんでした。

次の日、主治医に話しました。
「今の体調で、週にどのくらいなら働けそうですか」って聞かれて、
その質問をされたのは、8ヶ月で初めてでした。
会社は「いつ戻れるか」しか聞かなかったし、私も「戻れます」以外の答えを持ってなかった。

「人事から『正社員のままだと席を確保できないから、契約社員で』って言われて、1週間くらい返事できなかったんです。ネットで調べたら、労働条件の変更は本人の同意が要るとか書いてあって、ああ、いきなり決められるものじゃないのかって、そこで初めて息ができた感じ。でも同時に、同意しないと『じゃあ戻れないね』って言われそうで、それも怖い。両方あるんですよ。ほっとしたのと、怖いのと。」

30代・男性(適応障害で休職・IT企業の営業職)
相談の一コマ
相談者のアイコン
相談者
あのとき「はい」って言ってたら、たぶん今頃パートだったと思います。それが一番怖くて、思い出すと今でも手が冷たくなる。
まめざるのアイコン
まめざる
「はい」って言いそうになったとき、何が一番、口を動かしてたと思います?
相談者のアイコン
相談者
……断ったら、迷惑な人になる気がしたんですよね。8ヶ月も休んでるのに、これ以上わがまま言えないって。わがままじゃなくて条件の話なのに、そのときは分けられなかった。
まめざるのアイコン
まめざる
「迷惑な人になる」と「条件を確認する」は、電話の最中だと同じ顔に見えちゃうんですね。そのあと、それを分けられたのは何がきっかけでした?

返事をしたのは、5日後のメールだった

結局、返事は電話じゃなくて、メールにしました。
文章は、3回書き直して。

「ご連絡ありがとうございます。復職については前向きに考えています。
ただ、雇用形態の変更については、主治医と相談中で、今すぐお答えできません。
復職後の働き方の条件を、書面で教えていただけますか」

送信ボタンを押す前に、お風呂で1回、声に出して読みました。
「すみません」は、ひとつも入れませんでした。

返事は、翌日の夕方に来ました。
「承知しました。ご状況が分かり次第、またご連絡ください」。
思ったより、あっさりしてて。
あの電話のとき、頭の中で作ってた「怒った人事」は、どこにもいませんでした。

それで丸く収まったかというと、そういう話でもなくて。
そのあとも復職の日程で何度かやりとりがあって、しんどい日はしんどかった。
ただ、「その場で決めなくていい」と、あの日の私に言ってあげたかったな、とは思います。

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電話を切ったあと、怒りなのか不安なのか情けなさなのか、自分でも分からなくなることがあります。2問だけの「気持ちスキャン診断」で、今の気持ちをいったん眺めてみるのも一つです。よかったら覗いてみてください(/shindan)。
休職の制度や、復職時の雇用条件の扱いは、会社の就業規則や個別の事情によって異なります。雇用形態の変更を打診されて判断に迷うときは、主治医に働ける日数や時間の目安を確認したり、労働局の総合労働相談コーナーなどの公的な相談窓口に確認したりする方法があります(2026年9月時点の情報です。最新情報は各機関にご確認ください)。
「電話で言われたら、この3つだけ」と題したチェックリスト型のまとめ図。1つ目は「その場で返事しなくていい」、2つ目は「持ち帰りますと言えたら十分」、3つ目は「返事はメールで、書面で条件を聞く」という3つの項目が、チェックマーク付きのカードで縦に並んでいる
あの日の私に見せたかったのは、この3行
Q. 休職中に、会社から「パートで復職してほしい」と言われたら、従わないといけませんか?
「してほしい」という依頼や打診の段階であれば、その場で承諾しなければならないものではないようです。正社員からパートへの変更は労働条件の大きな変更にあたり、一般には本人の同意なく一方的に決められないと説明されることが多いです。ただし会社ごとの就業規則や事情で変わるため、不安なときは労働局の相談窓口や専門家に確認してください(2026年9月時点の情報です)。
Q. 電話で急に言われて、その場で返事をしてしまいそうです。どうすればいいですか?
「一度持ち帰って、主治医とも相談してから返事します」と伝えるだけで十分なことがほとんどです。その場で「はい」「いいえ」を決める必要はありません。返事の期限を聞いておく、あとでメールで内容を送ってもらえるか頼んでおく、という方もいます。
Q. 休職期間や、復職の条件はどこで確認できますか?
休職制度は法律で細かく決まっているわけではなく、多くは会社の就業規則に書かれています。休職できる期間、復職の手続き、復職後の働き方の決まりなどを一度読んでおくと、電話で言われたことが規則の範囲内なのか考える材料になります。人事や総務に見せてもらえるか聞くのも一つです。
Q. パートで復職してから、また正社員に戻ることはできますか?
会社の制度や運用によって大きく違うため、一律には言えません。「戻れる場合の条件」「いつ、誰が判断するのか」を、書面やメールなど残る形で確認しておくと、あとで食い違いが起きにくくなります(2026年9月時点の情報です)。
Q. 会社から復職を急かされて、体調が追いつかないのが不安です。
復職できるかどうかは、主治医の判断や産業医の意見なども含めて決めていくものです。焦る気持ちがあっても、体調の見通しを主治医に伝え、「今の段階でこのくらいなら」という現実的なラインを一緒に考えてもらう方法があります。一人で判断が難しいときは、相談窓口を使うのも選択肢です。

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おのざる
mimemime代表。就労支援の現場経験をもとに、障がいのある方の働く不安に寄り添う記事を執筆。